企業の何をどうモバイル化する?
企業はモバイル・データの活用なしには仕事にならない時代
企業活動には、社外の活動が多く存在します。社内のシステムが整備され、社内データが重要になればなるほど、社外活動でもそのデータを効果的に活用して競争力を高める必要があります。
例えば、社内コミュニケーションのメールへの依存度が高ければ高いほど、社外においてもメールをタイムリーに受信・返信できることが重要になります。また、社内の承認プロセスがシステム化されればされるほど、社外からの緊急な申請・承認処理が重要になります。
このほか、社内に顧客データが蓄積されればされるほど、社外での、顧客データに基づいた効果的な営業活動と、状況更新のデータ入力が重要になります。業務によっては、現場から企業システムのデータを直接更新したり、現場で伝票を出力する必要があるでしょう。
もちろん、読者の皆さんの中には、モバイル・データを活用することの重要性を理解した上で、もっと現実的な問題を気にしている方もいるでしょう。例えば、重要なデータを社外で利用することのセキュリティの問題、すでに導入済みのWebシステムの使い勝手の向上、スマートフォンを利用することによるコスト削減などです。これらについては、後ほど順次説明します。
モバイルでのデータ活用は、企業や職種のシステム利用度に応じて、大きく以下の4つのタイプに分かれます。
(1)会社のメールやスケジュールなどのグループウエア情報を、会社のメール・アドレスを用いてスマートフォンに同期できれば良いというライト・ユース。場合によっては、全社員への導入も考えられます。
(2)企業で使用しているSFA(営業支援)やCRM(顧客関係管理)などに登録されている顧客データの情報や、薬品情報などの情報量の多い商品データをスマートフォンでサクサク検索・参照するレベル。データの更新は、社外ではほとんど行わない。これは主に、提案型の営業やコンサルタントの利用形態でしょう。
(3)申請・承認ワークフローなどの処理をスマートフォンで実行する。処理は、数回のタップで終了するようなシンプルなもの。外出する機会の多い役員クラスや営業からの需要が多い利用形態です。
(4)企業で使用しているCRMやSFAなどの顧客データを参照しつつ、保守・点検や配送などの作業データを現場で更新し、受発注の処理、在庫引き当て、支払い決済、プリンタへの伝票出力など、さまざまな処理を実行したいケース。これは一般的な営業よりも、どちらかというと現場で特殊な業務をする場合に需要が多い利用形態です。
適切なソフトウエアを選ぶべし
さまざまな制約があるモバイル環境でのデータ活用では、社内システム以上に適材適所な素材を選ぶことが重要になります。自社製品の宣伝になりますが、 iAnywhereの製品を使い分けることで実現できます。
iAnywhereの製品は、基本的にはオフラインのソリューションです。オンラインのWebシステムでもモバイル業務の実現は可能ですが、処理スピードによる使い勝手の向上や場所による業務の制約を避けるためにも、オフラインの利用、あるいはWebとオフラインを併用することを勧めます。
先述した(1)のようなライト・ユースのケースであれば、スマートフォンにおいて既読か未読かまで管理して会社のグループウエアと同期することができる「Mobile Office」(http://www.ianywhere.jp/ob/)という製品を用意しています。
最近では、iPhone 3Gをコンサルタント1000人に導入したコンサルティング会社が、オフラインでもNotesのデータを使える点やセキュリティを評価し、Mobile Officeを採用しました。
グループウエアをモバイルで活用するレベルであれば、低価格でスタートできるWeb型のASPサービスも選択肢に入ってきますが、ASPの場合は、ユーザーの使い勝手が保たれるのかどうかという問題から、経費にするのか資産にするのかといった問題、何年使用するつもりなのかという問題なども検討する必要があるでしょう。
(3)のようなケース、つまり申請・承認ワークフローをモバイルから実行するようなケースに対しては、Mobile Officeがワークフロー開発機能を提供しているほか、「Answers Anywhere」(http://www.ianywhere.jp/aa/)という自然言語解析と対話エンジンをベースにしたアプリケーションを用意しています。
(4)のような、外出先の現場でデータの更新処理が行われる用途は、これまではどちらかと言うと特殊端末の領域でした。しかし、特殊端末は1台あたりの価格が高価なため、汎用的なスマートフォンを利用することで、全体のハードウエア・コストの削減が見込めます。また、PC系の技術でアプリケーションを開発できるので、技術者の確保が容易になります。
(4)のように複雑な処理が必要な場合や、(2)のようにエンタープライズ・システムと連携して大量のデータを検索するような場合には、10万台規模のモバイル・システムへの採用実績がある軽量データベース「SQL Anywhere」を勧めます。あるいは軽量データベース「Ultra Light」とデータ同期ミドルウエア「Mobile Link」の組み合わせを勧めます。この製品については、後ほど掘り下げて紹介します。
似たような製品は多々ありますが、表面的な機能比較には現れない要素として、データの整合性が保てることや、データベースが壊れないことなど、信頼性やスケーラビリティに関連したスペックが重要です。過去、別の製品でトライして失敗し、SQL Anywhereに変更して成功した企業が何社もあります。
次ページでは、モバイル・システムの導入にあたり、導入効果を算出するためのノウハウを解説します。