第1回:ERPの概要と導入のポイント (2/3)

実践的ERP入門
ユーザ視点からの実践的ERP入門 〜 日本企業の文化に適したERPとは

第1回:ERPの概要と導入のポイント
著者:システムインテグレータ   梅田 弘之   2006/7/7
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ERP製品の規模を何で分類するか

   通常、ERP製品は大企業向け、中堅企業向け、中小企業向けという3種類の規模別に分類されます。表1は有名なERP製品を規模別に分類した例です。ここでは顧客の売上規模を分類の目安にしており、上側の境目を500億円、下側の境目を50億円にしています。

   この基準値はまちまちで、上側境界を1000億円以上、もしくは下側境界を100円億未満とする場合もあります。一般にSMB(Small and Medium Business)と呼ばれているエリアは中小企業市場を指しますが、ここに一部中堅企業も含めて300億円以下を対象とするような分類もあります。
対象企業 顧客売上規模 主な製品
大企業 500億円〜 mySAP,Oracle EBS,COMPANY,People
中堅企業 50〜500億円 GLOVIA-C,GRANDIT,ProActive,
SuperStream,OBIC7
中小企業 〜50億円 SMILEα,勘定奉行,PCA

表1:3種類の規模別にERPを分類

   表1では主な製品を便宜上分類してますが、境界の中間に位置付けられるような製品も存在します。また、中堅企業向けに分類したからといって大企業で使えないということはまったくありません。

   中堅企業向きERPと称されているものが大企業で使われていることや中堅企業で中小企業向きERPを使っているところも少なくありません。一般に下位市場に位置付けられていた製品は上へ上へと対象企業規模を拡大する傾向にあり、ボーダレスの競争になってきています。

   素朴な疑問ですが、これら製品は何を根拠に分類しているのでしょう。もちろん、大企業向きと謳うだけの「マルチカンパニー/マルチカレンシー/マルチランゲージに対応している」「部門単位でBS・PLを管理できる」「情報活用機能が充実している」「パフォーマンスに優れている」などの機能が大きな企業では必要とされています。しかし、最近ではこれらの機能は中堅企業向けERPにも備わってきており、必ずしも機能だけで分類しているわけではなさそうです。

   大企業が中堅企業向けとされる製品を使えないかというと、必ずしもそういえないのが最近の状勢です。そのため中堅企業向けとされているERPでも、大企業と商談する時は「大企業向け」と称して使い分けることもあるようです。ユーザがERPを導入する際は、このようなボーダレス時代になったことを意識して賢い選択をした方がよいと思います。


ERPの導入

   それでは、実際にERPを導入する際のポイントをここで紹介します。


段階的導入と一括導入

   ERPの導入形態には、「段階的導入」と「一括導入」があります。段階的導入とは、今年は「会計」を導入し、来年に「給与・人事」、その後で「販売・調達」というように、自社に必要な業務から導入するものです。通常のERPはこのような部分導入や段階的導入が可能なパッケージ構造となっている。

   一方、企業の持つ業務すべてを一度に導入する(俗にビッグバンと呼ばれています)ケースも少なくありません。段階的な導入の過程段階では、ERPを導入するメリットをすべて享受することができないので、まとめて導入して最初から100%の導入効果を目指すというものなのです。


ERP導入を特別視しない

   ERPの導入というと、大がかりなプロジェクトと捉えられている傾向があります。しかしERPという言葉に業務が劇的に改善されるという特別な幻想を描いてはなりませんし、逆になんだか大層なものだという畏怖を抱く必要もありません。

   ERPは従来の業務システムとは違うと主張する向きもありますが、そんなことはありません。ERPも基本的に個々の業務システムから構成されており、それがコーポレート単位での効率化という観点でまとめられているだけなのです。業務システムとして使いにくいものは、例えどんなにコンセプトが立派そうに見えても使いづらいものなのですです。

   ERPだからといって、コンサルタントやベンダーのいうことをすべて鵜呑みにするのでなく、自分の目と耳で判断することが大切なのです。自社の業務を知るのは自分たちであり、その重要な点を自分たちがきちんと伝える必要があることを忘れないようにしてください。

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株式会社システムインテグレータ 代表取締役  梅田 弘之
著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ  代表取締役   梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経てシステムインテグレータを設立。前職で日本最初のERP「ProActive」を作ったノウハウをベースに、「Web Shopping」「Object Browser」「作って教材」などの自社ソフトを次々開発して、パッケージビジネスを展開。最近は「アプリケーションは日本の方が上」という信念のもと、完全Webベースの第3世代ERP「GRANDIT」の企画・開発を担当した。


INDEX
第1回:ERPの概要と導入のポイント
  ERPの概要
ERP製品の規模を何で分類するか
  ERP導入の流れと注意点
ユーザ視点からの実践的ERP入門 〜 日本企業の文化に適したERPとは
第1回 ERPの概要と導入のポイント
第2回 アンバランスな業務とERPの関係
第3回 海外進出する日本のパッケージベンダ
第4回 「SOX法」に踊らされないために知っておくべき内部統制とERPの関係
第5回 ユーザができるリストを用いた自社の内部統制のチェック

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