イスラエルのハイエンドストレージベンダーINFINIDAT、日本での積極的な展開を発表

2017年3月29日(水)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
ハイエンドストレージベンダーであるインフィニダットジャパン合同会社が、2017年2月23日に記者発表会を開催。日本でのSCSKとのパートナーシップを発表し、日本での積極的なビジネス展開を解説した。

イスラエル発のストレージベンダーが日本進出

2011年にイスラエルで起業されたハイエンドストレージベンダーINFINIDAT、その日本法人であるインフィニダットジャパン合同会社が記者発表会を開催した。日本でのSCSK株式会社とのパートナーシップを発表し、日本での積極的なビジネス展開を解説した。記者発表会には創業者でCEOでもあるモシェ・ヤナイ氏も出席し、INFINIDAT本社の日本にかける期待が表れていたようであった。

左からSCSKの池氏、CEOのヤナイ氏、日本代表の岡田氏

左からSCSKの池氏、CEOのヤナイ氏、日本代表の岡田氏

まず冒頭で、日本法人であるインフィニダットジャパン合同会社の代表である岡田義一氏が登壇した。自身の過去の経歴として3PARなどのストレージベンダーでのビジネス立ち上げの経験を自己紹介し、ストレージビジネスに関わるこれまでの経歴を説明した。創業者であるヤナイ氏の経歴と合わせて、ストレージのエキスパートとしてインフィニダットが単なる新興ベンチャーではなく、エンタープライズ向けのハイエンドストレージ製品に自信を持っていることを暗に示した形だ。

次に今回のアライアンスのパートナーであるSCSK株式会社の執行役員ITエンジニアリング事業本部長である池直樹氏が登壇した。SCSKが行うインフィニダット製品の販売とサポートに関する内容を説明した。すでに複数のエンジニアがインフィニダット製品に対する教育を受けており、24時間365日体制で顧客へのサポートを提供できるという。

SCSKとインフィニダットによるサポート体制

SCSKとインフィニダットによるサポート体制

ここで池氏は、インフィニダットストレージの優位点として「柔軟な提供方式」をその一点として掲げた。ストレージ製品をオンプレミスのハードウェアとして提供するところまでは従来のストレージベンダーと同じだが、利用料金を「従量制」で支払う部分にインフィニダットのユニークさがある。過去の取材時のメモでは、ミドルクラスのモデルを導入したとしても、ハイエンドモデルで利用されるストレージのエンクロージャーがすでにラックの中に収められているということであり、より容量が必要になった時にエンクロージャーの電源をオンにしてすぐに利用が続けられると言う。エンクロージャーが1台の場合は60ドライブで論理容量115TB、最大8台まで利用した場合は480ドライブで最大2.8PBの論理容量となり、これが42Uの標準ラック1台で提供される。ストレージのコントローラーは3つのユニットがアクティブ?アクティブの状態で稼働しており、複数のコントローラーが故障しても稼働を続けられる。ドライブのエンクロージャーを増設しなくても容量の増加に対応できる部分は、非常にユニークな点と言えるだろう。また一つのラックでSAN、NASに対応し、プロトコルとしてもFC、iSCSI、NFSをサポートしているのが特長だ。この辺りの使い勝手の良さを評価しているというのが、SCSKの池氏のコメントだった。

ストレージ業界の伝説的エンジニア登場

次に登壇したのは、CEOで創業者であるモシェ・ヤナイ氏だ。ヤナイ氏はかつてEMCの創業に参加し、EMCではSymmetrixを開発、その後XIVを起業したのちIBMに売却するなど、ストレージの業界では伝説的なエンジニアと言って良いだろう。そのヤナイ氏が引退状態の際に、ビッグデータやIoTなどのニーズからよりハイエンドなストレージに対するニーズの高まりと、多くの友人や業界人などからのハイエンドストレージ製品への要望に応える形で起業したのがインフィニダットだ。

ヤナイ氏は「記録容量(密度)」と「性能」の2つの軸で、ストレージ業界におけるインフィニダットの位置付けを説明した。このスライドでは横軸に容量(密度)、縦軸に性能をとり、右下、つまり容量と密度は高いが性能を伴わない例としてAmazonやFacebookなどのストレージを挙げる。左上、つまり性能は高いが容量が少ないストレージの例としてSolidFireなどのオールフラッシュアレイを、さらに容量が少なく性能が落ちる例としてNutanixのハイパーコンバージドインフラストラクチャーを挙げる。そしてインフィニダットは、「容量と性能という2つの要件を同時に実現した最高のストレージである」と訴求した。ストレージの専門家であるヤナイ氏が、自社製品との比較対象にクラウドストレージとハイパーコンバージドインフラストラクチャーを意識しているのは、モダンなストレージのユースケースとしては妥当だろう。

ヤナイ氏が示した性能と容量のポジションシート

ヤナイ氏が示した性能と容量のポジションシート

またヤナイ氏のプレゼンテーションでは、SSDよりも価格の安いHDDがインフィニダットの記憶媒体としてたびたび取り上げられており、EMCやNetAppなどのストレージベンダーがフラッシュメモリーによる記憶媒体を最優先として訴求している姿勢とは明確に異なる「ハイブリッドストレージ」をインフィニダットの根幹として考えていることがわかる。現在でもHDDの進化が続いている一例として、レーザー光線を用いた新技術などをスライドで紹介し、HDDにもまだまだ革新が起こっていることを強調した。インフィニダットとしてはフラッシュ元年を唱えるEMCなどとは異なり、コストを抑えつつ、最高の速度を出せる部分のソフトウェアに競合力があることを訴えた形になった。

インフィニダットのストレージのポイントは高い性能と99.99999%の稼働率を誇るという安定性、そして柔軟性だろう。テルアビブにあるインフィニダットのラボでは、常時顧客向け製品に対して出荷前の3週間に及ぶランニングテストが実施されているという。インフィニダット自体はストレージを構成するパーツを作るのではなく、DELLやHGST、Seagate、Intel、Micronなどのベンダーのパーツを使ってアプライアンスを製造しているが、そのパーツにも長期に及ぶランニングテストを行い、インフィニダットの設定したゴールを達成したパーツだけが使用されるという徹底ぶりだ。

インフィニダット製品に使われるパーツとそのベンダー名

インフィニダット製品に使われるパーツとそのベンダー名

この辺りからも、安定稼働が現代のビジネスに必須であるという点を十二分に理解していると言える。それに応える形で、インフィニダット製品の24時間365日サポートを打ち出したSCSKの今後の活躍に期待したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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