エンジニアの視点から、クラウドネイティブ技術とどのように向き合い、学んでいくべきか
青山真也さんの場合
(株式会社サイバーエージェント、Infrastructure Engineer)
青山さんがCKAを取得したのは、2017年10月11日。認定資格が始まって早期に取得しています。普段は、自社プライベートクラウド上の Kubernetes as a Serviceの開発、Kubernetes関連プロダクトのアーキテクトを担当されています。
なぜ、Kubernetesを勉強しようと思いましたか。
今後はコンテナベースの開発の方がアプリケーションの安定稼働やリリース頻度の向上という面で弊社の開発には適している中で、選択するコンテナオーケストレータの中では最もシステムデザインや機能優位性が優れていたためです。
CKAについて、どこで知りましたか。
Kubernetes CommunityのSlackかMLあたりから流れてきて知ったと思います。
なぜ、CKAを取得しようと思いましたか。
Kubernetesに関する情報は多岐にわたるものの、どこまで学べば一定レベルなのか線引きが難しかったため、指標として取得しようと思いました。また、当初はリリースして間もないころだったので、タイムアタック的な遊び心もありました。
CKA取得の勉強方法や役に立ったことを教えてください。
オンラインのものでは、充実している公式のドキュメントやKatacoda、オフラインのものでは、CNCF認定トレーニングなどがおすすめです。いずれにせよ、実際に手を動かす勉強方法が一番です(「Kubernetes完全ガイド(第2版)」やサンプルマニフェスト集もおすすめです)。
試験本番の感想をお教えください。
思ったよりも実技的で、一定レベルの実務にも有効だと感じました。また、比較的時間は足りないのである程度ちゃんと理解している必要があります。
現在、CKAは役に立っていますか。
CKAでは実務で利用する内容も含まれるので、そこでの知見は今でも役立っています。一方でKubernetesは進化するものなので、ここで得た知識を元に多少は知識をアップデートしていくこともおすすめです。CKAも3年で失効するので、少なくとも更新し続ける気持ちがあると良さそうです。
真壁 徹さんの場合
(日本マイクロソフト株式会社)
真壁さんは、クラウドソリューションアーキテクトとして、Azureユーザーの技術支援を担当されています。
なぜ、Kubernetesを勉強しようと思いましたか。
まず、Kubernetesエコシステムが急成長した理由を知りたいと考えました。Kubernetesは何を解決できて、どのような技術的特徴があって、どのような制約があるのかです。
CKAについて、どこで知りましたか。
CNCFのブログだったと記憶しています。
なぜ、CKAを取得しようと思いましたか。
シンプルに腕試しです。会社がLinux Foundationの資格取得を支援(受験費用の負担)していることも後押しになりました。
CKA取得の勉強方法や役に立ったことを教えてください。
手を動かしながら概念や仕組みを学んでいくのがおすすめです。まずはWebや書籍でざっとKubernetesの仕組みを把握し、その後、一度はツールに頼らずにKubernetesクラスターを作ってみると良いでしょう(Kubernetes the hard wayの手順は参考になると思います。初心者にもわかりやすいと評判の「しくみがわかるKubernetes」もありますよ!)。
試験本番の感想をお教えください。
Webブラウザ上でコンソールなどを操作するわけですが、癖が強いです(笑)。慣れてコツをつかむまでのちょっと時間かかりました。
現在、CKAは役に立っていますか。
試験勉強を通じて学んだことは、間違いなくKubernetesの理解に役立っています。また、仲間やお客様に「少なくとも素人ではないな」と思っていただけているようです。
吉瀬淳一さんの場合
(Hewlett Packard Enterprise)さんの場合
吉瀬さんは、 エンタープライズ顧客にクラウドネイティブ基盤/DevOpsの導入支援を担当されています。
なぜ、Kubernetesを勉強しようと思いましたか。
きっかけは自社製品に採用されていたことです。触れば触るほどその合理的なコンセプトに魅了されていきました。
CKAについて、どこで知りましたか。
KubernetesのSlackだったと思います。
なぜ、CKAを取得しようと思いましたか。
所属組織のイニシアティブとして積極的にCertificationを取っていこうという企画があり、ベンダー系の資格を取る人も多かったのですが、私は特定のベンダー/製品に依存しない立ち位置でいたかったのと、すでにKubernetesはだいぶ使い込んでいたので、CKAを選択しました。
CKA取得の勉強方法や役に立ったことを教えてください。
とにかく手を動すことですね。私はkubectl千本ノックで鍛えました。書籍も良いのですが、公式ドキュメントに書いてあることを実機で試すのがおすすめです。試験中も公式ドキュメントは参照できるので、「このリソースの書き方は確かあの辺りに載っていたな」ということが大きなアドバンテージになります。
試験本番の感想をお教えください。
問題自体はそれほど難しくはありませんが、時間との戦いになるので、3時間(途中トイレ休憩ぐらいの中断は可能ですが)集中力を切らさないことが最大のチャレンジでした。
現在、CKAは役に立っていますか。
自分がCKA保持者であることをアピールする機会はほとんどないのですが、他のCKA保持者に対して、その人が少なくともクリアしている知識とハンズオンスキルの水準を理解できるというのは、自分が体験したからこそだと思います。
3名のエキスパートの方々のケースを紹介しましたが、いかがでしたか。CKAを取得することについては、書籍やWebサイトを利用した自習だけでなく、オンラインのセルフトレーニング、インストラクターがついた公式の認定トレーニングも実施されています。現在、日本国内では、Linux Foundation Authorized Training Partnerとして、4社が公式の認定トレーニングを実施しています。
●Linux Foundation Authorized Training Partner:https://training.linuxfoundation.org/training/regional-training/?_sft_country=japan&_sft_category=sys-admin
各社のWebサイトにアクセスして情報を比較・検討し、自分の都合の良い日程などで受講するのも良いと思います。
おわりに
今回まで、全8回に渡り連載してきた本連載も最終回となりました。クラウドネイティブという言葉も、連載が開始した4月から比べても、多くのネットで目にするようになってきました。年齢によってエンジニアのキャリアが終わることはなく、学ぶことを終えたときがキャリアの終わりにつながると思います。ぜひ、みなさんには、これからも学び続けていただきたいと思います。
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- LFがエントリーレベルの認定試験「認定Kubernetesクラウドネイティブアソシエイト(KCNA-JP)」日本語版を提供開始
- CNCFのCTO、Chris氏の「Cloud Native Predictions for 2021 and Beyond」に見る、クラウドネイティブに関する予測【後編】
- Linux FoundationがOSS活用におけるビジネス上の利点・欠点を示したホワイトペーパーを発表 ほか
- CNCFが2021年のプロジェクトやユーザーに関する最新レポート「CNCF 2021 ANNUAL REPORT」を公開、よりクラウドネイティブの採用が増加
- LFが「Kubernetesプロジェクト ジャーニー レポート」とKubernetesの新トレーニング「Kubernetes アプリケーション開発」を発表
- 最も使用されているオープンソースアプリケーションライブラリの調査結果を発表、IntelがRISC-Vに1000億円超の投資、ほか
- LPI-JAPANがCKAとCKADの国内実施と、Linux FoundationのAuthorized Certification Partnerとして国内認定されたことを発表
- CNDO2021、CNCFの提供するクラウドネイティブランドスケープを解説するセッションを紹介
- 「Cloud Native Trail Map」の10ステップを紐解く(ステップ1~3)
- CNCFが2022年の活動と成果を振り返る「CNCF Annual Report 2022」を公開