実践!ロゴ制作

2008年12月9日(火)
河田 雅彦

基本デザイン案の選定

 この段階で、おそらくどこに出しても恥ずかしくないようなロゴデザインが10パターン出来上がっているはずです。ですが、この状態でプレゼンテーションに挑んではいけません。

 なぜなら、基本的にクライアントはデザインに関しては素人ですから、10個提案されると、決めるどころか迷ってしまって「○番と×番の折衷案が見て見たい!」などと言い出しかねません。

 コンセプトとターゲットにずれがなければ、クライアントの好みの問題になってしまいます。そうなると、もう一度デザインをやり直すことは当然ですが、コンセプトから外れてしまう恐れが出てきます。

 ですので、10パターンから3パターン程度まで絞り込みましょう。また、この段階でもう一度ふるいにかけることで、細部のロジックを再確認し、固めることもできます。デジタルデータに変換する時点で、ほんの少し、コンセプトから外れてしまったものや、ターゲットにふさわしくないものをもう一度チェックして除外します。さらに、誰にでも説明できるロジックでふるいにかけます。

 例えば、文字と文字間のプロポーションが数字で説明できないものや、逆にロゴ全体が黄金比・白銀比などの整数倍になっているものなどが選別の条件です。

 この方法で選び抜かれた3案が、プレゼンテーションする基本デザインとなります。最後にもう一度コンセプトやターゲットから外れていないか確認して、基本デザインの完成です。

プレゼンテーション

 いよいよクライアントへ向けてのプレゼンテーションです。クライアントを驚かせる必要はありませんが、うならせることは重要です。特に、ヒアリングにより洗い出された要素が、どのように活(い)きているのかを伝えることは必須です。これまでのすべての情報を用意して、プレゼンテーションに挑みましょう。

・ヒアリング結果とそれをまとめたマトリックス
・マトリックスから導き出されたコンセプトとターゲットユーザー
・アイデア出しのラフスケッチ100枚
・選ばれた10枚の出力カンプ
・10枚から3枚に絞り込んだ理由
・3枚の基本デザインと基本アプリケーションデザイン

 また、プレゼンテーションでは、求められていなくても、名刺やWebサイトなど、必要なアプリケーションへのロゴの展開例も持参します。ご存じの通り、ロゴは単体で存在することはあり得ません。必ず何かに付随するか、何かの媒体を通してユーザーの目にとどまるのです。特に製品のロゴは注意が必要です。この点も忘れずクライアントに伝えなければなりません。

 そして、これが一番重要かもしれませんが、これらの内容をロジカルに、かつ、自信と熱意を持ってプレゼンテーションすることです。いかにかっこいいか等は論外です。作り上げたデザインが、クライアントとユーザーをどのようにして結びつける作用を持っているのか、そのロゴによって、クライアントが享受する成果は何なのかということをわかりやすく伝えます。プレゼンテーションはロジカルにわかりやすい言葉で行うことが、クライアントを納得させるためのポイントです。

 次回は、各種媒体へ展開する上での注意点から、マニュアルを作成し納品にいたるまでを紹介します。


【参考文献】

生田昌弘/株式会社キノトロープ『Webブランディング成功の法則55』株式会社翔泳社(発行年:2005)

「45 Rules for Creating a Great Logo Design」(http://www.tannersite.com/rules-of-logo-design/)(アクセス:2008/11)

「オークセール本店」(http://www.aucsale.com/)(アクセス:2008/11)

株式会社キノトロープスーパープロジェクト
大学卒業後、建築・プロダクト模型制作を経て、グラフィックデザイナーに転向。SPツール/パッケージデザイン等を経験後、企業のオフィシャルサイトの企画立案、企業ブランディングなど、デザイン&ディレクションを中心に活動。2008年7月よりキノトロープスーパープロジェクト取締役を務める。http://www.k-superproject.co.jp/

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