連載 [第5回] :
  GitHub Universe 2019レポート

GitHub Universeで発表されたGitHub Desktopの最新バージョンとは?

2020年2月13日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
GitHub Universeで発表されたGitHub Desktopの新バージョンについて、開発責任者にインタビューを行った。

GitHub Universeで発表されたソフトウェアのうち、非常に反応が良かったのがGitHub DesktopとGitHub for Mobileだ。この記事ではGitHub Desktopの責任者であるNeha Batra氏のインタビューをお届けする。

GitHub Desktopの責任者、Neha Batra氏

GitHub Desktopの責任者、Neha Batra氏

自己紹介をお願いします。

Batra:私はGitHub DesktopのEngineering Managerを担当しています。GitHubに移る前は、Pivotal Labsでアジャイル開発のシニアソフトウェアエンジニアをやっていました。

私もサンフランシスコにあるPivotal Labsのラボを訪問したことがありますが、よくあるソフトウェアデベロッパーのオフィスとはだいぶ違う環境でした。キューブにエンジニアがいるのではなく、大きなデスクの島に複数のエンジニアが座っていて活発にコミュニケーションを行いながら開発していて、とてもにぎやかだったことを覚えています。でもアジャイル開発環境としては最高の場所であると今でも思っています。

Batra:そうですね。あの環境はアジャイル開発には必要です。ですのでデベロッパーがコミュニケーションを行いながら開発をするという時に何が必要なのかは、よく理解していると思います。

今回のGitHub Desktopを実際に自分のPCに入れて使ってみましたが、最初に出てくるチュートリアルが非常によくできていると思いました。GitHub Desktopをデザインする上で気を遣った部分は何ですか?

キーノートでDesktopを紹介するBatra氏

キーノートでDesktopを紹介するBatra氏

Batra:今回はグラフィカルなインターフェースを持ったソフトウェアであるということで、特に気を遣った点はまったくの初心者から、ある程度GitHubを使いこなしているユーザーまで幅広いユーザーを想定しなくてはいけなかったという点ですね。

初心者にとっては分かりやすさが重要ですが、ある程度使いこなしているユーザーにとってはコマンドラインと同じような操作のしやすさも重要だったのです。なのでどちらかに合わせるというのではなく、どちらのユーザーも満足させないといけないということが難しかったですね。

会場から大きな反応があったPost-Itにコマンドをメモしたスライド

会場から大きな反応があったPost-Itにコマンドをメモしたスライド

私もMicrosoft Officeのチームで働いていたことがあるのでわかりますが、機能を増やしても操作方法を見つけてくれなかったらその機能はないのと変わりませんね。どうやってその機能を見つけてもらうか?というのが大きな課題でした。

Batra:そうです。なので初心者にとって、チュートリアルは重要だと思います。

ある程度使っているユーザーにとってはコマンドラインとどのくらい操作が違うのか? というのは大きなポイントだと思いますが、実際に同じことをするのにどれくらい操作が違うのか? というリサーチはされました?

Batra:それは良い質問ですね。具体的に計測はしてないですが、グラフィカルなインターフェースですからコマンドラインよりはいくつかの操作はわかりやすくなっています。例えば、ソースコードのツリーを操作したりブランチを切り替えたりするような場合は、GUIのほうがより直感的に操作しやすくなっていると思います。

CTOのJason Warner氏はインタビューの中で、ソフトウェア開発のプロセスの最初と最後、つまり企画を行うような部分と最後のCI/CDの部分にGitHubのカバーできる領域があるという話をしていました。GUIを持っているGitHub Desktopなら、もっとプランニングの部分、例えばカフェテリアのナプキンにスケッチするようにソフトウェアの行うような場面でも使えるのでは?

Batra:それはおもしろいアイデアですが、Desktopは今回でバージョン2.0なので、コンプライアンスに関する機能やオフラインで操作する機能などやるべきことはたくさんあるのです。またコマンドラインを使い続けてきたユーザーがもっと乗り換えやすくなるような拡張も必要だと思っています。

DesktopはGitHub Enterprise Serverもサポート

DesktopはGitHub Enterprise Serverもサポート

GUIということでローカライゼーションは大きな課題だと思いますが、そのあたりはMicrosoftから学べることも多いのでは?

Batra:GitHubがMicrosoftから学んでいることは多くありますが、Desktopについてはこれからですね。MicrosoftのVisual Studio Codeは私も使っていますよ。基本はAtomを使っていますが、一緒に働くチームやタスクによってはVisual Studio Codeも使います。良いソフトウェアですね、VS Codeは。GitHub Desktopについても、ローカライゼーションも重要だと言うのは認識していますので、順次進めています。

GitHub Desktopの成功を判断するKPIは?

Batra:ユーザーの数が最初の目標となります。GitHubには新しいユーザーが日々増えていますが、そういうまだ慣れていないユーザーがどれだけDesktopを使ってGitHubを使ってくれるのか? これがDesktopチームの目安にはなりますね。そしてGUIとCLIの比率にも注目しています。

GUIを持った製品ということで、デベロッパーではない人にもGitHubを使ってもらう良い入り口になるのでは?

Batra:その通りです。なのでDesktopを通じてデベロッパーではないプロフェッショナルな人たちにもGitHubを使ってもらいたいと考えています。

コマンドラインでの操作と比べて、より簡単に操作できるというのがGitHub Desktopの最大の特徴であるが、チュートリアルが充実していることでこれまで敬遠していた非デベロッパーにとってもハードルを下げる効果を期待できると思わせるGitHub Desktopであった。Windows版、macOS版のそれぞれが用意されいるのも現状に応じた対応だろう。

参考:https://desktop.github.com/

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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