ボットでリアルとバーチャルをつなぐ、LINE BOT AWARDS決勝が開催
LINEのチャットボットのコンテスト「LINE BOT AWARDS」の決勝「FINAL STAGE&表彰式」が、3月18日に開催された。
LINE BOT AWARDSは、LINEのMessaging APIを活用したボットを審査するコンテストだ。審査基準にユーザーからの支持が含まれるとおり、審査時点で動いているものが対象で、個人・法人問わず参加可能。応募は国内外から815作品あり、事務局による審査により最終候補24作品がFINAL STAGEに進んだ。
FINAL STAGEでは24作品がそれぞれ5分間のプレゼンを行ない、審査を受けた。グランプリは1作品で、賞金は1,000万円。そのほか11の部門賞が設けられた。
また当日は、惜しくもFINAL STAGEには選ばれなかったものの事務局が認めた8作品にも、ライトニングトークとして5分間のプレゼンの時間を与えられた。計32点にものぼる、ユニークなアイデアの作品がプレゼンされるという、刺激的なイベントとなった。
オープニングでLINE株式会社の砂金信一郎氏が紹介した応募者データによると、個人と法人では個人が65%、社会人と学生では学生が22%おり、国別では国外から25%の応募があったという。
また砂金氏は応募作の傾向として、ライフスタイルに関するものが非常に多かったことと、エンジニアからはIoT/ビーコンも多かったことを紹介した。
表彰後の審査員評でも、「ビーコンなどを使った、私の思いつかないアイデアがいろいろ集まった。ボットにはまだまだ無限の可能性がある」「ボットがこれだけ実用段階に来ているということがわかった」「LINEはボットによって、人とモノを、リアルとバーチャルをつなぐプラットフォームとなった」と、人と人とのつながりを超えるボットの可能性が語られた。
手助けの必要な人とサポーターをつなぐ「&HAND」がグランプリ
グランプリに輝いたのは、手助けの必要な人と手助けする人(サポーター)とをLINE Beaconでつなぐ「&HAND」だ。
&HANDでは、ハンディキャップを持つ人や外国人旅行者など、手助けを必要とすることのある人が、自分にあったビーコンを携帯する。そして、手助け必要な状況になったときにビーコンをオンにすると、近くにいるサポーターにLINEでメッセージが送られるというものだ。
プレゼンでは、「街でハンディキャップを持つ人を示すマークが表示されていても意味がよくわからない」といったことがサービス開発の背景として語られた。
実際にハンディキャップを持つ人の声も、動画で紹介された。聴覚障害者の人は、電車に乗るときに遅延などの情報は音声アナウンスのためわからないことや、外から見て聴者と変わらないため誤解が生じやすいことを説明した。それに対する&HANDの使い方として、ビーコンをオンにすると画面で手助けして欲しい項目の選択肢が表示され、「乗車列車の運行状況」をタップすると周辺のサポーターにメッセージが届き、両者がつながり、教えてもらえる。
また視覚障害者の人については、ビーコンを白杖に取り付けて改札から乗車までの視覚障害者の存在を把握する使い方が挙げられた。駅員によるLINEグループで声かけや乗車確認などによって見逃し帽子と安全確保につなげるという。
そのほか、障害に応じたサポート方法を定期配信して、障害や病気に対する知識と理解を深める機能もあるという。
表彰式の受賞コメントでは「この賞は私たちだけのものではなく、みなさんが助け合う社会を作っていきたいと思った証だと思います」とプロジェクトチームは語った。
10の部門賞も発表、エンターテイメント部門賞は該当なし
各部門賞も発表され、表彰された。
「ライフスタイル部門賞」は、ヤマト運輸の公式LINEアカウントが受賞した。「荷物を受け取るお客樣ともっとコミュニケーションをとりたい」という目標のもと、ボットによって予定や連絡を通知するだけでなく、問合せや受け取り日時の変更などができるという。デモでは、「明日にゃ」と伝えると語尾を「ですにゃね」として返してくるところや、ヤマト運輸のスタンプにはいい反応をするが他社スタンプには“塩対応”をするところも見せた。
「ゲーム部門賞」は、チーム451Labの「OneNightWerewolf Bot」が受賞した。「人狼」ゲームを3人から手軽にできるようにした独自の「ワンナイト人狼」をLINE上でプレイするためのボットだ。プレゼンでは、進行をボットがやってくれることがメリットだと説明し、プレイの様子を動画でデモした。
「GEEK部門賞」は、シャクレ製作委員会による「シャクレ」が受賞した。「写真くれくれサービス」とのことで、勉強会などのイベントで最前列の席の人が撮った写真を参加者の間で共有するサービスだ。ビーコンによって対象を同じ部屋などに限定するという。プレゼンは終始ユーモラスに進められた。
「ローカライズ部門賞」は、インドネシアから参加した「TemanJalan」が受賞した。ジャカルタの交通渋滞は世界でワースト1とも言われる一方、多数の大学が集まっていることを背景にした、学生専用のオートバイのライドシェアサービスだ。2016年末にLINEに対応したところ、急激にユーザー数が伸びたという。学生IDにより利用者や運転者を認証することも特徴で、それにより犯罪を防ぐという。プレゼンでは、擬似的に品川から原宿まで行く様子を日本語メッセージでデモした。
「対話エンジン部門賞」は、タイから参加した「botnoi」が受賞した。「子供のころに、ドラえもんのようなロボットの友達を夢見ていた」という思いから、自然言語処理によるボットで「いつもそばにいる友達」を作ったという。慰めの言葉やジョークを返してくるほか、レストランや歌、電話番号などを検索する機能もある。オープンソースの機械学習ライブラリを使った翻訳機能も備え、タイ語、英語、ネパール語、中国語に対応している。ユーザーが350,000人いて、毎日1千万のメッセージに返事しているという。
「グループトーク部門賞」は、グループ旅行やイベントのときにグループ内の精算を助けるTeam Checkunの「Checkun」が受賞した。事後ではなくその場でLINE上で精算するサービスで、支払い状況がグループトークに流れる。傾斜付き割り勘などにも対応する。目指すのは「会計係のいらない世界」で、精算のときに精算担当の人が仲間から外れてしまうのを防ぐという。今後は、精算だけではなくLINE PayやPayPalなどを使った「清算」にも対応する予定だという。
「IoT/Beacon部門賞」は、スキー姿でのプレゼンにインパクトがあったPizayanzの「雪山Bot」が受賞した。スキーゲレンデで仲間がどこにいるかわからない問題を解決するものだ。リフト乗り場やレストランなどの要所にLINE Beaconを置いておき、グループのメンバーが近くに来るたびにグループチャットに投稿するため、ハンズフリーで使える。最後に「One more thing」として、マイクロソフトのHololensを装着してスキーで滑り、視界の中にグループチャットが表示される様子を動画でデモした。これについては、日本マイクロソフトの伊藤かつら氏が「マイクロソフトでは滑りながらのHololensの使用は保証していません」とユーモラスにコメントして、会場は爆笑に包まれた。
「スタートアップ部門賞」は「EncodeRing」が受賞した。声を吹き込んでその波形の形をしたオリジナルアクセサリーを作るサービスで、世界のメディアで紹介され、150か国以上からアクセスがあり、20か国から注文が来たという。ただし、iPhoneのブラウザーからでは音声が吹き込めないため、LINEのボットで音声を送って注文できるようにした。プレゼンは「その想いはダイヤよりも美しい」という言葉で締め括られた。
「学生部門賞」はチームALの「mitchy」が受賞した。プレゼンの冒頭では「授業中に質問できますか?」と問い掛けがなされ、そうした気後れを感じることはないよう、授業中に生徒間および先生との間で匿名チャットの形でメッセージを共有する(先生からは発言者がわかる)。TeX形式で入力した数式表示にも対応し、LINE上で小テストもできる。ログが残るため、先生が授業を改善するのにも役立つという。
「特別協賛パートナー賞(マイクロソフト賞)」は、NAVITIMEの公式ボットが受賞した。NAVITIMEは通常はアプリで使われているが、「コアはアプリではなく経路探索エンジン」という考えからLINEのボットにも進出したという。LINE上で乗り換え検索や時刻表情報、運行情報などを自然言語で呼出せる。なお、自然言語解析にはMicrosoft AzureのLUIS(Language Understanding Intelligent Service)を利用しており、そこがマイクロソフト賞につながった。NAVITIMEによれば「いろいろな自然言語エンジンを試した中でLUISがいちばん性能が高かった」という。
なお「エンターテイメント部門賞」は該当なしとなった。
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