第5回:IT企画人材とIT提供人材の確保 (2/3)

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第5回:IT企画人材とIT提供人材の確保
監修者:野村総合研究所  淀川 高喜   2005/12/8
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IT企画人材の役割

   それでは具体的に、IT企画人材とはどのような人材であろうか。結論からいえば、ユーザ企業において、IT活用を企画する組織が実施する活動を担う人材と考えるとわかりやすい。図3は、企業内IT企画部門のミッションや活動と、それを担うIT企画人材との関係をモデル化したものである。
IT企画人材像のイメージ
図3:IT企画人材像のイメージ
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   IT企画部門は企業のIT活用において、次のことを継続的に担保することをミッションとする組織である。

  1. ITを手段として活用し、自社の経営戦略・事業戦略に貢献する
  2. 技術・製品が急速に発展・変化する中で、自社にとって最適な技術・製品を選択する
  3. 常に投資対効果という観点で判断を行い、無理なIT活用、無駄なIT活用を回避する

表1:IT企画部門が企業のIT活用において継続的に担保とするもの

   そしてこのミッションを達成するために、次の活動を実施するのがIT企画人材である。

  • 全体IT戦略企画
  • 業務改革推進
  • ユーザ支援
  • 技術企画・標準化
  • ITガバナンス(ITに関するヒト、モノ、カネの管理)

表2:IT企画人材の実施活動

   「ITアナリスト」とは、これらの活動の中で、主に全体IT戦略企画/業務改革推進/ユーザ支援を企業内IT部門の立場から推進する人材であり、「ITアーキテクト」とは技術企画・標準化を担う人材であり、「全体IT統括者」とはITガバナンスを担う人材であると考えることができる。また、ITによって自社の経営戦略・事業戦略に貢献するために、全体IT戦略企画/業務改革推進/ユーザ支援を行うには、企業内IT部門人材であるITアナリストのみの活動では不十分であり、企業内ユーザ部門人材である「ITビジネスリーダ」との協業が不可欠である。

   多くのユーザ企業は、ITアナリストとITビジネスリーダを、自社内で確保する必要があると認めているようである。一方、図4に示されるこれまでのIT人材マネジメントに関する調査結果を見ると、表3にまとめられるように、ユーザ企業がこうした人材を体系的に育成・確保してきたとはいいがたい。

IT人材育成の実態
図4:IT人材育成の実態
(出所)「NRI 2004年ユーザ企業のIT運営実態調査」より
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

  1. 従来からIT人材の多くはITの専門人材として、その育成がIT部門自身に委ねられている
  2. IT人材が業務へのITの活用を学ぶ場を提供する施策としての、ユーザ部門との間でのローテーションは、ほとんど行われていない
  3. ユーザ部門側では、ITを活用した業務革新施策の立案ができる人材が十分と回答している企業は3社に1社にとどまっている。

表3:IT人材マネジメントに関しての実態

   IT企画人材のなかで全体IT統括者は、経営戦略にそってユーザ企業が目指すITガバナンスを実現するための仕組を構築・運営する人材である。ITに関する専門性が必要とされるというより、社内の行政能力が問われる人材である。また「ITアーキテクト」はシステムインフラを専門領域とするIT提供人材のなかで、全体を見渡すことのできる高度なレベルに達した人材であることが求められる。

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株式会社野村総合研究所 淀川 高喜
監修者プロフィール
株式会社野村総合研究所  淀川 高喜
プロセス・ITマネジメント研究室長 兼 金融ITマネジメントコンサルティング部長。国家試験 情報処理技術者試験 試験委員会 委員。1979年野村総合研究所入社。生損保、銀行、公共、運輸、流通、製造業などあらゆる分野における幅広いシステムコンサルティングに携わる。専門は情報技術による企業革新コンサルテーション、情報システム部門運営革新コンサルテーションなど。


INDEX
第5回:IT企画人材とIT提供人材の確保
  ユーザ企業に必要なIT人材
IT企画人材の役割
  ユーザ企業におけるIT提供人材像

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