KubeCon+CloudNativeCon Europe 2026レポート 9

KubeCon Europe 2026、セキュアなランタイムを提供するEderaのコアメンバーにインタビュー

XenハイパーバイザーをRustで書き直したEderaのランタイムとは?

松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

6:00

目次

  1. Ederaを初めて知ったのはTUF、in-totoなどのオープンソースの開発を行っているNew York UniversityのJustin Capposとアトランタで会った時に「セキュアなコンテナランタイムに興味ある?」とパーティの時に訊かれたときでした。その時はあまり詳しく説明してくれなかったので、まずはEderaについて教えてください。
  2. 昔からの仮想化を知っているベテランのエンジニアにEderaを紹介すると「え? Xenですか? 懐かしいなぁ」という感想がありました。KVMが流行ったことで言ってみればタイプ1のハイパーバイザーは時代遅れとみなされていたのかもしれませんね。
  3. 今回リリースしたKVMのサポートについてその背景を教えてください。
  4. Ederaがハイパーバイザーとして発表されたのは2025年のKubeCon North America、つまり約1年前のアトランタでした。あれから1年経ちましたが、公開できるユースケースはありますか?
  5. その意味ではAppleはEderaを直接使っているわけではないが、その発想が正しいということを証明していると? つまりハイパーバイザーレベルのアイソレーションをコンテナに適用するという方法ですが。
  6. EderaはGPUのサポートも発表しました。これはKubernetesのDRA(Dynamic Resource Allocation)とは違う仕組みということですか?
  7. 最後に、Ederaにとってこれからの1年はどんな感じになると思いますか?

KubeCon Europe 2026に参加しているベンチャーの中から、XenをベースにしてRustで大部分を書き直したセキュアなハイパーバイザー、Ederaを提供するEderaのCEOとCTO、New York Universityで博士号を取ったセキュリティリサーチャーにインタビューを行った。インタビューに応えてくれたのはCEOのEmily Long氏、CTOのAlex Zenla氏、そしてセキュリティリサーチャーのMarina Moore氏の3名だ。Long氏とZenla氏は、共同創業者としてEderaを立ち上げた中心的存在である。

左からMarina Moore氏、Alex Zenla氏、Emily Long氏

左からMarina Moore氏、Alex Zenla氏、Emily Long氏

Ederaについては2025年のKubeCon North America 2025の以下の記事でも簡単にブースを紹介しているが、今回はCEOとCTOにインタビューを行い、KubeCon EUに合わせて発表されたKVMサポートなどについて話を聞いた。

●参考:写真で見るKubeCon North America 2025

Ederaを初めて知ったのはTUF、in-totoなどのオープンソースの開発を行っているNew York UniversityのJustin Capposとアトランタで会った時に「セキュアなコンテナランタイムに興味ある?」とパーティの時に訊かれたときでした。その時はあまり詳しく説明してくれなかったので、まずはEderaについて教えてください。

(Justin Cappos氏は2025年のKubeCon Japan 2025でSBOMに関連するセッションを行っているのでそちらも参照して欲しい。)

●参考:KubeCon Japan 2025、SBOMの課題を解説するSBOMitのセッションを紹介

Zenla:今回はKVMサポートを発表しましたが、まずはEderaの概要を説明しますね。Ederaはコンテナの特徴であるホストとカーネルを共有することで軽量な実行という利点に存在する課題を解決するために開発されたハイパーバイザーです。ベースとなっているのはXenで大部分をRustで書き直しています。Xenをベースにしているので、Ederaはタイプ1のハイパーバイザーになります。タイプ1はハードウェアとゲストOSの間に存在して、ゲストOSとホストOSが完全に分離された形になります。タイプ2はKVMに代表されるハイパーバイザーで、ホストとなるOSカーネルの拡張として実装されます。

タイプ1の特徴は完全に隔離された環境、これはEderaにおいてはZoneと呼びますが、そこでOSが実行されることで共有されるメモリーなどがなくセキュアであることが挙げられます。EderaはXenをRustで大部分を書き直して実装しています。Rustを採用したのはメモリーセーフであることが大きな理由です。

昔からの仮想化を知っているベテランのエンジニアにEderaを紹介すると「え? Xenですか? 懐かしいなぁ」という感想がありました。KVMが流行ったことで言ってみればタイプ1のハイパーバイザーは時代遅れとみなされていたのかもしれませんね。

Zenla:そうかもしれませんね。でも私は以前の仕事でGoogleとIoT関係のソフトウェア開発に関わっていたんですが、その時にハイパーバイザーのタイプによってセキュリティの強さというか硬さと言ってもいいかもしれませんが、信頼性がかなり違ってしまうということに気付いたんです。そしてハイパーバイザー自体の大きさもかなり大きくなってしまう。これはIoTデバイスにはかなり大きな制約となってしまうということです。その時にタイプ1のハイパーバイザーであるXenは信頼できるソフトウェアとして可能性があることに気付いたんです。それがXenをRustで書き換える背景になっています。

Ederaのタイプ1ハイパーバイザーという特徴については以下のEderaのブログが参考になるだろう。

●参考:Why Edera Built on Xen: A Secure Container Foundation

今回リリースしたKVMのサポートについてその背景を教えてください。

Zenla:KVMのサポートは、すでに多くのインフラストラクチャーがKVMベースで構築されているような企業の声に応える形で実装しました。多くのシステムがKVMをベースにして作られていますし、それを全部Ederaに置き換えるというのは現実的では難しいと思います。EderaがKVMをサポートすることでKVMをベースにシステムが運用されている企業では利用が進むと思います。Ederaがやっているアイソレーション、つまりカーネルを共有しない形で攻撃される領域を減らすというのはKVMにおいても実装しています。なのでKVMベースに変わったからと言って、Ederaの特徴であるセキュアで強固なアイソレーション機能は維持されています。

Ederaがハイパーバイザーとして発表されたのは2025年のKubeCon North America、つまり約1年前のアトランタでした。あれから1年経ちましたが、公開できるユースケースはありますか?

Long:IBMですね。IBMはEderaを彼らのシステムに組み込んで利用しています。プロダクトとして再販するような形ではありませんが、仮想化の基盤として使うという形です。他にもセキュリティを高めたいというニーズに応える形で大規模に使っている例はありますが、まだ名前を出せる段階には至っていません。

Moore:Ederaのユースケースではありませんが、AppleはKata ContainerをSwiftで書き直したものをmacOSのコンテナランタイムとして採用しました。このアプローチはEderaと同じです。つまりハイパーバイザーレベルのセキュリティをmacOS上の開発プロセスに応用しているということです。これはAlexがブログにも書いているのでそれも参考にしてください。

●参考:Apple Just Validated Hypervisor-Isolated Containers (Here's What That Means)

その意味ではAppleはEderaを直接使っているわけではないが、その発想が正しいということを証明していると? つまりハイパーバイザーレベルのアイソレーションをコンテナに適用するという方法ですが。

Zenla:そう言っても良いと思います。WWDCではあまり話題にはならなかったんですが、この発表は大きなインパクトだと思います。

EderaはGPUのサポートも発表しました。これはKubernetesのDRA(Dynamic Resource Allocation)とは違う仕組みということですか?

Zenla:EderaのGPUサポートはホストOSの中ではなくGPUのドライバーをアイソレーションされたZoneで実行するというものでGPUの分割も可能です。DRAはKubernetesのリソースとしてGPUを分割して共有するもので、Ederaとは異なります。DRAはKubernetes専用の仕組みですが、Edera for GPUはKubernetes以外でも利用できます。

最後に、Ederaにとってこれからの1年はどんな感じになると思いますか?

Long:コンテナランタイムはセキュアであることが最大の優先順位になってきていると思います。その意味でEderaのアプローチがもっとエンジニアに発見されると良いなと思います。

Ederaのブースの前で撮影

Ederaのブースの前で撮影

ピンクのウーパールーパーのキャラがEderaのチャームポイント(Ederaのサイトより)

ピンクのウーパールーパーのキャラがEderaのチャームポイント(Ederaのサイトより)

慌ただしい時間の中でインタビューに応えてくれたEderaのCEO、CTOそしてソフトウェアデベロップメントライフサイクルのセキュリティに詳しいリサーチャーが加わったことで、Ederaのプロダクトは単にインフラストラクチャーの強化にとどまらず、生成AIが多くのワークロードを支配するような時代にも攻撃面を最小化し、OSとコンテナのアイソレーションを実現することで安全な運用を可能にするソリューションとなるだろう。Ederaのマスコットであるウーパールーパーのキャラクターの可愛さに隠れて見落としがちだが、ハードコアなセキュリティエンジニアがRustを使ってソフトウェアを書き続けていることはメモしておきたい。

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