サーバーOS選定 6つのポイント

2009年7月3日(金)
大村 幸敬

今日のサーバーOSの選び方

 皆さんこんにちは。私は株式会社インテックの大村と申します。システムインテグレータ(SIer)のシステム基盤専門部隊として、コンサルテーションから、構築・運用引き渡しまで、システム基盤に関する一連の業務を行っています。

 本連載ではサーバーOSにスポットを当てます。OS選定にあたって重視される6つの評価ポイントについて、商用からフリーのものまで各種のOSを比較・検討していきます。

 数年前、Linux系OSがインターネット系だけでなく一般業務用のサーバーとして利用されるようになってきたころ、いくつものディストリビューションを比較検討したことがありました。その当時は、いくつかの商用Linuxが国内で販売され始め、多くの選択肢がある状況でした。それぞれ特徴を理解して最適な提案をするため、各種のディストリビューションを評価する必要があったのです。

 今回、サーバーOSの比較記事を書くにあたって気づいたのは、サーバーOSを比較検討する機会が減っているのでは?ということです。SIerという立場からお客さまへシステムを提案する流れを振り返ってみると、OSの選定が重要なウエイトを占めることが減っており、ほかの要因から従属的に選ばれることが多いように思ったのです。その要因とは、以下の3点です。

 (1)業務アプリケーションが動作するかどうか
 (2)お客さまの既存運用に適合するかどうか
 (3)ハードを含めたサポートがどのレベルまで提供されるか

(1)業務アプリケーションが動作するかどうか
 システムを構築する上では業務機能が最優先されます。例えば、対応OSが1つしかないような業務アプリケーション(パッケージなど)が選定されれば、採用するOSはおのずと決まってしまいます。また、開発部門が得意とする言語や実行環境が特定のOSに依存するような場合も、ほかの要件を検討する前にOSが決まってしまうことが多いでしょう。

(2)お客さまの既存運用に適合するかどうか
 システム運用にあたって既存運用に適合するかどうか、という観点はここ数年特にクローズアップされてきたように思います。安価なIAサーバーを使用して多くのシステムを構築していった結果、社内に多様なハード、多様なOSを抱えることとなり、システム全体の運用コストが増大してしまったという事例を多く聞きます。そのため近年のシステム更改にあたっては、仮想化環境の使用やOS・ミドルウエアの統一により、運用をシンプルにしたりして、運用コストの削減を図っていく動きが見られます。この場合は既存環境と同じOSが優先的に選択されることになります。

(3)ハードを含めたサポートがどのレベルまで提供されるか
 最後はサポートに対する要求です。障害が発生した場合、確実にその問題を対応するには、ミドルウエア、サーバーOS、ハードウエアという一気通貫の調査・対応が欠かせません。基幹業務などの高い信頼性やサポートレベルが要求されるシステムでは、ユーザー企業がシステムの安定性や障害対応に対して過大なリスク・責任を抱えるよりは、専門家であるメーカーの協力を最大限に得たほうがよい、という判断がなされます。
 既存の常駐保守部隊の有無も含めてメーカーが選定された結果、ハードやOSもそのメーカー専用のものが選定される場合もあります。このような状況でサーバーOSを変更することは容易ではありません。IAサーバーでは多くのOSが稼動するため、専用ハードほどの硬直性はありませんが、ハード・ソフトの組み合わせに対するサポート状況や実績といった観点から、サーバーOSに対する制約が発生することは多くあります。

ハードウエア仮想化によって「ミドルウエア化」するサーバーOS

 このように、サーバーOSを比較検討することが少なくなったのは、サーバーOSの選定がシステム構築における重要事項になり得なくなってきたことが原因と考えられます。さらにもう1点、仮想化による「サーバーOSのミドルウエア化」が挙げられます。

 仮想化でサーバーの集約を検討する場合、多様なサーバーOSを搭載できるVMwareなどの仮想環境であれば、サーバーOSはパッケージアプリケーションのミドルウエア的な位置づけで動作することになります。サーバーOS自体は一度作ったテンプレートをコピーすることで構築できてしまいます。

 以前はハードが変わるたびにドライバーを変更したりパッチを適用したりといった作業がありましたが、仮想環境上のシステム構築ではハードにあたる部分が統一された仮想ハードウエアになるため、サーバーOS導入・構築に関するさまざまなノウハウやチャレンジは以前ほど必要でなくなってきています。エンジニアにとっては学習機会が喪失し、サーバーOSに対してその魅力を感じる機会も少なくなっているように思います。サーバーOSのミドルウェア化により、エンジニアの興味がOSから離れていることも原因のひとつではと私は考えています。

インテック
株式会社インテック ITプラットフォームサービス事業部所属。社内のLinux/OSS事業立ち上げに参画後、金融機関を中心に大規模システム基盤の提案・構築・運用サポートを担当。
Linuxから仮想化を経て、現在はクラウドの中身が気になる日々。
http://www.intec.co.jp/

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています