走る!噛む!測る!Kinect for Windowsコンテストで飛び出した奇想天外なアイデアたち
マイクロソフト社のKinect(キネクト)が、ゲーム機Xbox 360の拡張コントローラーとして2010年に発表されて以来、コントローラーを全く持たずに遊ぶことができる革新性が、大きな注目を浴びてきました。
個人によるKinectを使ったアプリケーション開発は、当初は公式にアナウンスされなかったものの、熱心なユーザーの希望をかなえる形で、PC用の「Kinect for Windows」が2012年2月に発売されました。それと同時に、SDK(Software Development Kit)も提供され、Kinectでの開発を目指す多くのエンジニアに門戸が開かれることになりました。
今回は、そんなKinectの組み込み機器への可能性を探るべく、2012年9月に行われた「Kinect for WIndows コンテスト 2012」の様子を中心に、楽しく役に立つKinectアプリケーションを紹介していきます。
*)本記事では特に断り書きのない場合、Kinect for WindowsをKinectと記載します。
主催する東京エレクトロンデバイスのある新宿パークタワーの24Fでは、最終審査まで勝ち抜いた10組のうち、辞退した1組を除く9組がプレゼンテーションを行いました。まじめなものから楽しいものまで、総勢70作品以上から勝ち抜いた精鋭チームが個性的なアイデアを披露しました。
思いのままに世界中を走ろう!
アニマルズ・パーティーの「ジョグ・ザ・ワールド」
アニマルズ・パーティーの「ジョグ・ザ・ワールド」はもともと壮大な計画でした。目の前のパノラマ大スクリーンにGoogleストリートビューを表示して、Kinectと連動したルームランナーの上を走ると、世界中の好きなところをジョギングしている気分を味わえるというものです。実際には、現実的なレベルまでコストを削減して、3枚のPC用モニターとKinectのみを使ったコンパクトなものに落ち着きました。
構造はシンプルになったものの、世界を体感できるジョギングアプリというコンセプトはしっかり再現されていて、その場で走る動きをすることでストリートビューの景色も変化していき、体を傾けることで方向転換もできるようになっています。
加えて、両手を使うと地図をコントロールすることもできるなど完成度も高く、展示デモの際には人だかりができていました。
開発の動機は、健康に良いジョギングも、しょっちゅう同じコースを走ると飽きるというものでしたが、十分にその目的をクリアできるように感じられました。
他にも、両手をクロスすると頭が吹っ飛んだり、自転車の空気入れのモーションで頭を膨らませて、やがて爆発するといった、ちょっとブラックなジョークアプリも紹介され、会場の笑いを誘っていました。一応、吹っ飛んだ頭はきちんと戻るようになっているようです。
健康のために咀嚼しよう!千葉大学チームの
「非接触型センシングデバイス?食環境づくり噛むログ?」
プレゼン内容で特に感心させられたのが千葉大学先進的マルチキャリア育成プログラム TeamCITの「非接触型センシングデバイス?食環境づくり噛むログ?」。
近代、食事における咀嚼回数が減少しているため、セルフメディケーションとしての咀嚼が増えています。しかし、現在の咀嚼センサーは口に接触するタイプが主流のため、咀嚼回数を測ることはできても、せっかくの食事の楽しさは半減してしまいます。
このシステムでは、Kinectのモーションキャプチャでも、顔を検出する細かいフェイシャルトラッキングを使って、非接触で食事をする人の顔を判別し、設定した回数きちんと噛んでいるかを測ってくれます。
驚くのは、使う筋肉によって咀嚼を判断できていることです。これによって、食事中の会話には反応することなく、きっちり咀嚼のみをカウントしていました。
Kinectを見えるように設置しなくてはならないことが指摘されましたが、将来的にはスマートハウスのように、家そのものにKinectを埋め込んで設置するなど、対策を考えているようでした。
難度の高い手術をサポート!Kinectを用いた腹腔鏡下手術システム
三木 大輔氏
カメラを頼りに手術用鉗子(かんし)を操作する腹腔(ふくくう)鏡下手術は非常に難易度が高く、重大な事故が起こる可能性も無視できないというのが現状です。しかし、この手術をサポートするための機械は数百万円から数千万円するため、小さな病院ではおいそれと導入ができません。
この機械の役割を2万5千円程度のKinectで提供できるというのが、Kinectを使用したシステムの大きなメリットです。デモンストレーションでは、腹腔内をモニターするカメラの死角に鉗子が移動した場合、どの位置に動かせば元の位置に戻せるかがわかりやすく表示されていました。これによって、鉗子が他の部位を傷つけてしまうことを防ぐことが可能です。
本格的な高い機械ほど精度が高くないため、まだまだ改良が必要とのことでしたが、豚の手術でテストしたところ、それほど期待していなかった先生も驚かれたとのことで、これからの改良が期待されます
次ページではいよいよグランプリ作品を紹介します。
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