第6回:PICLS〜XMLデータベースを用いた販促ツール作成支援 (3/4)

作って学ぶXMLデータベースNeoCore XMS実践
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第6回:PICLS〜XMLデータベースを用いた販促ツール作成支援
著者:ウルシステムズ  最上 隆史、林 浩一   2006/5/22
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PICLSのシステム概要

   では、上記で説明してきたXMLの活用とはどういうことでしょうか。PICLSを基にしてXMLデータベースとXMLの活用について説明します。
販促物を作成するユーザの作業

   販促物を作成するユーザの作業の大まかな流れは以下の通りです。

   チラシやパンフレットの作成のために、まずユーザはJOBと呼ばれる共同作業環境を定義します。このJOBは、1つの販促物を作成するために作業を行うデスクトップのようなもので、作業に必要な素材を一式保持しておき、保持された情報の追加や修正を行うことができます。

   JOBをインターネットで共有することで、コピーライターやデザイナーなど複数のスタッフによって素材が準備されます。もちろん過去の販促ツールで使われた素材を再利用することもできます。

   JOBに販促物として使いたいデザインテンプレートを登録しておきます。販促ツールに必要な素材が集まったら、データをPICLSに登録し、出力指示をすることによって組版処理に必要なXMLドキュメントが作られ、組版エンジンを使って販促ツールの印刷イメージ(PDFなど)ができあがります。

作業と素材
図2:作業と素材
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


システムの構成

   PICLSは、販促ツール作成支援をASPサービスとして提供するためのシステムです。PICLSは大きくサーバ側の仕組みとクライアント側の仕組みに分かれます。

システム構成
図3:システム構成
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

クライアント側
利用するユーザには、データを管理する管理者と販促ツールを作成する一般ユーザの2種類いますが、いずれもPICLSの主要な操作はWebブラウザを用いて行います。

Webブラウザ
Webブラウザによる操作であるため、インターネットを介して複数ユーザが作業環境を共有して共同作業を行うことができます。ユーザインターフェースには、クライアントOSに依存しないMacromedia Flashが採用され、操作性の向上と統一をはかっています。

データの取り込みプラグイン
他のアプリケーションで作成したDTPデータからテキストや画像などを抽出し、PICLSに登録するたのデータ取り込み用プラグインも用意されていますので、主要なDTPソフトとの連携を可能にしています。

サービス側
インターネットを介してクライアントからの操作に応答するためのサーバコントローラと印刷レイアウトを作るための組版エンジンからなります。

サーバコントローラ
一般ユーザに対して、JOB操作を行ったり商品情報素材を編集したりするための機能を提供します。管理者に対しては、データ項目の編集やデザインテンプレートの管理の機能を提供します。ここで使われるJOB定義、商品情報素材、データ項目定義、出力テンプレートはいずれもXMLファイルとしてXMLデータベースに格納されます。

自動組版エンジン
JOBのインターフェースからの指示によって、選択された素材とデザインテンプレートを使って組版指示のためのXMLデータが作られます。自動組版エンジンはこのデータを受け取ると印刷イメージ(PDFなど)を生成します。ユーザはこの印刷イメージをダウンロードして利用します。

表3:PICLSの仕組み


利用実績

   PICLSが開発された元々の経緯は、旅行パンフレットやチラシの作成を効率化することにありました。このため、季節に応じた金額設定やコース別スケジュール、価格帯が異なる日程カレンダーなど独特なデータ形式もXMLで表現できますので、旅行業界で広く活用されています。

   一方、システム自体は汎用的に作られているため、流通業向けのお得意様向けセールスシートや中古車販売業向けのお客様見積もりシート、飲食業向けレストランランチメニューなどにも実績を広げつつあります。

   PICLSの特徴はなんといっても、管理者側が自由にデータ項目を追加・変更できるというところと、JOBと呼ばれる共同作業環境にあります。いずれも、XMLデータとXMLデータベースの特徴をいかすことで、拡張性の高いシステムを構成しているといえるでしょう。

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PICLSの詳細はこちら
http://www.picls.net/

運営元:株式会社ジェイ・アイ・シー
http://www.jic.co.jp/

取材協力:株式会社エフ・イー・エス
http://www.fes-total.com/
ウルシステムズ株式会社 最上 隆史
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社   最上 隆史
シニアコンサルタント
独立系ソフトウエアハウスで7年のシステム構築を経験。2005年より現職にて基幹システムの構築およびコンサルティングに従事。最近はRDBMSとXMLDBの利用価値に関心を持つ。

ウルシステムズ株式会社 林 浩一
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社   林 浩一
アジャイル開発手法やXML技術を駆使して、ビジネスとITのギャップを埋めるITコンサルティングを行う部門を率いるディレクター。お客様のビジネスを本当に支援できる先端技術の活用を目指して、理論と実践の両面からアプローチしている。
INDEX
第6回:PICLS〜XMLデータベースを用いた販促ツール作成支援
  XMLデータベースを販促ツール作成作業へ適用
  XMLとXMLデータベースによる販促ツールの作成支援
PICLSのシステム概要
  連載のまとめ
作って学ぶXMLデータベースNeoCore XMS実践
第1回 XMLデータベースを使ったシステムを企画する
第2回 半定型文書を扱うシステムを設計する
第3回 XMLデータベースを構築し、検索式を設計する
第4回 検索式を組み込んでシステムを完成させる(前編)
第5回 検索式を組み込んでシステムを完成させる(後編)
第6回 PICLS〜XMLデータベースを用いた販促ツール作成支援
隠されたニーズを引き出すXMLデータベース
第1回 その必然と当然
第2回 その要求と分類
第3回 その必要と条件
XMLデータベースによる企業情報システム構築の最前線
第1回 NeoCore XMSで紐解くXMLデータベース適用の勘どころ

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