連載 :
  インタビュー

クラウドベースのデータ管理のDruvaが唱えるAs a Serviceによる優位点

2017年10月16日(月)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
クラウドベースのデータ管理ソリューションのベンチャー、Druvaの本社をカリフォルニア州サニーベイルに訪問し、VPのPrem Ananthakrishnan氏にインタビューを行った。

企業の提供するITシステムとアプリケーションは、PC+Webベースからスマートフォンなどを活用するように変革が進んでいる。つまりサーバーは企業が運用するデータセンターからパブリッククラウドへ、クライアントはデスクトップPCからノートPC、さらにスマートフォンへと展開され、企業の持つ資産であるデータはますます拡散する方向にある。そんな状況下で、データ保護をクラウド側にバックアップするソリューションを展開するDruvaの本社を訪問した。インタビューに応じてくれたのはVice President of ProductsのPrem Ananthakrishnan氏だ。

サニーベイルにあるDruvaのオフィス。カンファレンスルームには大きなロゴ

サニーベイルにあるDruvaのオフィス。カンファレンスルームには大きなロゴ

まずDruvaのソリューションが他と違う点は何なのか、そこから説明をお願いします。

DruvaのVP of Products、Prem Ananthakrishnan氏

DruvaのVP of Products、Prem Ananthakrishnan氏

我々のソリューションが、通常のハードウェアベース、オンプレミスベースのデータバックアップソリューションのベンダーと違う点は2点あります。一つ目は、SaaSベースのソリューションであること。これは顧客の視点から見れば、データ管理を行うためのハードウェアやその上のソフトウェアを管理しなくても良いということを意味しています。つまりサーバーやデスクトップPCのデータを管理するためだけに、また別のハードウェアを用意する必要がないということです。そして二つ目は、クラウドに特化していることです。単にソフトウェアをクラウドに置いただけではなく、Druvaのクラウドオペレーションチームが顧客のデータの管理を集中的に行っていることで、より効率的な管理を行っています。これは他のベンダーでは実現できていないDruvaの優位点だと思います。

クラウドにデータを管理しているということは、自社でクラウドのインフラストラクチャーを構築しているのですか?

DruvaのソリューションはAWSとMicrosoft Azureの上に構築しています。しかし顧客はそれを意識する必要はありません。顧客が目にするのはDruvaのコンソールだけで、AWSやAzureをバックエンドで使っているということを知ることもなく、データを管理することができるのです。

クラウド上のソフトウェアはマイクロサービスとして実装されていますので、必要に応じてスケールアウトすることが可能です。また実装の方法も、それぞれのクラウドに依存しているわけではありませんので、他のパブリッククラウドにも拡張を行うことが可能です。

すると、今は対応していないGoogle Cloud Computingにも対応できるということですか?

GCPへの対応は技術的な制約ということではなく、単にビジネスの優先度の結果です。顧客が望めば対応する予定です。

例えば、顧客が新しいスマートフォンのアプリケーションと連携するサーバー上のデータベースのアプリケーションを開発して、利用し始めたとします。その場合、Druvaの管理者はそれをマニュアルでデータ管理の対象として追加しなければいけないのですか? 自動的に見つけるディスカバリーのような機能があると良いと思いますが。

Druvaのソリューションにはディスカバリーの機能も備えています。例えば、VMwareの仮想マシンが立ち上がったことを認識して、新たにバックアップの対象として自動的に追加することもできます。また、新しく社員が追加され、利用するPCが追加されたような場合は、Active Directoryとの連携機能を使って自動的にそのPCをバックアップする対象に加えることもできます。またロールベースのポリシーを使って、「どのようなデータをどうやって保護するのか?」を集中的に管理することもできます。

実際にサーバーベースのデータ管理とデスクトップPCなどのデータ管理は違うと思いますが、それを全てクラウドで行っているのはなぜですか?

実際にデータの管理という側面で見れば、デスクトップPCのデータ管理とサーバーのデータ管理は違うものですが、クラウド上でデータを管理するという意味では同じなのです。Druvaはデータ管理を「As a Service」として提供するためにアーキテクチャーをゼロから考え直した上で、全てをクラウド上で行うことにしたのです。その結果、デスクトップPCのデータとサーバーのデータを包括的に管理することができるのです。

我々の2つの製品、INSYNCとPhoenixはそれぞれ管理するためのプレゼンテーション層としての管理ツールを持ちますが、中身は同じアーキテクチャーで実装されています。そしてクラウド上に保存された顧客のデータはインドにあるクラウドオペレーションチームが集中的に管理を行っていますので、顧客は運用管理に頭を悩ます必要からは解放されます。またデータ保護の対象としてクラウドに保存されたデータは必要に応じて、例えばAWSのS3からGlacierに移動されてコストの最小化を実現します。

また将来的には、保護されたデータの中身を分析する機能も計画しています。例えば、マルウェアに感染してしまったデスクトップPCをアーカイブから復帰することを考えてみましょう。この場合、「いつからそのマルウェアが存在しているのか?」を検知できないと意味がありません。つまりデータの中身を分析することで、マルウェアが存在するアーカイブからそれを取り除いた上でバックアップから復帰する、ということが可能になります。当然ですが、それを行うためにはアーカイブにおける検索も必要になります。それらの機能は、全てクラウド上にデータセットを持つことによって可能になるのです。

先ほどのデータの状況に応じてクラウドストレージを使い分けるという話がありましたが、そのためには顧客のデータがどのように使われているのかを知る必要があります。それはどうやって実現するのですか?

それに関しては、機械学習の技術を使うことになると思います。常にデータがどのように使われているのかを機械学習させることで、異常を検知することができます。また我々のクラウドオペレーションチームは常に顧客のデータに関する動向を監視していますので、最適のコストでデータ管理を行うことができるのです。それは単に異常をみつけること以上に、運用を行う人達にとっては意味のあることだと思います。

また包括的にデータを管理することで、DruvaのソリューションのAPIを使って外部のサービスとの連携ができるようになります。これはOffice 365のデータ管理を行う上で、必要に応じて開発された技術です。Office 365はデスクトップPCのアプリケーションではなくクラウド上のアプリケーションですが、そこのデータを取り込むためにはクラウドをまたがってデータをやり取りする必要が出てきたのです。そのために、APIを使ってそれを利用するということが必要でした。そしてそれをさらに拡張して考えれば、クラウド上のデータ管理そのものにAPIを追加しておけば、外部のサービスからの利用が可能になります。

つまり、これまではサーバーやPCからのデータを抜き出すコンシューマーとしてデータを運用してきたDruvaが、他のベンダーにデータを提供するプロバイダーとして他のシステムにAPIやデータを供給する側になるということですね?

そうなります。これから我々以外にも多くのデータに関するアイデアが出てくるでしょうから、それを自社のソリューションだけで囲い込むのは意味がありません。そのためにAPIを使って、他のベンダーが利用できるようにするというのが我々の計画です。

Druvaがユニークなのは理解しました。具体的には価格の付け方はどのようになっているのかを教えてください。

デスクトップのデータ管理INSYNCは、ユーザー数で課金を行います。サーバーのデータ管理Phoenixについては、データの量による課金になります。ここで注意していただきたいのは、サーバーのデータの課金は、重複排除と圧縮を行った後でのデータサイズに対して行われると言う部分です。例えば、VMwareの仮想マシンが消費するデータサイズが10TBだったしましょう。それに重複排除と圧縮をかけると、2TB程度になる場合があります。それをクラウドで保存するので、課金の対象は実際の10TBではなく圧縮後の2TBになります。Druvaの重複排除と圧縮は業界でもトップの性能を誇ると自負していますので、顧客はさらにコストを削減できるのです。

Prem氏のインタビューの後、CEOのJaspreet Singh氏からも簡単に話を聞いた。Singh氏によれば日本は中国に並んで重要視している市場であり、そのために「これからも多くの投資をして行きたい」と語っていた。

DruvaのCEO、Jaspreet Singh氏

DruvaのCEO、Jaspreet Singh氏

Druvaのオフィスはカルトレインのサニーベイル駅の近傍にあり、人員の増加に合わせて拡張が行われている最中であるという。社内にはDruvaのミッションを表すポスターが掲示され、勢いのあるベンチャーの典型であるように思われた。なお開発は、ほとんどがインドにある拠点で行われているという。

Druvaのポスター「Druvaのコスト削減でCFOが思わず笑ってしまうはず」という意味

Druvaのポスター「Druvaのコスト削減でCFOが思わず笑ってしまうはず」という意味

受付の前には多くの顧客のロゴが掲示されている

受付の前には多くの顧客のロゴが掲示されている

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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