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| ECの行き着く先は、ファットテール | ||||||||||||
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もはやインターネットを利用している人の中で、「ロングテールの法則」という言葉を聞いたことがない人はいないのではないか。この法則は米Wired magazine誌の編集長クリス・アンダーソン氏によって提唱された。ロングテールの法則は、書籍や音楽CDなどを販売するAmazon.comを代表するECサイトのビジネスモデルを絶妙に表現することができる。 縦軸を販売量、横軸を商品のランキング(左端が最上位)とした場合、売上は左上から右下に伸びる曲線として表される。ECサイトのない時代において、ランキングの低い商品は店舗に陳列することができなかった(図4の左図)。しかし、ECサイトでは無限の商品陳列空間を用意することができるため、ランキングの低い商品であっても販売可能となった(図4中央図)。右側に伸びる細長い部分が丁度長い尻尾に見えることから、ロングテール(Long Tail)と名付けられた。Amazon.comに限らず、現在提供されている各種Webビジネスの多くをこの法則で説明することが可能である。 ロングテールを可能とした現段階のECサイトは、ランキングの低い商品でも販売可能であることを示したに過ぎない。収益の多くは、依然ランキング上位の商品に依存している。 本来消費者のニーズは千差万別である。20世紀の大量生産販売モデルは、いちはやく消費者に商品を提供するために導入された。すべての消費者のニーズを満たしてはいないが、ニーズの最大公約数を満たした格安の商品を、事業者側は長年提供してきた。商品そのものを保有していない人が多い世の中であったため、このモデルは長年理想的な姿とされてきた。 ECサイトが台頭してきた時代、Webサイト上で販売される商品を保有していない人はほとんどいなかった。つまり買い替え需要である。その際、消費者が求めるものは、他商品との違い、自らのニーズとのマッチングである。市場の発展とともに、あらゆる商品区分で多数の事業者が市場に参入している。商品種類数は大量となり、ニーズを満たす商品は「どこかにある」と消費者は考えるようになった。検索によって目当ての商品を探し出すことができるECサイトはまさに、消費者の2つのニーズを満たしたビジネスといえる。商品に対するニーズと、商品を検索する効率的な手法に対するニーズである。 EC市場の究極の姿は、消費者のあらゆるニーズに応えた商品の生産と販売が一体化したものであるべきだ。ネットワークを通じてすべての消費者とリアルタイムで情報共有が可能である今、ECサイトはそうした領域にまで踏み込むべきである。 現在ギャザリングという、消費者のニーズを集約して一定割合を超えた商品については生産・販売が開始される手法も生まれつつある。将来的には、ECは消費者のニーズの発現からそれを満たす販売までを一元的かつリアルタイムで提供できるのではないかと思う。 そのとき、前述のロングテールの法則は、図5の右図に示すように「ファットテール」のような曲線を描くこととなる。つまり、消費者のあらゆるニーズに対して応えることができる商品を開発・提供できる状態である。 日本では、EC市場は楽天市場、ヤフーショッピングなど競合による寡占化が進みつつある。しかし、この市場のポテンシャルは現状の5倍以上が見込まれる。そして、ECが提供可能な理想的な姿を考えた場合、その道はまだ半ばである。ファットテールのように消費者のニーズの発現と消費までをリアルタイムで補足・提供できるECサイトは既存プレイヤーに対して大きな優位性を保つことができるだろう。この点を備えたECサイトはまだ存在しない。ファットテールモデルを実現できるECサイトがあらわれたとき、この市場には地殻変動が起きるだろう。 |
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