「デジタル主権」を取り戻すNextcloud ー日本市場におけるAI強化と活用事例
独Nextcloudは「Nextcloud GmbH」(以下:Nextcloud)が⽇本の⼤規模⾔語モデル「Fugaku-LLM」にAIアシスタントを対応させた「Nextcloudアシスタント」を最新のコラボレーションプラットフォーム「Nextcloud Hub 9」の機能として提供し、⽇本での事業を強化することを発表しました。
「Nextcloud」はオープンソースで公開されており、DropboxやMicrosoft Office 365に代わる安全でプライベートなビジネスツールを⾃社でホスティングソフトウェアです。今回、この発表に合わせてCEOのFrank Karlitschek氏が来日し、記者説明会を実施しました。
デジタル主権の重要性とリスク
説明会では、個人、組織、政府などが、ローカルまたはオンラインプラットフォーム上で自ら生成し作業するデータをどのように、どの程度まで管理するかを決める権利である「デジタル主権」についての解説がありました。Frank氏は「この大量のデータが、現在大手テック企業に管理されていることで、現在だけではなく将来のビジネスも危険にさらす戦略的リスクになる」と言います。
また「データは今日の経済をけん引する石油のような可変資源であり、私たちの経済はそれに依存しているが、そのデータを今、誰が管理しているかが大きな問題で、大手テック企業からこれらデータのコントロールを取り戻す方法を提供することが重要だ」と続けます。さらに、現在各国で進行中のデータ保護に関する法規制への対応が必要となっており、これを解決するためには「プライバシーやセキュリティを重視しながら効率的なデータ管理とコラボレーションを提供するプラットフォームであるNextcloud Hubの活用がその対策になりうる」と述べました。
Nextcloud Hub 9の新機能
続いて、Nextcloud Hubの機能についての説明がありました。一番の注目は、日本向けにカスタマイズされたNextcloudアシスタントで、電⼦メールの要約やドキュメントの共同編集、チャットメッセージの翻訳、プロンプトでのテキスト⽣成などの機能を提供します。これにより、ユーザーは迅速なAI導⼊による⽇本語処理能⼒の向上をベースに、スムーズな利⽤体験と⼤きな効率化が実現可能となります。今回のリリースではFugaku-LLMだけではなく、基本的な大規模言語モデルを数多くサポートしており、Meta社が提供する日本語をサポートした「Llama3」の最新版にも対応しています。
日本市場におけるNextcloudの現状
日本におけるNextcloudのプラチナパートナーで、保守サポートやシステムインテグレーションビジネスを展開する株式会社スタイルズから、日本市場での状況について説明がありました。現在日本では顧客数:80、利用ユーザー:30万人ということでしたが、特に大学・研究機関・公共部門の利用比率が高いのが特徴で、これは海外でも同様とのことでした。
九州大学でのNextcloud導入事例
最後に、株式会社エクサより九州大学での構築事例について紹介がありました。同社の持つストレージソリューションを活用することで「コスト削減」「災害対策」など、さまざまな課題に対応できたということでした。
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現場の事例としては大学や公共部門など、データの扱いに慎重な分野での活用が進んでるNextcloudですが、金融機関や医療機関など、データ管理に敏感な企業や大手テック企業にデータをすべて管理されていることに疑問を感じている企業は、このようなソリューションを検討してみることに価値はあるのではないでしょうか。
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