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現実のネット設計はこう違う

2010年2月22日(月)
服部 照久(はっとり てるひさ)

機材の納入には事故のリスクが付き物

以下では、特に経営者や管理職の方に読んでいただきたいトピックとして、作業ミスが引き起こす会社の損失について解説します。

中規模以上のシステムを抱える案件はもちろん、納品する機器がサーバー1台であったとしても、ラック作業に伴うリスクがあります。例えば、納品先のラックにユーザー企業の高価な機器が設置されている場合があります。さらに、中規模以上のシステムであれば、車が1台買えてしまう、家が一軒建てられてしまうほどの機材を扱っていることも少なくありません。

単純な接続間違いやオペレーション・ミスによる障害だけでなく、現場での落下事故や、台車で機材を運んでいる途中の事故などにより、財物を破損してしまうこともあります。もちろん、導入に立ち会うユーザー(人体)との接触によるケガなども、可能性が否定できません。

サーバー納品の現場では、非常に狭い階段があったり、手の届きづらい位置での作業となったりと、現場には現場でなければ分からない危険が潜んでいます。管理者や経営者の方には、その点もリスクとしてきちんと認識しておく必要があります。

社員補償としては、法的にも雇用保険や労災保険などが義務付けられています。しかし、現場作業に伴うこのほかのリスクを考慮しているSI企業がどれだけあるでしょうか。物理的な補償がカバーされてこそ、完全なSI提案と言えると思います。

損失は保険でカバー

ラック作業や機器の運搬、設置作業に伴う損失は、損害保険で担保できます(図3)。例えば、ほぼすべての損害保険会社が「請負業者賠償責任保険」という種別の保険を取り扱っているので、これを利用する手があります。

スリーセブンワークスでは、東京海上日動火災保険の代理店であるAIC(横浜市保土ヶ谷区)にて、年間包括で、対人対物1億円限度の保険に加入しています。この保険に加入すると、自社が行う工事作業に加えて自社が仕事を依頼した分(契約が必須)についても、下請け企業や外注エンジニアが同様の内容で担保されます。

年間包括契約により、個々の作業や現場に対する保険の加入漏れがなくなります。管理財物担保(預かり物の保険)など、特にSI業者に必要な保険もありますので、実際にラック・マウントなどの作業がある企業には加入を勧めます。

決して高い保険ではないので、SI事業者は大小にかかわらずこの保険にきちんと加入しておくと、万が一の時に高価な機材の弁済も保険でまかなうことができます。

エンジニアの心構え

活躍されているエンジニアの方は、単に机に座ってリモート作業をしたりドキュメントを書いたりするだけでなく、 現場作業をされていると思います。重い機材をラックに設置することもあれば、レールを開封したりすることもあるでしょう。深夜対応や休日対応などもこなしながら、通信やサービスを守り続けていることでしょう。体力勝負の部分もありますが、最終的には精神面の強さが重要となります。

これまでの連載中にも、人的要素がエンジニアにとって必要不可欠であることを記載しました。システムは優秀なエンジニアがいて初めて機能するものだと思います。日本のインターネット・インフラが世界トップ・クラスを維持することができているのは、おそらくこの記事を読んでいるエンジニアの力のおかげだと思います。

ネットワークやサーバーのエンジニアは、日々技術を磨き、新しい知識を求めながら、顧客の通信を守り、運用しています。専門的な分野であるほか作業の現場が表からは見えないため、なかなか一般職の方々には理解されない厳しい世界にいると思います。

それでも、納品時の喜びや、最短でシステムを復旧したときの喜び、新しい技術を発見する喜びなど、ほかの仕事では得られない達成感があると思います。初めてサーバーを動かしたとき、データセンターに足を踏み入れたとき、ネットワークがつながったときの感動を忘れずに、身体に気を付け、心を強く持って、今後も頑張ってください。

まとめ

これで本連載は終了です。ここまでの4回の連載で、ネットワークの設計、監視、管理方法、そしてリスク・マネージメントについても解説してきました。

安定した強いネットワークを構築するには、機器の選定もさることながら、ネットワークのデザイン、さらに運用管理の軽減やスケール(拡張性)、リプレース時のことまでを考慮する必要があります。

これらを支えるのがシステム・エンジニアであり、「人」であると言えます。優れたエンジニアが、維持しやすい設計のネットワークを作ることで、鉄板のネットワークを構築でき、最終的にはユーザーの利益の確保につながります。

全体を見渡すことができる余裕と、多くの現場経験から学べる知識、情報収集能力、これらすべてがシステム・エンジニアの真の実力であり、アイデンティティです。筆者もSI会社の代表を務めるかたわら、いつでも現場のエンジニアの気持ちでいたいと思います。最後までご愛読いただき、ありがとうございました。

著者
服部 照久(はっとり てるひさ)
株式会社スリーセブンワークス 代表取締役
PSINetJAPAN、IIJ(株式会社インターネットイニシアティブ)のエンジニアを経て、NetworkからServer構築はもちろん24h/365dのインフラ運用監視/構築を行うマルチサービス・プロバイダを独立起業。777WORKS

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