第2回:電子メールシステム強化の取り組み(前編) (1/3)

シマンテックイエローブック
電子メール環境を効果的に管理するための総合的アプローチ

第2回:電子メールシステム強化の取り組み(前編)

著者:シマンテック   2007/2/14
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新しい課題

   パーソナルコンピュータの導入が進み、インターネットが広く普及し、企業イントラネットが整備されたこの20年の間に、ビジネスコミュニケーションは大きく変化しました。電子メールは、おそらく他のどのビジネスコミュニケーションツールよりも、この変化を促したと言えます。電子メールは、組織にとっても個人にとっても、必要不可欠なコミュニケーションツールになっています。

   Enterprise Strategy GroupというIT調査会社が2005年に発表した研究報告によると、電子メールを保存する必要性が、電子記録管理を促す最大の要因になっています。また、米国の裁判所や規制機関が要求する業務記録の種類としても、電子メールが最も多くなっています。

   電子データの開示要求を受けた組織の77パーセントが、法律または規制に基づく手続きの一部として、電子メールメッセージを要求されたと回答しています(出典:ESG Research Report「Digital Archiving」、2005年12月)。

   インターネットと電子メールは急速に進化し、ビジネスの強力な手段になりましたが、それに付随してリスクも増大しています。電子メールは、2つのコミュニケーション窓口の1つであり、問題や課題があるからといって、この窓口を閉じることはできません。

   もう1つの窓口であるWebも、電子メールトラフィック(特に、広く利用されているWebベースのメールサービス)のルートとして使用されています。電子メールは、その簡単さと高い普及率のために、さまざまな脅威を匿名で安価にばら撒くための格好の手段になっています。

   電子メールが機能しなくなると、多くの組織は生産性の大幅な低下を余儀なくされます。

   電子メールは業務の中核を担う重要なアプリケーションであり、リスクが存在したり追加の負担が発生しても、組織が成功するためには必要不可欠です。高速で経済的なコミュニケーションを簡単に実現できる電子メールは、今後もビジネス環境により深く浸透していくものと考えられます。

   それと同時に、電子メールシステムによって組織がセキュリティリスクにさらされ、収益に悪影響が及んだり、組織の存続を脅かす事態にまで発展する可能性も考えられます。電子メールを価値あるものにしている特性そのものが、企業のITを襲う一連の課題の原因にもなっているのです。

増大する企業ITの課題

   電子メールの重要性や業務の基幹としての役割が高まるにつれて、電子メールシステムの可用性の維持が企業ITの重要な課題になっています。休止時間は、ビジネスの収益に直接影響を与える可能性があります。

   以前の電子メールサーバーは、主としてメール転送エージェント(MTA)であり、情報はほとんど保存されていませんでした。現在の電子メールサーバーは、情報ウェアハウスとして機能しています。

   電子メールは、企業の商取引や社内業務の大部分をサポートするようになりました。その結果、訴訟手続きで見られるように、業界の規制を遵守していることを示すための証拠としてよく電子メールが使用されます。

   また、企業の社内ポリシーの違反があったことを示すためにも使用されます。電子メールが、コストと時間のかかる法的な開示手続きの対象になる機会は、ますます増えています。

   今日の企業は、電子メールをより長く保存するとともに、法律で定められた保存期間内に電子メールが改変されないよう対策を講じることが求められています。この状況は、電子メールメッセージを保存するためのストレージコストの増大や、電子メールデータのライフサイクル管理の複雑化を招いています。

   この20年ほどの間に電子メール管理に影響を与えた要因としては、次のものがあります。

  • 1年間に世界中で送信される個人間のビジネスメールのサイズの増加。メールのサイズは、2003年から2004年にかけて59パーセント増加しています(出典:IDC、Worldwide Email Usage 2005-2009 Forecast、IDC #34504、2005年12月)

  • 企業ネットワークに送り付けられるスパムの増大。受信メールの64パーセントをスパムが占めています(出典:Brightmail Logistics and Operations Center monthly Spam Statistics Report)

  • フィッシング攻撃の急増

  • 毎年増加する大量メール送信型の脅威

  • 自動的にインストールされて、キー操作の記録やファイルのスキャン、電子メール情報の収集、インターネット活動の監視などを行うスパイウェアの出現

  • アメリカやヨーロッパなどの市場で広まっている、電子メールは保存を要する法的な業務記録であるという認識

  • 電子メール通信の保存、監査、監視を定めた規制の制定

  • 企業の情報資産を不適切に取り扱ったことで、企業のブランドや顧客の信頼を損なったり、法的な責任問題に発展した事例

  • 訴訟における電子メール開示の必要性の増加

  • メッセージストレージの必要条件の増大。65パーセントの組織が、メッセージストレージの増大を深刻な問題と考えており、スパムよりも問題視する企業がやや多くなっています(Osterman Research、Messaging Security Market Trends,2005-2008、2005年5月)

表1:電子メール管理に影響を与えた要因

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シマンテックイエローブック

本連載は、シマンテックイエローブック「Symantec Email Security and Availability for Microsoft Exchange」からの転載記事です。シマンテックイエローブックとは、ITプロフェッショナルの方や一般の技術者に対して、技術的なノウハウを提供する本です。これらの本はシマンテックのソリューションを使って実際のビジネスや技術上の問題を「どのように解決するのか」について書かれています。またベストプラクティスに基づく推奨事項に加え、インストール、設定、製品の統合についても詳しく解説されております。詳しくは、下記のURLを参考にしてください。

http://www.symantec.com/ja/jp/enterprise/yellowbooks/index.jsp

株式会社シマンテック
著者プロフィール
株式会社シマンテック
シマンテックは、情報のセキュリティ、アベイラビリティ、整合性の確保に役立つソリューションを個人や企業のお客様に提供する世界的なリーダーです。米国カリフォルニア州クパティーノに本社を置くシマンテック コーポレーションは、現在、世界40ヶ国以上で事業を展開しています。
http://www.symantec.com/jp


INDEX
第2回:電子メールシステム強化の取り組み(前編)
新しい課題
  脅威の進化
  増加する電子メールのサイズ
電子メール環境を効果的に管理するための総合的アプローチ
第1回 電子メールのセキュリティと可用性
第2回 電子メールシステム強化の取り組み(前編)
第3回 電子メールシステム強化の取り組み(後編)
第4回 電子メール管理の重層的アプローチ
第5回 電子メールのセキュリティのポイント
第6回 電子メールのアーカイブ化と耐性基盤の構築
第7回 電子メールセキュリティの強化
第8回 電子メールのアーカイブ化
第9回 耐性システムを構築する
第10回 電子メールセキュリティと電子メールアーカイブソリューションのまとめ
第11回 迷惑メールの遮断
第12回 Symantec Mail Security for Exchangeの設定概要
第13回 Symantec Mail Security for Exchangeを設定する際の注意事項
第14回 ゲートウェイサーバー層におけるネットワーク境界の保護
第15回 電子メールのコンプライアンス
第16回 コンプライアンスにおけるITの役割

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