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IBM、SAPが取り組む、自分で自分をメンテナンスする車

2017年6月28日(水)
ReadWrite Japan

どんな機械でもいずれは壊れる。自律運転車も例外ではない。

自律運転車は将来の乗り物について2つの問題を提示する。ドライバーがいなくなるということは、車のパフォーマンスの経年変化をフィードバックする存在がいなくなるということである。「何かおかしいから診てもらおう」という者がいなくなるということだ。

自律運転トラックは車輪が1つとり付け忘れられている状態でも、問題があると認識せずにやすやすと目的地にたどりつく。

自律運転車によって生じるもう一つのメンテナンスの問題は、センサーが故障しうるということだ。センサーが壊れた自律運転車などはそれこそ走る災害のようなものである。実際は高速道路を走ってるくらいのスピードを出してるにも関わらず、センサーは停車状態にあると報告しているとしたらどうだろうか。人間ならおかしいと感じる事で、センサーからの入力に問題があることがわかるが、自律運転車の場合は更に加速を続けるかもしれない。

自律運転車が登場した今、システムはこれまで以上に高度な診断機能を持って作られなければならない。AIは運転の自動化だけに使われるのではなく、車の自己診断機能、そして発生した問題についても対応しなければならない。

メンテナンスのための新しいAI

故障の予測という考え方は新しいものではない。人間はこれまで長らく統計から、壊れるまでの平均時間を割り出してきており、自動車業界が走行距離に応じて部品を交換するようになったのもここからきている。だが「平均時間」ということは、交換された部品が物によってはまだまだ使えたり、平均よりも早く壊れたりすることもあるということだ。AIによって走行中のパーツの状態を常にモニターするという、これまではできなかったことが可能になろうとしている。

大手は既にこの課題に着手している。多くのデータを集めて専門家に渡し、問題からソリューションを導き出すという考えによる取り組みだ。SAPIBMPivotal Labsがこの分野で頑張っている。問題は集めるべきデータを集め、それをキープしておける企業が必要なことだ。

業界が成熟し、企業の収集データが長期にわたり大きなデータセットを形成するようになれば、このソリューションはパワフルなものになる。迅速なスタートアップができる企業なら瞬発力をいかし、先んじてAIの訓練に必要なセンサーデータを集め、永続的にリードを保つためのソリューションの急速な展開を始めるだろう。

そういった企業の1つにUptakeがある。創業1年で評価額がなんと10億ドルを上回り、Forbes’誌にも2015年でもっともホットなスタートアップ企業として紹介された。彼らはこれを、まずデータセットの収集をいちから始める事で達成した。まずは鉄道から手がけ、他の乗り物にも手を広げていき、やがてCaterpillarと提携を結ぶに至った。彼らは将来、乗り物からその先の広い業界への予測的メンテナンスに手を伸ばすように思われる。

PretecktもUptakeにならって自分達でデータセットの収集を行なっているが、そのターゲットは路上を走る車に絞っている。Pretecktはトレーラーを手がけることからはじめ、すでにバスに手を広げている。ハードおよびソフトのアーキテクチャはより小さな乗り物にも移植可能だ。Pretecktのテクノロジーはすでに自律運転トラックに投入されており、将来は自律運転車に使われるようになるだろう。

未来はスタートレックではない

SFでは人が機械に自己診断させ、何処がどうおかしいのか質問することがある。このコンセプトは誤りだ。機械は人が尋ねる前に何がおかしいかを知り、次におかしくなる所を人に教えるようになる。あなたが利用しているときに問題を起こさないよう、どうすれば最善のケアができるかを教えてくれるようになるだろう。これが将来の自律運転車にあなたが期待できることだ。車が路上であなたに突然のトラブルなどで不安を与えたりすることはないと思ってよいだろう。

だがトラブルを排除するだけで充分だろうか?車が自分で運転し、次のメンテナンスが分かるようになるのであれば、あなたが使わない日に車が自分でメンテナンスに行けばいいのではないだろうか。車のメンテナンスが知らない間に行われるというコンセプトは、所有者にとってありがたいものになるだろう。

この記事はコネクテッドカーシリーズの一作である。上図の高精細版はここからダウンロードできる

SASHA KUCHARCZYK
[原文4]

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。
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