コンテナー管理ツール「Rancher」のエンタープライズ利用に向けたイベント開催
NTTコミュニケーションズのRancherサービスを紹介
NTTコミュニケーションズの林雅之氏は、エンタープライズにおけるコンテナーのニーズと、それに対するNTTコミュニケーションズのサービスを解説した。
林氏は背景として、デジタル化による新しいビジネスモデルのためにユーザー企業自身がデジタル化する中、「SoR」や「モード1」と言われるトラディショナルICTが減っており、「SoE」や「モード2」と言われるクラウドネイティブICTが加速していると説明。後者のためにコンテナーのニーズも加速していると語った。
それに対してコンテナーを利用するための課題として、Dockerに精通したエンジニアが少ない、セットアップや運用管理のためのドキュメントや公開情報が少ない、Dockerコンテナー環境の運用管理が難しいといった声を、林氏は調査結果から紹介。「NTTコミュニケーションズは企業が安全安心でコンテナーを使えるようにする」と語った。
実際の取り組みとして、NTTコミュニケーションズグループはRancher Labsと企業向けコンテナーサービスの提供に向けて協業することを7月に発表している。グループのうち、NTTコミュニケーションズのEnterprise Cloudが大企業に、NTTPCコミュニケーションズのWebARENAが中小企業に向けた、Container as a Serviceの実現に取り組むという。
NTTコミュニケーションズのEnterprise Cloud Rancherサービスでは、Rancher機能や、Dockerコンテナー実行基盤の管理とサポート、NTTコミュニケーションズのクラウドサービスを提供する。
サービスは10月に向けて提供を準備中(このイベントの時点で)。すでに大手製造メーカーがIoT基盤として先行導入しているという。この事例では、VPNで拠点を結び、センサーデータを収集してデータ処理している。プラットフォームはOpenStackの上で、開発にはCloud Foundryが、実際のデータ収集にはRancherが使われているという。
社内の開発にRancherを使ってわかったこと
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)の寺田充毅氏は、社内での開発のCI/CDにRancherを利用した例を解説した。
まず現状の課題として、絶え間なくリクエストが来る中でのアプリケーションのデプロイが語られた。具体的には、すべては自動化されていないため顧客が増えると手作業が増えること、PXEブートによるスクリプトが肥大化して失敗することも多いことなどを挙げられた。これに対してコンテナーによるデプロイを考えたという。
ただし、本番適用にはまだ難しいということで、その前にまず開発中のNFSサーバーのCI/CDパイプラインにRancherを導入した。構成としては、オーケストレーターにはCattleを、アカウント管理には社内GitHubを、データはコンテナー外のNFSとMySQLを、DockerイメージはプライベートなDockerレジストリ、CI/CDにはJenkinsを使った。
まず問題となったのが、ログの問題だという。ファイルシステムのテストは時間がかかり、Dockerのログではローテートされてしまうという。そこでまず、監視にPrometheusを、可視化にGrafanaを使った。また、ログ自体はDockerの機能によりfluentdに出すようにした。
寺田氏はRancherの良かった点として、カタログで効率的な管理ができること、CI/CDパイプラインの作成が簡単なこと、デプロイが簡単かつ失敗が少ないことを挙げた。
一方で悪かった点として、たまにエラーが起きることや、コンテナーの問題でホストが巻き添えをくうことがあることが挙げられた。また、ログ解析については大量のログの保存コストがかかることも紹介。それに対して、自社(IIJ)のクラウドに貯めて、解析したら捨てるというアイデアを語られた。
そのほか、ホストの増減にRancherからRancherホストを構築するMachine Driverを利用する方法が解説され、IIJ GIO P2も対応したと紹介された。これにより、RancherからワンクリックでホストとなるVMを追加できるという。
導入支援・教育サービス「Rancher Partner Network」登場
イベントでは、Rancherの導入支援・教育サービス「Rancher Partner Network」も紹介された。株式会社スタイルズ、オーアール・ラボ株式会社、フォーシーズンズ株式会社、株式会社スーパーソフトウエアの4社による。
Rancher Partner Network自体については、フォーシーズンズの市川豊氏が紹介した。スタイルズがDocker・RancherによるDevOps環境構築のコンサルティングを、オーアールラボがトレーニングや検証施設を、スーパーソフトウエアが導入支援・コンサルティング・トレーニングを、フォーシーズンズが導入支援と教育サービスを提供する。
市川氏はフォーシーズンズの導入支援サービスについて、Rancher・Dockerのオンプレミス環境の導入支援サービス(クラウド環境にも対応)ともに、それに伴う教育サービスに力を入れると説明した。「昨今のコンテナー界隈の状況は、パブリッククラウドが騒がれ始めた時期によく似ている。社内や仕事を通して学べる範囲を超えている。そこでパートナー企業と協力してRancher初級トレーニングを提供する」(市川氏)。
スタイルズの矢野哲朗氏は、RancherによるDevOpsについて語った。
氏はDocker導入についての質問が開発と運用とでまっぷたつに分かれると説明。これはDevOpsの問題ではないかと語った。そのDevOps導入については「考え方の壁」「仕組みの壁」「設計の壁」の3つの部を挙げた。
矢野氏は最初にすべきこととして「まずGitに慣れる」ことを挙げ、そのためにGitLabの導入を勧めた。GitLabは、Gitリポジトリ機能のほか、CI/CD機能やDockerレジストリ機能もあり、RancherによるDevOpsに向いているという。「弊社では、RancherとGitLabによる『型』を提供して、負担を軽減する」と氏は説明した。
オーアール・ラボの辻義周氏は、同社のトレーニングサービスを紹介した。
同社の「Docker / Rancher研修」では、アプリケーション開発者を対象に、2日間で、概要の理解からDocker Engineの導入およびRancherの構築までを学習するという。
また、「Docker / Rancher検証ルーム」も紹介した。事前の申し込みにより各種ベンダーのハードウェアでDocker・Rancherを検証できる(近日開始)。検証ルームは、国際産業技術株式会社と、レノボ・ジャパンの2箇所に設けるという。
<記事訂正:2017年11月15日>初出時、IIJ寺田氏のお名前が間違っていました。お詫びして訂正致します。
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