RT+ITで新しいロボットサービスの世界へ
RT+ITで新しいロボットサービスのアイデアを考える
私が籍を置く株式会社セックはソフトウエアハウスです。ですから、業務でハードウエアを製作することはありません。そんな私たちでも、前ページのようなセンサー1つ、アクチュエータ1つのRTシステムなら試作できます。私たちは、このシステムを自社研究開発の中で2年間温めてきました。そして、前出のようにビジネスの実績も作りました。これからは、もっとビジネスを広げていきたい、と考えています。
では、どこでビジネスをしていくのでしょうか?
このロボットを売って商売をしていくのでしょうか?
答えはノーです。セックはソフトウエアハウスであって、ロボットを売って商売する会社ではありません。ソフト会社にとってコンピューターは単なるサービス提供の手段に過ぎません。高度な情報処理でお客さまの業務改善に貢献したり、経営効率を高めたりすることが目的です。ですから、ロボット(RTシステム)でも考え方は一緒です。ロボットを使った今までにないサービスを売ることで商売したい、と考えています。
ロボットを使ったサービスはアイデア勝負です。「処理結果を実世界にフィードバックする」のは、情報処理のみを行うITの利用だけではできません。しかし、RTが加わることで、外界へのアクションをともなったサービスが行えるようになります。セックのシステムでは、この部分は「人を追いかけながらカメラを回す」「人を追いかけながら声掛けをする」というところに相当します。
単なる首振りだけなのですが、セックのシステムは人物の動きを追いかけるところを皆さんに面白がってもらっています。単純な割にはなぜか子供から大人まで惹きつけることができます。ロボットは形ではない、ということを実感するとともに、「動きをともなったサービス」に可能性を感じます。ですから、ロボットサービスはアイデア勝負だ、と考えるわけです。
RTシステムの発展にはソフトウエアエンジニアの存在が不可欠
そろそろ本連載もおわりに近づいてきました。
4回の連載の中で、RTシステムの考え方から、RTを付加した新しいサービスの可能性までお話させていただきました。RTシステムを構築するにあたって、ポイントとなる技術のRTCとRTミドルウエアに関しては、概要のみしか伝えていません。そのため、いざプログラムを作ろうと考えると最初は戸惑いがあるかもしれません。しかし、ソフトウエアエンジニアの皆さんであれば、戸惑いは最初だけで、理解してしまえば、まったく問題なくこなせるようになるはずです。
実際のプログラミングに関しては、菅さんの連載(http://thinkit.jp/article/948/1/)や、拙著『はじめてのコンポーネント指向ロボットアプリケーション RTミドルウェア超入門』、第3回のダウンロードファイル(http://tedia.jp/member/download/detail.php?id=161)とその中の「開発者向けのデベロッパーズマニュアル」等をご参照ください。
RTシステムはソフトウエアの技術ですから、ソフトウエアエンジニアの皆さんにはぜひお試しいただきたいと考えます。普段から皆さんが実感しているように、技術は実践でのみ身に付きます。
さて、私のつたない連載に最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。「SEのためのRTシステム概論」と題してお話させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。本連載を通して、RTシステムの発展にはソフトウエアエンジニアが重要な役割を握っている、ということを実感していただけたら幸いです。
近い将来、必ずやRTシステムがITシステムとともに社会を支える時代がやってきます。そして、そこでの主役は、ほかならぬ皆さんです。皆さんのRTシステムでのご活躍を期待しています。
【参考文献】
長瀬雅之ほか『はじめてのコンポーネント指向ロボットアプリケーション開発 RTミドルウェア超入門』毎日コミュニケーションズ(発行年:2008年)
「OpenRTM-aist Official Web Site」(http://www.is.aist.go.jp/rt/OpenRTM-aist/html/)(アクセス:2009/06)