レッドハットが「OpenShift Commons Gathering Japan 2021」を開催、キーパーソンが語るハイブリッドクラウドを実現するための3つのポイントとは

2022年1月13日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

レッドハット株式会社は、クラウドネイティブなシステムを実装するためのコンテナ基盤、OpenShiftに関するコミュニティイベントを2021年12月2日にオンラインで開催した。

本稿では、「OpenShift Commons Gathering Japan 2021」と題された本イベントから、米Red Hatのハイブリッドプラットフォーム担当VPであるJoe Fernandes氏による「Road to Hybrid Cloud 」と、レッドハット株式会社の岡下浩明氏と北山晋吾氏による対談セッションを紹介する。岡下氏と北山氏の対談の中では、日本アイ・ビー・エム株式会社、三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社のプレゼンテーションを紹介している。

3つの柱から理解する
ハイブリッドクラウドへの道

Fernandes氏のセッションはハイブリッドクラウドを実現するためのポイントを3つの柱に絞って解説している。

セッションを行うJoe Fernandes氏

ハイブリッドクラウドの全体像としては、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)を最下層のインフラストラクチャーとし、その上にKubernetesのディストリビューションであるRed Hat OpenShiftを位置付けている。稼働させるアプリケーションについてはレガシーアプリケーションからマイクロサービス、機械学習やデータ分析のアプリケーション、そしてISVによって提供されるサードパーティのアプリケーションもRed Hat OpenShiftによって運用できることを示した。

ハイブリッドクラウドの全体像

ここからハイブリッドクラウドに至る道としてアプリケーションプロセスインフラストラクチャーについて解説を行った。

ハイブリッドクラウドを実現する3つの柱を解説

インフラストラクチャーをハイブリッドクラウドに移行する解説では、Red Hatの顧客の6割以上が既にハイブリッドクラウドを使っていること、まだ使っていない顧客の半分以上が2年以内にハイブリッドクラウドの利用を開始する予定であることをRed Hatの調査結果として紹介した。これは、既に多くのエンタープライズ企業がハイブリッドクラウドに移行、もしくは移行を予定していることを証明している。

既に多くのエンタープライズ企業がハイブリッドクラウドへ

次にOpenShiftを構成する様々なコンポーネントを紹介した。左側に縦に並んでいるのはOpenShiftの製品カテゴリだが、コアのRHELとKubernetesを「Red Hat OpenShift Kubernetes Engine」、ブラウザーベースのIDEであるCodeReady Workspacesやサービスメッシュなどを加えたものを「Red Hat OpenShift Container Platform」と位置づけている。さらにマルチクラスター管理を行うRed Hat Advanced Cluster Management、クラスターセキュリティを担保するRed Hat Advanced Cluster Security、コンテナーレジストリーであるRed Hat Quayの3製品をまとめたものを「Red Hat OpenShift Platform Plus」と命名している。

OpenShiftはコア、ベースそしてフルセットの3種類

また、マネージドサービスの種類もオンプレミスからパブリッククラウド、AWS、Azure、GCPに加えてIBM Cloudがポートフォリオとして揃っていることを紹介した。

オンプレミスからパブリッククラウドまでをカバーするOpenShift

特にエッジにおける実装については、パブリッククラウドだけでなくエンタープライズ企業が持つデータセンターから拠点のサーバーにまでシングルノードで配置できることを解説。

データセンターから拠点のエッジサーバーまでカバーできるOpenShift

この機能によってIoTデバイスからシングルノードのエッジサーバー、リモートワーカーノード、3台の最小ノード構成までOpenShiftでは実装可能になっていることを説明した。

OpenShiftによるエッジでの実装を解説

また、エッジ用のクラスタを管理するためのコンポーネントとしてRed Hat Advanced Cluster Managementを紹介。

Red Hat Advanced Cluster Managementを紹介

ここでは運用担当者が存在しないような拠点サーバーにおいてもゼロタッチプロビジョニングがTech Previewになっていることや、管理可能なクラスター数が拡大していることを紹介した。

次に解説したのは、アプリケーションによるハイブリッドクラウド化へのポイントだ。

レガシーアプリからサーバーレスに進化するアプリケーションをサポート

ここでRed Hatが考えるアプリケーションモダナイズについて解説。既存のアプリケーションをどのようにクラウドネイティブに移行するのかについて紹介した。特にコンテナでは、既存のアプリケーションの状態を把握し、リホスト、リプラットフォーム、リファクターなどの方法論の中から、投資対効果や労力に見合ったものを選択することが重要だと述べる。あまりアプリケーションの移行については深く語らなかったRed Hatとして一歩踏み込んでいることは興味深い。

アプリケーションの移行についても解説

そして、データサイエンティスト向けの機能であるOpenShift Data Scienceについても触れている。OpenShift Data Scienceでは、対話型で機械学習のモデルを開発できるJupyter Notebookとの連携やPythonなどのソースコードからコンテナーイメージを生成するS2i(Source-to-Image)、GPUなどのアクセラレーションを利用可能である。

データサイエンティスト向けの機能も用意されている

また、IBMの運用するマーケットプレイスでは、多くのISVアプリケーションが提供されている。ここでもIBMのロゴが各領域で登場しており、IBMのアプリケーションやミドルウェアがコンテナで提供されていることが分かる。さらに、多くのIBMの顧客が使うWebSphereについてもOpenShiftの上で実装されている例をRed Hatのブログで確認することが可能だ。

OpenShiftのエコシステムをマーケットプレイスで確認

【参考】Rehosting Traditional WebSphere Application on OpenShift Container Platform (OCP) on Google Cloud (GCP)
https://cloud.redhat.com/blog/rehosting-traditional-websphere-application-on-openshift-container-platform-ocp-on-google-cloud-gcp

ここからは、プロセスをハイブリッドクラウドに移行するというポイントを解説するフェーズに移った。

開発から運用までのプロセスをハイブリッドクラウドに

最初に紹介したのはOpenShift Pipelinesだ。オープンソースソフトウェアのTektonをベースにしたCIツールであり、Kubernetesに特化していることや、RBACを活用したセキュアなビルドやデプロイができる。

OpenShift Pipelineを紹介

次のOpenShift GitOpsはArgoCDをベースにしたCDを提供する。OpenShift GitOpsではマルチクラスター対応、OpenShiftコンソールへの統合、さらにArgoCD自体のアップデートを自動化できるといった機能を備えている。

OpenShift GitOpsを紹介

次のスライドは開発からデプロイメントまでの一連の機能を概観している。サーバーレスのKnativeを始め、Buildah、Helm、Istioなど多くのツールが連携してOpenShiftのツールチェインが実装されていることがわかる。

DevOpsを実現するツールたち

また、DevOpsによる自動化そのものによってビジネスや組織の競争力を上げることに繋がるとしてプロセス変化の必要性を説明した。

自動化によって組織の競争力を向上できる

最後にIT部門にとって理解しやすい観点、つまりハイブリッドクラウドインフラストラクチャー、クラウドに適した開発環境、自動化と管理機能の強化のそれぞれが必要だと解説した。

IT部門が理解しやすいポイントを解説

これからの方向性としては、マルチクラスター、ハイブリッドクラウドを総合的に管理できるハイブリッドクラウドAPIがさらに効率的になるという将来の展開を説明してセッションを終えた。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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