KubeCon Europe 2026、新興のオブザーバビリティ企業Hygroundの製品責任者にインタビュー。生成AIの使用を前提にした新世代オブザーバビリティとは
KubeCon Europe 2026にて、2025年創業の新興のオブザーバビリティ企業Hygroundの製品責任者にインタビューを実施した。
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目次
- 自己紹介をお願いします。
- そこからHygroundを創業するわけですね。オブザーバビリティというすでにかなり混み合った市場に参入したわけですが、SaaSではない形態を選んだ理由はなんですか?
- SaaSではなくオンプレミスのオブザーバビリティということですが、売上はどうやって立てているんですか?
- 日本の企業では運用チームは社員がやりますが、ソフトウェア開発は外部に発注するという形態がまだ存在します。デベロッパーがオブザーバビリティツールを使うことでソフトウェアのどこを変えたのか? という部分までデータとして残すことでインシデントが発生した時に遡って原因を見つけるということは開発と運用が近い組織であれば可能ですが、分離している場合には難しくなると思いますが、それについては?
- 「ソブリンAI SREエージェント」というのがホームページのトップに出てきますが、生成AIを使って運用を行うという発想でしょうか?
- 生成AIはどこのモデルを使っているんですか?
- ヨーロッパでの強い要件であるデータソブリン性を実現するためにオンプレミスのサーバーに実装されるというのがHygroundの特徴であり差別化のポイントだと思いますが、生成AIを運用に使うというのもポイントでしょうか?
- これからのHygroundにとってのチャレンジは何ですか?人材の雇用ですか?
- SaaSではなくオンプレミスに実装する生成AIを使ったシステム運用は、ヨーロッパだけではなく日本や中国でもニーズがありそうな気がします。特に中国では引き合いが強そうですが、中国でのビジネスは?
- 中国ではSaaSだからと言って敬遠されることはないかもしれません。中国国内だけで運用されているインターネットサービスは数多くありますし。ただ日本に比べても人口も比較にならないぐらい多いし、サービスに対する要求も高いので、データ保護の観点からもオンプレミスのオブザーバビリティは求められているとは思います。
KubeCon Europe 2026から、創業して2年未満という新興のオブザーバビリティベンダー、HygroundのCPO(Chief Product Officer)のBenjamin Hofmann氏のインタビューをお届けする。Hygroundは2025年6月にドイツで創業されたオブザーバビリティのベンダーだ。インタビューを行ったBenjamin Hofmann氏は共同創業者として、他の2名の創業者とともにHygroundを立ち上げている。最初の段階から生成AIを活用することを前提とした実装となっており、新世代のオブザーバビリティを提供しようとしていると言える。
自己紹介をお願いします。
Hofmann:私はHygroundの共同創設者で現在はChief Product Officer(CPO)をやっているBenjamin Hofmannです。IT業界では15年ほど仕事をしていますが、Hygroundの前の会社ではDevOpsをやっていました。その当時、2011年ぐらいですが、DevOpsはそれほど注目されていなかったと思います。そしてオブザーバビリティについても大きな関心を持っていました。その頃使っていたツールはElasticsearchですね。ログを集中的に管理するには適していたと思います。他にはHoneycombのツールも気に入っていました。
そこからHygroundを創業するわけですね。オブザーバビリティというすでにかなり混み合った市場に参入したわけですが、SaaSではない形態を選んだ理由はなんですか?
Hofmann:良い質問ですね。Hygroundは『データがどこにあるのか?』ということを常に意識してきました。これは顧客が求める要件でもありますし、ヨーロッパ自体がデータの主権、Data Sovereigntyを強く意識していることにも対応していますが、何よりも自社のインフラストラクチャーを運用する時にデータがどこにあるのかわからない場所に保存されているということがリスクになるということを知っているからです。
それにSaaSのオブザーバビリティベンダーの顧客からの声を聞けば、SaaSベンダーによって高いコストを支払っているということも理解できるはずです。そう言った背景から、オンプレミスでデータを運用することが重要であることをビジネスの中核において仕事をしています。Hygroundはヨーロッパの会社で、私はドイツ人ですが、こういう部分についてはまじめに取り組んでいるということは知っておいてもらいたいですね。
SaaSではなくオンプレミスのオブザーバビリティということですが、売上はどうやって立てているんですか?
Hofmann:オンプレミスのサーバーの数ですね。プライスモデルにはいろいろな考え方があると思いますが、データの量で課金を行うとユーザーはオブザーバビリティのツールを広く使いたがらなくなります。つまり大量のデータを収集することで高い品質のオブザーバビリティが達成できるわけですが、データの量に課金すると利用を躊躇ってしまうわけです。
またユーザーの数による課金も運用チーム以外にデベロッパーにも使ってもらいたいという我々の意図から外れてしまいます。ユーザーがツールを十分に使ってもらうことでビジネスを支援するというのが我々の願いですから。デベロッパーに使ってもらうというのは、ソフトウェアの変更がインシデントを起こすという傾向が強いという状況でデベロッパーが何を変えたのか? を捕捉することで原因究明が容易になるということを示しています。
日本の企業では運用チームは社員がやりますが、ソフトウェア開発は外部に発注するという形態がまだ存在します。デベロッパーがオブザーバビリティツールを使うことでソフトウェアのどこを変えたのか? という部分までデータとして残すことでインシデントが発生した時に遡って原因を見つけるということは開発と運用が近い組織であれば可能ですが、分離している場合には難しくなると思いますが、それについては?
Hofmann:運用チームと開発チームが分離している問題ですね。それはヨーロッパでも起こっている問題です。プロダクション環境と開発環境が分離していて、オブザーバビリティがプロダクションにしか実装されていないことで起こる問題ですが、その場合でもデータを使って連携させることは可能だと思います。
「ソブリンAI SREエージェント」というのがホームページのトップに出てきますが、生成AIを使って運用を行うという発想でしょうか?
Hofmann:私は生成AIを企業に導入するコンサルテーションなどにも関わっていましたのでDevOps、オブザーバビリティ、そして生成AIについては実際にエンジニアとして関わってきた経験を持っています。これまでのシステム運用は24時間、365日運用し続けるために夜中の3時にインシデントが起こったら担当者が叩き起こされてログを読んだり、メトリクスを確認したりというように大部分を人間の労力でこなしてきたと思います。しかし、そういう時代はもう終わる、これからはシステムが自動で運用を行うようになると思います。
そして、それを実現するのがHygroundです。単に生成AIをどこかのクラウドで使うというのではなく、ソブリンという単語が示すようにデータをちゃんとユーザーが確保してどこで実行されるのか、データはどこにあるのかについて透明性を持って実行するというのがポイントです。
生成AIはどこのモデルを使っているんですか?
Hofmann:Hygroundのソフトウェア開発のためには現在はAnthropic Claudeを使っています。ユーザーのシステムに実装される生成AIのモデルは、AWSでもGoogleでもMicrosoftでもユーザーの要望に従って接続できるようになっています。これはユーザーにとってロックインを防ぐための発想であります。
ヨーロッパでの強い要件であるデータソブリン性を実現するためにオンプレミスのサーバーに実装されるというのがHygroundの特徴であり差別化のポイントだと思いますが、生成AIを運用に使うというのもポイントでしょうか?
Hofmann:Hygroundでは開発のプロセスの中で生成AIを使っています。これはすでに企業としての中核の仕事の仕方だと思います。そのおかげで新しい機能や改善が毎日開発され、テストを経て実装されて行きます。エージェンティックなソフトウェア開発からエージェンティックな運用システムが産み出されてくるのは当然の流れだと思いますね。
これからのHygroundにとってのチャレンジは何ですか?人材の雇用ですか?
Hofmann:雇用も一般企業においては問題だと思いますが、Hygroundは小さな開発チームで効率良く開発を行えているので今のところは問題にはなっていませんね。それよりも顧客が持つ生成AIに対する認識の違いが問題だと思います。つまりAIの最先端を知っている企業やエンジニアにとって生成AIを使うことはすでに障害とはなっていません。ところがその対極には「AIは信用できない、使い物にならない」という懐疑派の人たちがいます。そしてその中間にほぼ大多数の企業やエンジニアがいるわけですが、今は推進派と懐疑派が混ざりあった状況だと思います。その中でHygroundが行っているような、AIを中核においてシステムを開発し、それをシステム運用に利用してもらうという発想を伝えることが難しいと感じています。
SaaSではなくオンプレミスに実装する生成AIを使ったシステム運用は、ヨーロッパだけではなく日本や中国でもニーズがありそうな気がします。特に中国では引き合いが強そうですが、中国でのビジネスは?
Hofmann:これは私からあなたへ逆に質問したいんですが、中国ではSaaSの人気はどうなんですか?
中国ではSaaSだからと言って敬遠されることはないかもしれません。中国国内だけで運用されているインターネットサービスは数多くありますし。ただ日本に比べても人口も比較にならないぐらい多いし、サービスに対する要求も高いので、データ保護の観点からもオンプレミスのオブザーバビリティは求められているとは思います。
Hofmann:興味深いですね。実は私が大人になる前に中国で数年暮らしていた経験があるんですよ。なので中国は知っていますが、ビジネスの世界、特にITビジネスの常識みたいなものが欠けていてその辺の判断ができないので、そのヒントはありがたいです。
Hygroundは非常に混み合ったオブザーバビリティの領域で、生成AIを使った開発とオンプレミスで実装されるデータソブリン性を強みにして生成AIエージェントがSREとして動くという部分を強く訴求していた。Hofmann氏が所属していた前の企業からのスピンオフという状態で2025年6月に正式に創業したHygroundは、生成AIによるSREを前面に押し出して存在感を示そうとしている。まだ社員数が11名というのがKubeCon Europe 2026を取材した3月の段階の数字だが、ここからどこまで成長していくのか、またはどこかの大手に買収されるExitを目指すのか、気になるところではある。引き続き、注目していきたい。
●Hyground公式ページ:https://hyground.ai/
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