第2回:実践!RFPでIT調達(前編) (3/3)

IT調達
IT調達のプロセスを確立させるためには

第2回:実践!RFPでIT調達(前編)

著者:プライド  稲葉 洋明   2007/2/1
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RFPの作成

   各種要件を整理してRFPを作成します。

RFPの構成

   書き方に決まりはありませんが、標準的な文書構成は表8のようになります。

1. システムの概要(基本方針)
自社がシステムを構築する上で最も大切な事項(グランドコンセプト)となる開発の経緯、基本方針、狙いとする効果などを明らかにする。

2. 提案依頼手続き
ITベンダーが提案書を提示するときに必要な事務手続きなどに関し、各種条件を指定する。

3. 依頼事項
提案依頼書の中核をなすもので、依頼するシステム開発の内容、付帯条件(ソフトウェア、ハードウェア)並びに要求技術などを明示する。

4. 開発体制・開発環境
開発作業時の作業にかかわる環境条件について、自社・ITベンダー双方の役割分担について明示する。

5. 保証要件
主として契約条項に盛り込まれる内容であるが、提案書の提出を受ける際に明らかにしておきたいシステム保証要件を明示する。

6. 契約事項
契約書の中に盛り込むべき重要事項を抽出し、それらの条件、あるいは要求について、あらかじめ明らかにしておく。


表8:RFPに記載する内容
(参考文献:SLCP-JCF98)


RFP作成の省力化

   表9のことを行うことで、RFP作成の省力化をはかることが可能です。

フォーマットの標準化
RFPのフォーマットを標準化します。「インフラ系」「基幹システム系」などと案件をパターン化し、パターンごとのフォーマットを準備することで、より利用しやすいものとなります。
事例の整理
RFPの作成には、過去の事例が大変参考になるため、整理して保管しておきます。RFPだけでなく、RFI、RFP、受領した提案書、その他プロジェクトの成果物をセットで保管しておくことで、一連の流れが把握できます。また、過去の事例を一元管理し、関係者であれば誰でも見られる状態にしておくことも重要です。

表9:省力化のポイント


記述に対する留意点

   曖昧なRFPに対しては、曖昧な提案書しか得られません。提案書の評価は、RFPの要求を満たしているかという観点で行うため、RFP自体の要求が曖昧な場合、評価自体が難しくなります。

   したがって、「多い」とか「極力」といった表現は避け、定量化しましょう。例えば、「業務に支障のない範囲のレスポンス」ではなく「何秒以内に応答があること」といったように、定量的に記述します。

   また、とかく「ITベンダーは専門家だから、何でもわかるだろう」と考えがちですが、ITベンダーはITの専門家であって、自社の事業特性や業界特有の慣習などをすべて熟知しているわけではありません。特に調達するITシステムの根幹に関わることについては、注意が必要です。


次回予告

   今回は、「RFP作成の調達案件の選定」から「RFPの作成」までを説明しました。

   次回は「RFPの発表」から「契約企業の決定と契約締結」までを説明します。

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株式会社プライド 稲葉 洋明
著者プロフィール
株式会社プライド
稲葉 洋明

中小企業診断士
前職は自動車部品メーカで、生産管理システムの構築やISO9001の認証取得を担当する。システム開発方法論および情報システム分野に興味を抱き、株式会社プライドに入社。現在、システム開発方法論「プライド」を軸に、IT調達プロセスの構築支援に携わっている。


INDEX
第2回:実践!RFPでIT調達(前編)
  RFPによるIT調達プロセス
  RFP発行先の選定
RFPの作成
IT調達のプロセスを確立させるためには
第1回 何故、RFPなのか
第2回 実践!RFPでIT調達(前編)
第3回 実践!RFPでIT調達(後編)

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