CloudNative Days Spring 2021開催。CNCFのCTOが語るクラウドネイティブの近未来
Kubernetesはマルチクラウドへと進化
次はKubernetesにおけるマルチクラウドへのニーズが顕在化してきているというスライドを用いて、複数のパブリッククラウド、オンプレミスをカバーするソリューションが登場し始めていることを解説した。特にCrossplaneはKubernetesのAPIを複数のクラウドに拡張するもので、Aniszczyk氏も期待していることが見て取れる。
GitLabのブログで公開されているCrossplaneを使ったGitLabのマルチクラウドへの導入が例として挙げられているが、特殊なツールを必要とせず、KubernetesのCLIであるkubectlを使って実行できるというのがポイントだろう。詳細は以下のGitLabのブログを参照されたい。
参考:GitLab deploys into multiple clouds from kubectl using Crossplane
ARMプロセッサー
次の話題はARMだ。これまでARMプロセッサーは、低消費電力を売りに組み込み系やモバイル用途向けと見られていた。しかしAppleがARMベースのApple SiliconをMacに搭載したことや、AWSがARMベースのインスタンスを採用したことなどからわかるように、ARMは高性能が求められる分野への進出も進んでいる。ここではサーバー向けのARMとして、元Intelのエンジニアが開発するAmpere Altraが紹介された。
そして再度、WebAssemblyについてもここで短く解説を行った。WebAssemblyは、OSやアーキテクチャーに依存せず、さまざまな言語で書かれたコードを実行できる仕組みである。このWebAssemblyとシステムとのインターフェイスを行うのが、WASI(WebAssembly System Interface)だ。WASIは「まだ非常に若いプロジェクトである」として、欠点もあるものの今後の成長に期待していると語った。
1.10 ブラウザーベースのIDE
そしてここから、このセッションの目玉であるブラウザーベースのIDE(Integrated Development Environment)の話題になった。ここではクラウドネイティブなIDEとして、Eclipse FoundationがホストするChe、GitHubのCodespaces、そしてGitpodを例として挙げている。他にもCheをベースにしたOpenShift向けのCodeready Workspacesなどもあるが、ここでは割愛された形である。
デベロッパーが必要とする多くのツールが「ようやくWebブラウザーから利用できるようになった」と語るAniszczyk氏は、ブラウザーベースのIDEがこれからの開発の主流になるという考えのようだ。
具体的な例として、一人のデベロッパーが実際にコードを書き始める前にツールのインストール、ライブラリーのダウンロードなど多くの作業が必要となり、コーディング以前の作業が多過ぎることを解説。
そしてその解説策として、CI/CDの自動化の発想で「Dev Environment as Code」つまり開発環境をコードとして定義し、そのコードに従って開発環境を準備するというやり方でWebブラウザーをベースにしたIDEが実装できることを解説した。
そしてここからGitpodのデモの時間となった。ここではPrometheusのGitHubリポジトリーにある「Gitpod」のアイコンをクリックしてGitpodを起動し、Prometheusのコードをすぐに編集できることを見せた。
PrometheusのGitHubリポジトリー:https://github.com/prometheus/prometheus
ここでは触りだけを紹介したが、スナップショットとして途中までの変更作業を保存できるという機能はGitpodのドキュメントに詳細に解説されているので、参照されたい。
参考:Collaboration & Sharing of Workspaces
Shareはソースコード版のGoogle Docsと考えれば理解が早いだろう。スナップショットはコピーが作成され、すぐに開発作業を続けられるという。
最後に今回のセッションのまとめとして、「クラウドネイティブなブラウザーベースのIDEが主流になりそうであること」「Kubernetesがエッジにも搭載されるようになったこと」「マルチクラウドがCrossplaneの登場で本格的に導入が進むだろう」という予想を行い、エンドユーザー主導のオープンソースプロジェクトがさらに加速することを解説して、セッションを終えた。
20分強という短い時間の中に、多くのトピックを盛り込んだセッションとなったが、2021年とその先のクラウドネイティブなコンピューティングシステムを予測するためには、充分な要素を得ることができる内容となった。
エンドユーザーがオープンソースプロジェクトを主導するという部分は多分にアメリカでの傾向に思えるが、日本でもそれが起こるために必要なものは何だろう? と振り返ることは重要な視点だろう。
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