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EMCの次の賭けはデータセンターのソフトウェアによる革新

2016年6月29日(水)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
元アップルでSiriのバックエンドの責任者がVMwareベースのインフラからMesosとコンテナーをを使った分散クラスターに移行した理由を解説。次世代のEMCのデータセンターはこういうものを提示してくるのかもしれない。

2016年5月初旬にラスベガスで開催されたEMC World 2016だが、製品のラインアップの整理と新製品の発表、DELLとの合併前にEMCのCEOジョー・トゥッチ氏の最後の登壇なども含んで盛りだくさんなカンファレンスだった。会期3日目のGuru Sessionと題されたセッションでは、EMCに最近転職した元アップルのSiriのデータセンターを担当していたジョシュア・バーンスタイン氏が、「DATA PERSISTENCE IN THE NEW CONTAINER WORLD」と題して講演を行った。

ステージに登壇したジョシュア・バーンスタイン氏

これは、コンテナーベースのアプリケーションがパーシステンスデータ、つまりデータベースなどの永続的なデータストアを必要とする時にどのようにシステムを構築したのか?という話だ。もう少し言えば、バーンスタイン氏の説明を借りれば、「北米で有数のVMwareによるクラスターをどうしてMesosに移行したのか?」という話であった。一緒にデモを行ったのはMesosphereのCEO&Co-Founderのトビー・クナウプ氏だ。ちなみにジョシュア・バーンスタイン氏の肩書はVP of Technology,Emerging Technologies Divisionだ。クナウプ氏もMesosphereの前はAirbnbでアーキテクチャーを担当して、当時のモノリシックなアプリケーションをマイクロサービスに作り変えたという経験を持つという。

まず最初にバーンスタイン氏は当時のアップルのSiriのバックエンドは5,000以上のVMwareの仮想化基盤の上で安定して稼働していたと語る。ただ、Siriがローンチした最初のクリスマスの日にデータセンターのエンジニアが誤ってってあるサーバーの電源を落としてしまったというエピソードを紹介。この時、たまたまあまり使われていなかった種類のサーバーを落としてしまった結果、パーツが故障してしまい、そのスペアもなく、復旧のマニュアルも更新されていなかったために最終的にデータベースサーバーのクラスター全体が停止するという状況になってしまい、その復旧に多くの時間を費やしたという。主な原因は、障害対応のマニュアルが古くて対応方法が間違っていたことだったらしい。

では、システムを更新する度に対応方法のマニュアルを更新していくのか?という問いに、それではダメだ、もっと革新的な方法論が必要だと思い始めたのがシステム全体を刷新するきっかけだったという。もっとシンプルでスケーラブル、それに障害に耐え得るインフラストラクチャーを目標に検討を始めたのだ。そしてアップルのSiriのバックエンドを9ヶ月かけてMesosとMarathon、そしてDockerコンテナーベースのインフラストラクチャーに移行した。当時はサーバーのタイプだけで26種類もあったものを3種類まで絞って構成をシンプルにすることも同時に行い、ロードバランサーもF5 Networksの優良顧客とみなされるほどに製品を入れていたが、全てMesosに移行したのだ。

この時に社内からはOpenStackを使うという選択肢もあったが、VMwareによるインフラストラクチャーそのものには何の技術的な不満もなく、それと同じようなもの、しかもまだ信頼性が成熟していないものを選ぶということは馬鹿げているという理由でOpenStackは選択されなかったという。もっと根本的に違うもの、シンプルでスケーラブルで、アプリケーションをどこにでも持っていけるようなシステムにしたい、というのがMesosとDockerコンテナーを選んだ理由だ。

ここでMesosphereのクナウプ氏をステージに呼び込んで実際にデモを行った。これはMesosで管理されている2台のサーバーの1台にコンテナーベースのMySQLをデプロイしたうえで、そのサーバーを意図的に止めてアプリケーションがもう1台のサーバーに自動的に移動して稼働を続けるというデモを行った。実際にコンソールとして使われたのはオーケストレーションを行うMarathonだ。このデモのベースとなっているのはEMC {code}がオープンソースソフトウェアとして開発を行っているREX-Rayというコンテナー対する永続的ボリュームを割り当てることを可能にするプラグインだ。

デモを行うMesosphereのクナウプ氏

REX-Rayに関してはここを参照:http://rexray.readthedocs.io/en/stable/

EMC連合の一部であるVMwareによる仮想化インフラストラクチャーからMesosに移行した事例としてのアップルのSiriのバックエンドを、コンテナー化されたクラウドネイティブなアプリにおいてもデータベースなどの永続的なデータストアを利用可能にするコンテナーのパーシステンスストレージプラグインであるREX-Rayを紹介した。意外とEMCの中ではOpenStackではなくてMesosとMarathonが次に来る新しいプラットフォームとして意識されているのではないか。Dockerコンテナーが主体となったクラウドネイティブなアプリのアプリケーションを動かすプラットフォームとしてのMesosとMarathonは、同じEMC連合のCloud Foundryも独自のロードバランサーやルーティングなどのオーケストレーション機能を持っているが、Mesosはそれとは一線を画すシンプルさで評価されていると思われる。来年のEMC Worldではもっと大きくフィーチャーされるのではと思わせるデモと解説であった。

REX-RayとDC/OSを紹介するクナウプ氏

ちなみにApache Software Foundationにプロジェクトとして登録されているのはApache Mesosで元々の開発元のMesosphereはDC/OS Enterpriseという名称で差別化を行っている。モニタリングなどが追加されているようだが、ソフトウェア的にはほとんど違いが無いように思える。

詳しくはここを参照:https://mesosphere.com/enterprise/

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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