第3回:日本の人事制度の現状 (3/3)

IT戦略と人材マネジメント〜IT効果による人材革命
IT戦略と人材マネジメント〜IT効果による人材革命

第3回:日本の人事制度の現状
著者:日本ピープルソフト  小河原 直樹   2005/9/2
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成果主義の評価システム

   現在、年功序列に代わる成果主義によるさまざまな人事評価システムが導入されている。それらの代表的な制度を検証してみたい(図2)。
個人と企業をつなぐ色々なマネジメントシステム
図2:個人と企業をつなぐ色々なマネジメントシステム


職能資格制度

   年功序列に代わる人事制度として導入された制度である。年功給が経験年数を評価する制度に対して、どれだけの知識や技能・技術を身に付けたかを評価する制度である。具体的には職能資格制度を設定し、職務分析により、職種別資格要件の職能要件を定義し、評価基準とする。管理職のポスト不足から今までの役職制度に行き詰まっていた多くの企業に受け入れられ、今でも日本の多くの企業で導入されている。

   職能資格制度の基本的な考え方は、「高い能力を保有していると思われる従業員は、難易度の高い業務を遂行できる」である。その際に高い能力を保有している基準が学歴や実務とかけ離れた資格制度ゆえ、現実の業務遂行能力とのずれが生じはじめている。


MBO(Management by Objectives: 目標管理制度)

   MBOは1950年代にピーター・ドラッガーが提唱したマネジメント・システムである。目標管理制度は、企業目標を「事業所目標 → 部門目標 → チーム目標 → 個人目標」と企業目標を徐々に落とし込んでいき、最終的に個人と企業目標を一致させる制度である。目標を立てる時は、必ずそれぞれの目標と一致もしくは関連する個人目標を立てなければいけない。

   問題点として、企業戦略を従業員の目標に落とし込む過程が極めて恣意的なものになり、成果主義の名目で、主観と感覚で評価する単なるインセンティブ制度になってしまうことがある。また、実現性の低い目標を従業員に強要することが、疑問や不満をもたらしたり、逆にわざと低い目標を立てることにより、部門業績自体を悪化させることに繋がったりする。


コンピテンシー・マネジメント

   企業戦略を遂行するうえで、高い業績をもたらす従業員の行動規範をモデルに評価基準としたものがコンピテンシー・マネジメントである。1970年に心理学者のマクレランドによって研究され、人間重視の評価方法として米国を中心に広まった。

   簡単にいうと、仕事の出来る従業員の行動パターンで、一流のセールスマンは、約束の10分前に顧客先に到着していて、簡単明瞭な資料を作成し、夜中の2時過ぎまで働いていても壊れないタフな体力を持っているなどである。

   コンピテンシー自体は、日本に紹介されてまだ日が浅い。企業の中には、コンピテンシーの定義や記述方法、まとめ方を参考事例そのままに流用して運用しているケースが見受けられる。しかし、コンピテンシー自体は本来企業独自のものであり、企業文化を再確認するためにも、独自で構築する必要がある。

   成果主義が欧米に根付いたのは、歴史的・文化的背景や社会の構成要因が、それを必要としていたからである。それらの背景と日本の状況を比較検証することなしに、制度だけを導入しても運用はうまくいかない。次回はそれらを鑑みて、現在求められている日本の人材マネジメントはどのようなものなのか、そして、そのために人材情報システムでしか成し得ない人材価値の可視化や経営サポートのツールとしての役割について述べてみたい。

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日本ピープルソフト社 小河原 直樹
著者プロフィール
日本ピープルソフト株式会社  小河原 直樹
米国Baylor大学大学院国際ジャーナリズム学科卒業後、SAPジャパン(株)にHRコンサルタントとして入社。その後、外資系金融企業で日本及びアジア地域の人事責任者として勤務。現在日本ピープルソフト(株)でHCM Global Product Strategy. Senior Managerとして日本の製品戦略の責任者。


INDEX
第3回:日本の人事制度の現状
  職務給と職能資格制度〜仕事ありきか人ありきか
  日本の人事制度
成果主義の評価システム

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