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連載 [第3回] :
  GitHub Universe 2017レポート

ソフトウェア開発支援の先にGitHubが目指すエコシステムが見えた?

2017年11月6日(月)
松下 康之
GitHub Universe 2017 2日目、GitHubが目指すエコシステムの確立に必要な要素技術が紹介された。

ソースコードリポジトリーサービスのGitHubが開催したGitHub Universe 2017、2日目のセッションを紹介する。初日がCEOのトークから機械学習を使った新しいデータサービス、そしてGraphQL APIによる外部からのデータ利用の可能性を紹介したGitHubだが、今回紹介する2日目の内容は、最近入社したSVP of TechnologyであるJason Warner氏のトークから始まった。

Warner氏はGitHubに移ってまだ半年ほどという新しいメンバーだが、以前はHerokuのVP of Engineering、その前はCanonicalでHead of Desktop Engineeringというキャリアを持つ人物だ。

エンジニアリング部門のTop、Jason Warner氏

エンジニアリング部門のTop、Jason Warner氏

Warner氏は今回のUniverseで発表された「News Feed」、「Dependency Graph」、そして「Security Alert」について説明した。最初は、GitHub.comに追加されたニュースフィードだ。これはhttps://github.com/dashboard/discoverを参照すれば理解できるが、GitHubユーザーの行動を元にそのユーザーへの「お薦め」のリポジトリーを紹介する機能だ。これは、オープンソースソフトウェアのコミュニティに参加したくてもどこを選べばよいのか分からないという人に、GitHub上のコミュニティを紹介する機能だ。

ポイントはNews Feed、Dependency Graph、そしてSecurity

ポイントはNews Feed、Dependency Graph、そしてSecurity

またDependency Graphは、開発しているソースコードが他のオープンソースソフトウェアを利用している際にその依存関係を理解する機能だ。脆弱性の有無、パッチや最新バージョンの有無などを知らせてくれるSecurity Alertとともに用いられる。Security Alertは、オープンソースソフトウェアのインベントリーを管理するソリューションを提供しているBlack Duckなども実現している機能で、開発しているプロジェクトにおいて利用しているオープンソースソフトウェアに脆弱性が発見された場合、それを素早く検知して通知する機能だ。これによって、脆弱性を含んだままソフトウェア開発が進んでしまうことを防ぐことができる。ただこの機能はあくまでも公開されている脆弱性の情報を活用しているということで、Blackduckのソリューションと連携しているわけではないようだ。

そしてWarner氏はソフトウェア開発における多様性にも言及する。GitHubとして様々な開発スタイルを歓迎し、組織によっては多種多様な開発スタイルがあることを認め、特定のスタイルの強要はしないと語った。これは、ややもするとGitHubが「スタートアップとアジャイル開発のためのプラットフォーム」とみなされることへの牽制ということだろう。従来型のソフトウェア開発を行っているエンタープライズ企業にも、ソフトウェアのライフサイクルの中でGitHubをもっと使って欲しいという意図が見える。そしてIDの統合についても解説した。エンタープライズであれば、シングルサインオンなどで多数のシステムが同じIDで使えるソリューションがすでに導入されていると思われるが、GitHubも連携していることを紹介。こちらもエンタープライズに向けたメッセージだ。

例えば、企業向けITプラットフォームと言えばサーバーもデスクトップもWindows、そしてID管理にはActive Directoryというのが、少し前の企業向けプラットフォームでは当たり前の構成だった。だが今や、そのMicrosoftさえパブリッククラウドであるAzureのActive DirectoryとGitHubを連携するソリューションを提供しているのが現実だ。そういう見地からは、GitHubはすでに企業システムに浸透していると言ってもよいだろう

参考:Tutorial: Azure Active Directory integration with GitHub

それに呼応するようにステージに上がったのは、DXC TechnologyのJoan Watson氏だ。DXC Technologyは日本ではあまり知られていないと思われるが、北米のITサービス大手であるCSC(Computer Sciences Corporation)とHPEのエンタープライズサービス部門が2016年に合併してできた新しい企業だ。エンタープライズという意味では、社員数17万人を抱えるという巨大なIT企業である。Watson氏は、DXC Technologyが企業としてもデジタルディスラプション(ソフトウェアによる破壊的な創造)に立ち向かわなければいけないと語った。社内で誰がどんなソフトウェアを開発しているのか、すぐに探すことができるようになったという。ここでも「DXCのような企業でもGitHubを使っている」というアピールは充分に行えたのではないだろうか。

DXC TechnologyのJoan Watson氏

DXC TechnologyのJoan Watson氏

次にステージに上がったのはリスボンのベンチャー、CodacyのCEO、Jamie Jorge氏だ。Codacyはコードレビューの自動化を実現するソリューションを提供しているベンチャーだが、GitHubのマーケットプレイスに登録することで資金調達が行えたことを紹介した。ここではスタートアップに向けてGitHubを使うこと、そしてマーケットプレイスに登録することの利点を、事例から語らせた形になる。

CodacyのJamie Jorge氏

CodacyのJamie Jorge氏

最後に紹介されたこのスライドでこの記事を終えよう。これはGitHubが目指すエコシステムを表しているように思う。

GitHubが目指すエコシステム

GitHubが目指すエコシステム

これまではGitHubは、純粋にProjects、Code、Build/Testと言ったソフトウェア開発の一部のプロセスに焦点を当てていた。そこからCI/CD、オーケストレーション、モニタリングといった運用の領域へ、そしてプログラマー以外のスタッフがアイデアを共有するプラットフォームへと適用を拡げてきている。そしてそれを大外から支えるのが、サードパーティのソリューションによるマーケットプレイス、さらに世界最大のリポジトリーであるGitHubならではのユーザーやトラフィックに関する情報が加わり、ソフトウェア開発から大きく事業を拡げていく。このスライドは、そのようなGitHubの姿が表されていると思われる。2011年、マーク・アンドリーセンが「Software is eating the world」と語ってからだいぶ時間が経っているが、GitHubはそれをコードリポジトリーの立ち位置から静かに実践しようとしているように思える。そんな印象を抱いたGitHub Universe 2017、2日目のキーノートセッションだった。

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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