OpenShift Commons Gathering 2017で垣間見たRed Hatの本気

2018年1月23日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
Red Hatが推進するコンテナープラットフォームであるOpenShiftの1dayカンファレンスが開催された。

昨年末、筆者は「OpenShift Commons Gathering 2017」に参加した。これはRed Hatが推進するコンテナオーケストレーションプラットフォーム、OpenShiftのコミュニティが開催したイベントだ。KubernetesのカンファレンスであるKubeConと、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)が主催するCloudNativeConが併催されたオースチンでのイベントの前日、つまり2017年12月5日に開催されたコミュニティのためのミートアップイベントである。

この日程に設定した意図は明らかで、翌6日から始まるKubeConとCloudNativeConに来る参加者が「ついでに」参加してくれることを狙っている。当然、KubernetesのコントリビューターやKubernetesのエコシステムを支える様々なベンダーのエンジニアが参加し、イベントは盛況であった。

OpenShift Commons Gatheringは、テキサス州オースチンにあるヒルトンの大きな会議室に全員が集まる形のシングルトラックのカンファレンスで、OpenShiftの最大のコントリビューターであるRed Hat、オープンソースソフトウェアの管理を行うBlack Duck、オープンソースのSDNであるCalicoを開発するTigera、コンテナ用のストレージを提供するPortworxなどがスポンサーとして参加していた。セッションのスピーカーには、GoogleやAWS、Rackspace、そして日本からもレッドハット株式会社とその顧客であるNTTなどが登壇した。これまではあくまでもコミュニティの集まりとして開催されていたOpenShift Commons Gatheringだったが、今回初めてスポンサーを集めて開催されたという。この部分だけでもコンテナのためのPaaSとしてv3からリスタートしたOpenShiftが、様々なコンテナ関連のソリューションを提供するベンダーから注目されていることがわかるだろう。また運営チームも全てのセッションに動画のアーカイブを用意するなど、コストをかけていることが見てとれる

最初に登壇したのは、今回のイベントの仕切り役といっても良いRed HatのDirector, Community DevelopmentであるDiane Mueller氏だ。Mueller氏は「過去2ヶ月の間に20以上の組織がOpenShift Commonsに参加した」と説明し、OpenShiftのコミュニティ自体が成長していることを強調した。すでに315の組織が50ヵ国以上の国と地域に拡がっているという。

拡大を続けるOpenShiftコミュニティ

拡大を続けるOpenShiftコミュニティ

今回のカンファレンスにも姿を見せていたGlobal Technical DirectorのChris Morganが、恵比寿のレッドハット本社で当時はベータ版であったOpenShift v3のデモを行ったのが約3年前、それから改良と拡張を辛抱強く続けてここまで来たと思うと感慨がある。

参考:OpenShift 3.0で既存コードを捨てコンテナーに賭けるRed Hat

Mueller氏の次に登壇したのは、Red HatのCTO、Chris Wright氏だ。Wright氏はイノベーションがオープンソースソフトウェアを中心に起こっていることを強調し、仮想化から始まったイノベーションがAWSなどのパブリッククラウドサービス、そして去年辺りから始まったコンテナとKubernetesによるオーケストレーションに焦点が移ってきたことを解説した。

Kubernetesがコンテナエコシステムの中心に

Kubernetesがコンテナエコシステムの中心に

特にオープンソースソフトウェアにおいては、コミュニティによる開発とデファクトスタンダードによるエコシステム化、その先に業界内での標準化に向かうというサイクルの重要性を強調した。ここでは特にAPIの互換性の重要性について解説し、Linuxの例を挙げて「もしもある朝、Linusがカーネルの修正でユーザースペースを侵害するようなコードを発見したら、普通には言えないような言葉でそれを批判し、すぐに直してしまうだろう。それぐらいにカーネルとユーザースペースが分離されていることは重要だし、それがコンテナランタイムとコンテナの関係にも引き継がれている」と語り、LinuxというOSのカーネルの上にコンテナそしてそのオーケストレーションが載っていることを解説した。そしてOpen Container Initiativeが制定した標準であるOCI 1.0について言及し、「コミュニティと標準化が常に良いバランスを保つことが重要である」と解説した。

また「Container is Linux」という言葉についても解説が加えられた。これはRed Hat関連の人がコンテナはLinux由来のテクノロジーであることを紹介する際に、エンタープライズ側のエンジニアから「Windowsのコンテナはどうなんだ? あれはLinuxじゃないぞ」と言われることにも言及し、「コンテナはベアメタルの上で動くOSと同等のサービスをアプリケーションに提供するものだ。つまり、アプリケーションから見ればOSと同等という意味をこめて『Container is Linux』と呼んでいるだけだ」と説明した。つまりアプリケーションから見れば、OSもコンテナも同じように稼働するだけだという意味合いを強調したと言えるだろう。これは、Windowsを愛用する保守的なエンタープライズ顧客にも気を遣った一面であると言える。

そして「これはバズワードなので使いたくないんだけど」という言い方で「デジタルトランスフォーメーション」の必要性を解説した。特にオンプレミスのアプリケーションから仮想化、プライベートクラウドそしてAWSなどのパブリッククラウドを環境として使い分けても、アプリケーションは変更なしで稼働することが重要であり、その場合、単一のプラットフォームにプロセスが同居する形から複数のプラットフォームに分散される状況を可能にすることが、インフラから上のアプリケーション実行環境として必要である。そしてそれをコンテナとKubernetesで実現するのが、OpenShiftであるというのがChris Wright氏のメッセージであった。

またアプリケーションデベロッパーとオペレーター、つまり開発と運用について、お互いの役割において自律性をより多く成し遂げることがデジタルトランスフォーメーションの要点であり、そのために「ユーザー、デベロッパー、オペレーションの3つの視点で常に最良のものを追求することを止めてはならない」と語った。これはWright氏のセッションのタイトルである「Perpetual Pursuit for Excellence(永続的にエクセレンスを追求すること)」を具体的に解説するものだ。Wright氏のプレゼンテーションは抽象的な表現が多く、若干難解ではあったが、ハイブリッドクラウドに対応すること、OCIなどの標準化、そしてcri-oによるコンテナランタイムの実装についても言及することで、Kubernetesを中心としたコンテナエコシステムそしてそれを実現するOpenShiftをアピールしたものであった。

拡大するOpenShiftのエコシステム

そしてここからIT業界の大きな技術的な革新に、いかにOpenShiftが関わっているのかを連続して紹介するターンとなった。まずはビッグデータと機械学習について、radanalytics.ioというOpenShiftの上でSparkを稼働させるサービスを紹介した。ここでは従来型のアプリケーションだけでなく、データサイエンスに使われるSparkやTensorFlowなどの機械学習のプラットフォームとしてもOpenShiftが稼働している例として挙げ、OpenShiftが確実に拡がっていることを強調した形になった。

https://radanalytics.io/

次に挙げたのはBlockchainだ。ここでもOpenShiftとBlockchainによるBaaS(Blockchain as a Service)が商用サービスとして開始していることが紹介された。クリプトカレンシー(仮想通貨)においても、アプリケーション実行環境としてOpenShiftが使われていることを紹介した。

BlockApps

続いては、モバイル通信業者の5Gサービスとの関係についても言及があった。5Gはこれまでの4Gとは異なり、エッジサイドでのコンピュートリソースが必要になることと、Kubernetesによってエッジ側のコンピュートリソースが提供可能になることが解説された。これまでの通信サービスとは異なり、マイクロサービスとエッジに近いところで稼働するアプリケーションが必要になることで、ハイブリッドクラウドによる分散システムが必要になると解説した。

そしてサーバーレスに関してもApache Software FoundationがホストするOpenWhiskとOpenShiftによる連携を強化していることを紹介した。次にマイクロサービスに関して最近注目されているサービスメッシュを実現するIstioプロジェクトについては、OpenShiftのエコシステムにおいて連携が行われていることを紹介した。最後に、Grafeasというセキュリティのためのソフトウェアメタデータを管理するオープンソースプロジェクトが紹介された。ここではセキュリティを担保するためのサービスにもOpenShiftが使われていることを説明した。

https://grafeas.io/

ここでWright氏は、様々な使い方が拡がっていくことでプラットフォームが進化し続けることを説明する。これはx86 CPUを搭載したPC用に作られたLinuxが、様々な組込系機器からスーパーコンピュータまで幅広く稼働していることを例に挙げて、OpenShiftもそれに従って様々な使われ方をすることで利用が拡がり、ユーザー、デベロッパー双方に良い影響を与えることを強調した。この一連の事例では、最近のオープンソースソフトウェアによるイノベーションの大きな流れの中でも、OpenShiftが重要な役割を果たすことを駆け足で説明した。前半は少し抽象的な話が中心だったが、後半はOpenShiftのエコシステムと最近注目されているキーワードをきっかけに、OpenShiftのプラットフォームとしての良さを強調したキーノートセッションであった。

Chris Wright氏のプレゼンテーションは以下のリンクから視聴可能だ。

Perpetual Pursuit of Excellence Chris Wright

OpenShift 3.xの新機能などの後半のセッションなどについては、次の記事で紹介したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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