KubeCon Chinaでは展示ブースも中国ベンダーが猛プッシュ
これまでのレポートで見てきたように、上海で開催されたKubeCon Chinaでは、キーノートもセッションも中国ベンダーが大いに目立つ演出となった。そしてそれはショーケースと称される展示ブースでも同様で、Huawei、Alibaba Cloud、Tencent Cloud、Baidu、JD.comなどが大きなブースを展開していた。
存在感を示すトップ3のHuawei、Alibaba、Tencent
特に目立ったのはHuawei、Alibaba Cloud、そしてTencentであるが、彼らは今回のカンファレンスのトップ3のスポンサーでもある中国ベンダーだ。
冒頭の写真でも分かるようにHuaweiはストラテジックパートナー、Tencent Cloudがダブルダイアモンド、そしてAlibaba Cloudがダイアモンドと、通常のカンファレンスでは見られないようなランクのスポンサーシップを得るほどにこの3社が多くの後援を行っていることが見て取れる。
このスライドはキーノートが始まる前にローテーションされていたものの1枚だが、同様にTencent Cloud、Alibaba Cloudも露出され、中国ベンダーの今回のカンファレンスにかける期待の大きさを感じることとなった。
Huawei
多くのブースでは参加バッジのQRコードスキャンに加えて、WeChatのQRコードをスキャンするようになっていた。これによってノベルティを入手できる仕組みが、中国でのカンファレンスでは常識となっており、Huaweiなどの人気ブースでは参加者が殺到する場面も見られた。
それぞれのデモコーナーでは各社が訴求したい内容が配置され、説明に聞き入る熱心な参加者が集っていた。
この写真でも分かるように、中国のベンダーのスライドやパネルは基本中国語で、タイトル程度が英語の併記ということで、ここでも中国語が最優先というのは変わらない。
Huaweiはハンズオンコーナーも設置して、参加者が実際に操作してクラウドサービスを体感することも可能になっていた。
Huaweiではミニゴルフのコーナーも用意して、参加者を楽しませていた。
Alibaba Cloud
Alibaba Cloudは少し狭いブースながらも多くの参加者が殺到しており、ここでも中国のパブリッククラウドベンダーの強さを見せつけた形となった。
全体としてシアトルやバルセロナ、コペンハーゲンなどで行われたKubeConと比較すれば少ないものの、多くのブースで活発な対話が行われており、参加者の興味の高さが表れていた。
またLinux FoundationやCNCFのカンファレンスではお馴染みのジョブボードは上海でも設置されており多くの書き込みがなされていた。
Tencent
地味に2018年に北京で行われたLinuxCon Chinaで発表されたRPCフレームワークのTARSが人を募集しているのが興味深い。TARSはTencentが開発したRPCフレームワークで2018年よりLinux Foundationのプロジェクトとしてホストされている。
クラウドネイティブなRPCについてはGoogleが社内で開発していたStubbyを発展させてオープンソースソフトウェアとして公開し、CNCFのインキュベーションプロジェクトとなったgRPCが大きく利用を伸ばしているという印象だ。特に中国の国内では、Tencentという大きなバックアップをベースに成長しているのかもしれない。gRPCについては以下の記事を参照されたい。
参考:gRPCに関する初のカンファレンス、gRPC ConfがGoogle本社で開催
会場雑感
展示会場中央には大きなテーブルスペースが準備されており、参加者やベンダーのエンジニアが話し込む場面も散見されており、日本の技術系カンファレンスよりも、活発な対話が行われている印象を得た。
スマートフォンへの充電を行うための充電ステーションも用意されており、スマートフォンの重要性を運営側が理解していることが見て取れた。
また1日目の午後から始まり、3日目の午後早くに会期が終了するというスケジュールの関係で、展示会場の各ブースでは終了間際に記念撮影を行っているベンダーもあり、1年に一度のお祭りが終わったという雰囲気が出ていたのも微笑ましい風景だ。
Kubernetesのロゴは船の操舵輪を模しているが、最初の開発者の人数に合わせて七角形となっているのはご存知だろう。会場の各所にそれを使っているところに、細かな配慮を感じる。
レジストレーションのカウンターも上から見るとちゃんと七角形となっており、こんなところにもこだわりを感じる。
そのカウンターも、3日目の午後に終了ということで早々に解体され撤収されていた。
最大の不安要素はHuaweiとトランプ政権の対立?
全体的に中国のエンジニアのために最大限の配慮と実績の露出を狙って行われたという印象は昨年のKubeCon Chinaと変わらなかった。KubeCon Chinaに関する不安要素は、Huaweiに対する米国政権からの圧力だろう。今のところはあくまでもハードウェアベンダーとしてのHuaweiに対して規制が行われようとしているが、それがHuaweiが開発を支援するソフトウェアやHuaweiのエンジニアの貢献に対する圧力に拡大される可能性がないとは言い切れない。
別の機会にHuaweiの社員をつかまえて、その点について率直に訊いたところ、「1980年代の日米貿易摩擦の時に日本車はアメリカでバッシングされただろう? でも日本はそこから立ち直った。我々も同じように立ち上がるよ」というコメントを得た。
すでにHuaweiグループの北米にあるリサーチ部門のFutureWei Technologiesが大量解雇を行い、バルセロナのKubeConでも参加予定だったHuaweiのエンジニアがキャンセルを余儀なくされたというように、現実に大きな影響が出ている。来年のKubeCon ChinaでHuaweiがどの程度の活動を行うのか、興味深く注視したい。
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