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連載 [第3回] :
  月刊Linux Foundationウォッチ

Linux FoundationがOSS活用におけるビジネス上の利点・欠点を示したホワイトペーパーを発表 ほか

2020年12月25日(金)
吉田 行男

こんにちは、吉田です。今回は、Linux Foundationが最近発表したレポートと、12月に開催されたOpen Source Summit Japanのトピックスをいくつか紹介したいと思います。

オープンソースが企業にとって重要である理由

まず、9月に発表された「オープンソースが企業にとって重要である理由」は、The Linux Foundation傘下のプロフェッショナル オープンソース プログラム ネットワーキング グループであるTODOグループのヨーロッパ支部が作成したホワイトペーパーです。TODOグループには、Autodesk、Comcast、Dropbox、Facebook、Google、Intel、Microsoft、Netflix、Oath(Yahoo + AOL)、Red Hat、Salesforce、Samsung、およびVMwareなどが参加しています。

【参照リリース】TODO Group : オープンソースが企業にとって重要である理由
https://www.linuxfoundation.jp/blog/2020/09/why-open-source-matters-to-your-enterprise/

オープンソース ソフトウェアは、ビジネス上のアドバンテージを数多く提供しますが、多くの経営層のハイレベルな意思決定者を含め、この事実を知らない人にとって、これらの利点が不明瞭なままになっていることが往々にしてあります。このホワイトペーパーは、オープンソース ソフトウェアを使用することのビジネス上の利点と欠点を、バランスよく、分かりやすく概要を伝える目的で作成されました。

オープンソース ソフトウェアには、いくつかの明確なビジネス利点があります。コストの削減、迅速な市場投入、共同で開拓する市場、機能の差別化、「たくさんの目」を持つコミュニティの精査とコード改善を通じたセキュリティの向上、効率性の向上、技術革新の飛躍などです。

このレポートには、欧州の自動車業界におけるオープンソース ソフトウェアの事例として、Automotive GradeLinux(AGL)とEclipse Kuksaが紹介されています。

AGLは、自動車メーカー、サプライヤー、テクノロジー企業が協力して、コネクテッドカー用の完全にオープンなソフトウェア スタックの開発と採用を促進するプロジェクトです。AGL車載プラットフォームは誰でも自由に利用でき、商用販売のためにダウンロード、修正、再配布、ソリューションの構築ができるため、製品や新機能の開発のスピードアップに大きく寄与するものになっています。Eclipse Kuksaは、自動車、IoT、クラウド、セキュリティの領域を横断してオープンソース ソフトウェアのエコシステムを構築するために設計された協業オープンソース ソフトウェア プロジェクトです。

「現在、自動車ソフトウェアスタックの50~70%は、オープンソースから生まれている」。Flexera Software社がAutomotive Worldに寄稿しているように、自動車業界では、オープンソースの活用が進んでいるようです。

例えば、スウェーデンのVolvo系列のPolestarでは、Androidエンターテイメントシステムを搭載したEVであるPolestar2を発表しました。多くの分野で顧客の要望に応えるため、無線によるソフトウェア更新(OTA:over-the-air)や大規模で安定したアプリケーションエコシステムを構築しているAndroidを採用し、競争力の製品を開発しています。

このように、オープンソースを活用するメリットは数多くありますが、例えば知的財産に関するものなど、いくつかのリスクも存在します。しかしながら、企業が正しく理解し対応すればリスクを緩和できます。

このホワイトペーパーでは、いくつかの有益なサイトの情報を挙げており、必要に応じて情報収集の必要性を記しているので、一度これらのサイトを訪れてみると良いでしょう。

Open Source Summit Japanのトピックス

次に、12月2~4日に開催されたOpen Source Summit Japanの話題をいくつか紹介したいと思います。さまざまなイベントと同様に、本イベントも今年はオンラインでの開催となりましたが、魅力あふれるセッションが多くありました。中でも興味深いのは、以下の3つではないでしょうか。

リネオが日本語のYocto Project公式実践講座を開設

リネオソリューションズ株式会社(以下、リネオ)は、2021年1月26日より組み込み機器向けにカスタムのLinuxディストリビューションを構築するための開発環境であるLinux Foundation傘下のプロジェクト「Yocto Project」の日本における普及促進を目的に、Linux Foundationの認定トレーニングパートナーとして、世界で初めてとなる日本語での「Yocto Project」の公式実践講座を提供開始することを発表しました。

【参照リリース】The Linux Foundation認定トレーニングパートナーとしてリネオが日本語のYocto Project公式実践講座を開設
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2020/12/lineo-launches-yocto-project-training-in-japanese-language/

ほとんどのドキュメントが英語で提供される中、リネオ社員の伊東孝康氏がLinuxFoundationと連携し、日本におけるYocto Projectの普及活動をリードし、独自の講座を実施してきましたが、2020年に10末に伊東氏がYocto Project Ambassadorに就任したこともあり、これら講座を見直し、公式講座に認定しました。

今後、AI、自動運転、IoTなどの分野でLinuxが活用することが期待されるため、Yocto Projectへの関心が高まっていることもあり、注目される講座になるのでは思います。

オープンソースのコミュニティにNICT「みんなの自動翻訳」を提供

国立研究開発法人 情報通信研究機構(以下、NICT)は、Linux Foundation Japan(以下、LF)に「みんなの自動翻訳」のAI自動翻訳技術を提供すると発表しました。LFは、AI自動翻訳技術をLFのサーバに実装し、2021年1~3月期のサービス開始を目指し、LFのオープンソースプロジェクトで同自動翻訳エンジンの使用を開始します。この翻訳作業で生成されるオープンソース技術関連の対訳・語彙データをNICTの翻訳バンクにフィードバックすることで、OSS向けの高精度AI自動翻訳システムを育てるエコシステムを創出できます。

【参照リリース】オープンソースのコミュニティにNICT「みんなの自動翻訳」を提供
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2020/12/lf-japan-and-nict-to-provide-textra-for-open-source-community/

OSSに関する情報が英語で発信されており、それらの情報をいち早く入手したい技術者にとって、言語が大きな障害となっています。それらの最新情報をいち早く日本語化することで、日本の競争力を高めることにも役立たせることができると思います。

Linux FoundationがLPI-Japanと提携

Linux Foundation Japan(以下、LF)は、Linuxをはじめとするオープンソースソフトウェア、HTML5のプロフェッショナル向け認定試験を実施するLPI-Japanと提携し、LinuxとKubernetesの認定試験を日本の市場で提供することを発表しました。

【参照リリース】Linux FoundationがLPI-Japanと提携 ー LPI-JapanのLinuC レベル1 / LinuC レベル2と、Linux FoundationのCKA / CKADを組み合わせた新しい総合的な価値を提供
https://www.linuxfoundation.jp/press-release/2020/12/linux-foundation-partners-with-lpi-japan-to-make-linux-certifications-more-accessible/

今回の発表により、LPI-Japanが提供する権利を有する認定試験は、下記になります。

  • Certified Kubernetes Administration (CKA)
  • Certified Kubernetes Application Developer (CKAD)
  • Linux Foundation Certified Engineer (LFCE)
  • Linux Foundation Certified System Administrator (LFCS)

LPI-Japanは、従来から提供しているLinuC レベル1とLinuC レベル2の合格者、およびCKAまたはCKADの合格者に対し、より高度な認定証を追加し、雇用主が求職者のスキルを独立して確認する際に使用できる総合的な認定の提供を予定しています。また、LPI-JapanのLinuC レベル1、LinuC レベル2、OPCELに加えてCKAに合格した人は、新しいCloud Native Platform Engineer認定を取得できるようになるほか、LinuC レベル1、LinuC レベル2と合わせて、LPI-JapanのHTML5認定試験およびCKADに合格した人は、新しいCloud Native Application Engineer認定を取得できるようになります。

今回の提携により、日本で認定試験がより受けやすくなり、認定取得者の需要に応えられるようになります。最新の技術を活用するためには、その技術に精通した技術者を企業は確保する必要があります。

* * *

Open Source Summitでは、このほかにもLFのさまざまな取り組みについての紹介がありました。特にサプライチェーンでのOSSのコンプライアンスに関する「OpenChain」やエネルギーと電力分野のオープンソース技術イノベーションを推進・維持する「LF Energy」に関する話題は、次回以降で紹介したいと思います。

また、Open Source Summitと同時開催されたAutomotive Linux Summitでも興味深い発表がありましたので、そちらも併せて紹介していきます。次回もお楽しみに!

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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