エンタープライズ向けデータ保護のVeritas、クラウドネイティブ時代のデータ保護を語る
データ保護ソリューションを提供するVeritas Technologies LLCの日本法人であるベリタステクノロジーズ合同会社は、メディア向けに説明会を開催した。これはVeritasのアジア・パシフィック及びジャパン担当のシニアディレクターと、Backup Execのジェネラルマネージャーの来日に合わせてインタビューに応じたものだ。今回は、プレゼンテーションの概要と質疑応答などについて紹介する。
Veritasは、Intelのエンジニアだった創業者がフォルトトレーラント型のシステムを開発していたハードウェアベンダーとして始まったが、その後データ保護のためのジャーナルファイルシステム、バックアップソフトウェアを開発するソフトウェアベンダーに転身した。2004年にはSymantecと合併し、社名はSymantecとなった。その後、2015年にSymantecから分離して、現在のVeritas Technologiesとして独立したという経緯を持つ。
最初にプレゼンテーションを行ったAPJ担当、Channel&Alliance、シニアディレクターのGary Sievers氏は、Veritasが「バックアップ製品では業界No.1である」ことを説明した。特にエンドユーザー向けの販売を行うチャネル戦略については、パブリッククラウドプロバイダーであるAWS、Azure、GCPとの連携だけではなく、AlibabaのCloudサービスであるAliCloud、Huawei Cloudなどが挙げられており、アジアでの中国の存在を強く意識させる内容のスライドが紹介された。またストレージベンダーとの連携という意味では、Pure StorageやNutanixなどの名前も挙げられており、パブリッククラウド、ストレージベンダー、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーなどの企業に対しても、幅広い提携を行う意思が感じさせられた。
特にAWSについては、NetBackupとBackup ExecがAWSのストレージコンピーテンシーとしてのステータスを取得したことがトピックとして紹介された。これはAWSでのデータ保護においてVeritasが、Veeam、NetApp、Druva、Rubrikなどと同様に認定されたことを意味しており、エンタープライズが求めるマルチクラウドでのデータ保護のニーズに応えるものだ。AWSとの提携は2017年には発表されていたが、それを強化するというのがこのストレージコンピーテンシーステータスという意味だろう。
より詳細な解説は、Backup ExecのGM&VPであるSimon Jelley氏によって行われた。
クラウドネイティブなシステムにおけるデータ保護という部分に関しては、2019年2月6日にDocker Enterpriseにおいて認定を受けたということが紹介された。これはDocker社が認定したISV製品としてDockerのエンタープライズ向けコンテナプラットフォームであるDocker Enterpriseに、Veritas NetBackupが認められたということだ。しかしKubernetesにおけるソリューションという意味では、Heptioが開発するVeleroや、AppsCodeが開発するStashのようなソリューションは紹介されなかった。Kubernetesが利用するストレージに関するデータ保護はこれからという印象を受けた。
クラウドネイティブなアプリケーションの場合、アプリケーションイメージ、つまりコンテナイメージのスナップショットを定期的に取っておいて障害時に備えるという発想ではなく、Ephemeral(短命)なシステムと位置付けて、HarborやQuayなどのレジストリーからイメージを取り込んで再起動するというほうが運用形態には合っているように思える。しかしそれでも、Kubernetesが利用するVolumeに対する保護は必要だろう。エンタープライズ級のデータ保護のリーダーを標榜するVeritasにも、期待したいところではある。
マルチクラウドの利用におけるコスト面での利点という部分については、Jelley氏がホワイトボードを使って説明。これはオンプレミスに存在する大量のデータをパブリッククラウドにバックアップする際、実際にデータとして保管されるデータ量についてだけ課金され、それをパブリッククラウド側でプライマリーアーカイブ、セカンダリーアーカイブさらにテープへの退避などに重複して保管される際にコストが追加されることはないという「Front-End Terabytes(FETB)」と呼ばれる計算方式に関するものだ。これはすでに2011年には、VeritasのFAQに掲載されていることから、NetBackupがインストールされていないコンピュータでアーカイブを移動、複製してもコストは不要ということを示している。
また質疑応答の中で「昨今のWebサービスではアクセスログの重要性が高まっており、大量に発生するログをどうやって保護管理するのか? Veritasのソリューションは?」という質問に対して、Jelley氏が「今日発生したログと次の日に発生するログにそれほど違いはなく、差分が存在するだけなので、その差分を保存するようにすれば問題はない」と回答したことには軽い衝撃を受けた。おそらくJelley氏は、ECサイトのログではなく、社内のアクセスログを想定して回答したのかもしれない。しかし、日夜大量に発生するログはインターネットビジネスにおいては生命線とも言えるユーザーの行動データであり、ビジネス上の重要性は増している。ただ、VeritasのソリューションとしてはInformation Mapというソリューションが存在し、非構造的なデータの管理はBackup Execの担当ではないというのが、回答が若干的外れなものとなった理由だろう。
さらにJelley氏は、バックアップ製品の一つであるSaaS Backupを紹介した。これはOffice 365やGoogleのG-Suite、SFAのSalesforceなどにおけるデータ保護を行う製品だ。たとえばOffice 365で言えば、アプリケーションのデータをMicrosoftが提供するよりも長期に渡って保護するソリューションで、例としてSharePointとOneDriveでは93日間と設定させているデータの保護を延長させるものだ。Jelley氏に「もしもMicrosoftなどがSaaS Backupの機能を彼らのアプリケーションに組み込んでしまったらどうしますか?」と質問したところ、「そのリスクは過去からずっと存在する。しかしVeritasが持っているようなデータ保護の高い機能を簡単にコピーできるとは思わない。そんなに簡単に実装できるものではないし、簡単にできるならもうやっているはずだ」という回答を得た。Veritasは、対象がSaaSであってもデータ保護の経験には自信を持っているということが垣間見えた瞬間だった。
VeeamやRubrik、DruvaなどのKubeConでもお馴染みになった新興のデータ保護ベンダーが、Kubernetesとの連携を強調する方向に走り出している現在、Veritasのようなエンタープライズ向けソリューションのベンダーからの新しい提案に触れてみたいと思ったインタビューとなった。引き続きクラウドネイティブなシステムにおけるデータ保護については注目していきたい。
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- Nutanixが年次カンファレンスでHCIからマルチクラウドにつながるソリューションを解説
- クラウドベースのデータ管理のDruvaが唱えるAs a Serviceによる優位点
- NutanixのCTO、真のマルチクラウドを訴求「VMwareはいつも間違えている」
- 複数のバックアップソフトウェアに脆弱性、今後拡大の可能性も
- Veritasが機械学習を応用した分類機能を持つSDS、Veritas Cloud Storageを発表
- 富士通、中小企業向けバックアップアプライアンス「ETERNUS BE50」を販売開始
- Dockerにおけるデータ専用コンテナ、KVM仮想化環境からの移行
- SODA Data Vision 2023からKubernetes上のアプリケーションデータを保護するKanisterを紹介
- Dockerコンテナ環境のバックアップツール「Convoy」を使う
- Veeam Software、データバックアップソリューション「Veeam Availability Suite 10」の提供を開始