ロボットソフトウエアと標準化
ロボットサービスを標準化するRSNP
RTCとRTミドルウエアは、ロボット開発のための標準とオープンプラットホームであることはご理解いただけたことと思います。次に、少し視点を変えて、ロボットでサービスをするための標準に触れておきます。
ロボットでサービスをするための標準には、RSNP(Robot Service Network Protocol)があります。RSNPは、一言で言うと、ロボットをインターネットに接続してサービスするための標準です。
コンピューターにネットワーク接続が欠かせないように、これからのロボットにもネットワーク接続が欠かせません。そこで必要となるプロトコルがRSNPです。RSNPにのっとって、端末であるロボット側とインターネット上のサービスサーバー側を実装し、それにより、どんなロボットを接続しても一律にサービスを受けられるようになります。
例えば、同じお天気情報や防災情報を、あらゆる企業のロボットが同様に受けられる、ということになります。この実証実験は2005年に行われ、現在も実験運用を継続しています。
RSNPはRTCとは異なり、国策プロジェクトの成果ではありません。純粋な企業コンソーシアムであるRSi(Robot Services initiative)で策定、公開されています。RSiには、ロボットメーカー、システムメーカー、ソフトメーカーだけでなく、サービス提供側として、コンテンツプロバイダーが参加していることが大きな特徴です。
RSNPは、ロボットサービスのための国内唯一の標準です。まだOMGへの提案は行っていませんが、今後、OMG仕様として検討されていく可能性があります。
ロボット開発は標準から普及へ
ここまで、ロボット開発のための標準、オープンプラットホームと、ロボットサービスのための標準について述べてきました。これら以外にも、OMGには、RLS(Robotics Localization Service:ロボットの位置決めに関する標準。これから仕様公開予定)があります。
ほかにも、主に産業用ロボットのラインにおいて、さまざまな機器の取り込みを容易にするために作られたORiN(Open Robot/Resource interface for the Network)があります。ORiNは、OMGでなく、ISOでの標準を目指しています。
これらの標準が出てくると、今後ロボットビジネスが急速に普及する予感がします。しかし、標準だけでは普及はしません。標準は普及の土台にはなりますが、普及を確約するものではありません。なぜなら、多くの人がメリットを受け、ビジネスとして成り立ちうる、ということが見えないと誰も乗って来ないからです。たとえRTCが素晴らしい理想の下で標準化され、OMGのお墨付きをもらったとしても、誰かがビジネスを信じてRTCを作らなければ、普及しないわけです。
国家戦略は着々と進み、状況を後押ししています。あとは企業側が乗るか乗らないかです。100年に一度の大不況の中、新しい投資には勇気が要ると思いますが、近い将来有望になる技術であれば、乗らない手はありません。
私は、RTCとRTミドルウエアの思想にほれ込んでいます。必ずや、これがロボットビジネスのブレークスルーを生むものと信じています。そして、ブレークスルーをけん引するのがソフトウエアエンジニアである、と考えています。それは、とりもなおさず、RTCとRTミドルウエアがソフトウエアの技術であるからです。
次回は、RTCとRTミドルウエアを試していただきましょう。そして、ソフトウエアエンジニアの視点でこの技術を見ていただき、皆さんの目で可能性をご判断いただくことにしましょう。
【参考文献】
長瀬雅之『はじめてのコンポーネント指向ロボットアプリケーション開発 RTミドルウエア超入門』毎日コミュニケーションズ(発行年:2008年)
「経済産業省 技術戦略マップ2009 システム・新製造 ロボット分野」http://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/kenkyu_kaihatu/str2009/3_1.pdf(アクセス:2009/06)
RSi - Robot Services initiative -(http://robotservices.org/)(アクセス:2009/06)
ORiN協議会(http://www.orin.jp/)(アクセス:2009/06)