第1回:ERPの概要と導入のポイント (3/3)

実践的ERP入門
ユーザ視点からの実践的ERP入門 〜 日本企業の文化に適したERPとは

第1回:ERPの概要と導入のポイント
著者:システムインテグレータ   梅田 弘之   2006/7/7
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ERP導入の流れと注意点

   ERPを導入しようとする場合、どのような手順で行うのでしょうか。一般的な導入ステップを表2に示してみました。以下、最初のベンダー選定作業までの流れを追ってみましょう。
ERP導入の一般的な流れ
表2:ERP導入の一般的な流れ
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


1. 社内プロジェクト発足

   まず最初にERP導入に向けた社内プロジェクトを発足します。「業務改善プロジェクト」や「新システム構築プロジェクト」などの名称で社内各分野からキーマンを抽出してプロジェクトを立ち上げるのが一般的でしょう。ここでの注意点は、トップがプロジェクトの重要性と権限を明確に示すことです。

   キーマンは各現場で重要な仕事をしているので、なかなか参加しにくいかもしれません。しかし、キーマンが欠席してばかりではよいプランは立てられず、ずるずると時間ばかり経過してしまう恐れがあります。プロジェクトリーダーに権限を与え、キーマンに対して日々の業務よりプロジェクトを優先するように指示できるようにしましょう。


2. 社内ヒアリング

   次に社内ヒアリングを行い、現行の問題点や目標達成のための課題の洗い出しや解決すべき案を策定します。この分析作業には様々なスキルを要するので、場合によっては外部のコンサルタントに支援を依頼してもよいでしょう。

   ここでの注意点は、きちんとスケジュールを決めてスピーディに行うことである。とかくこのような内部作業には甘えが生じやすく、だらだらと時間がかかり過ぎることが多々あります。完璧を求めるよりも速度優先で手際よくやることを最初にメンバーに徹底することが肝心なのです。


3. RFP作成

   社内の業務分析があらかた終了したらベンダー選定作業に入ります。ERPの場合、適切な提案依頼書(RFP)を作成した上で複数のベンダーに提案を依頼するのが一般的です。多くのユーザはRFPの作成に慣れていないと思いますが、最近では「RFPの書き方」的な記事が多く出回っているので参考にすればよいでしょう。ここで迷うのがどのような会社に何社くらい依頼すればよいのかということです。

   提案を依頼するベンダーの数は規模にもよりますが、通常4〜5社程度、多くても7社くらいが妥当でしょう。どんなERP製品がよいかの当たりが付けられないので、もっと多くの企業にばら撒きたいと思うかも知れません。

   しかし、そんな場合でもいきなり10数社にRFPをだすのではなく、営業担当を呼んでヒアリングすることに重点を置いて、絞り込んだ数社にRFPをだす方がよいでしょう。さもないと選定作業が大変になりますし、ベンダー側にも無駄な作業を強いることになってしまいます。


4. ベンダー選定

   提案依頼先を絞り込んだら、提案依頼書の説明を行います。1社ずつ依頼してもよいのですが、依頼先が多くある場合は複数の会社を集めてまとめて行うことが多いようです。その際にどこのベンダーが参加しているのかは、わからないようにした方がよいでしょう。

   通常、2〜3週間くらいの期間を与えてベンダーに提案書を作成してもらいます。期限の3日前くらいまでを質問の受付期間に設定することが多く、その間に熱意のあるベンダーは不明点を積極的に質問してくるはずです。受けた質問や提案により、RFPの内容を修正したり補足したりすることも多く、その際は全ベンダーに対して補足情報をタイムリーに連絡します。

   その後はベンダーのプレゼンテーションがあります。1日に2回〜3回のペースでベンダーのプレゼンテーションを開催し、各社の提案内容を聞きます。社内の出席者にあらかじめ項目別の評価シートを配り、提案を聞きながら評価を記入してもらいます。その結果を比較表にまとめて内部討議し、選定委員の意見として上申するというのが一般的な流れでしょう。

   最初から1社に決めるのではなく、一次選考で3社程度に絞込み、そこから個別に価格や提案内容を吟味して決定するのが通常です。ここで肝心なのは、不明瞭な点はできるだけつぶしておくということです。少しでも疑問に思ったら、遠慮せずに質問して内容を確かめる、そのような密度の高いやり取りの中でおのずと最良のベンダーが浮かび上がってくるものです。またこの1社と内部で決めた後でも、すぐに決定を伝えずに隅々まで委託範囲や条件を詰める作業を怠ってはなりません。


次回予告

   次回はERPの導入でよくいわれる「業務をパッケージにあわせる」アプローチは無理がないのでしょうか。また、「できるだけカスタマイズしない」という理想論は販売管理や生産管理などの複雑な業務においても本当に実現できるかについて解説する予定です。

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株式会社システムインテグレータ 代表取締役  梅田 弘之
著者プロフィール
株式会社システムインテグレータ  代表取締役   梅田 弘之
東芝、住商情報システムを経てシステムインテグレータを設立。前職で日本最初のERP「ProActive」を作ったノウハウをベースに、「Web Shopping」「Object Browser」「作って教材」などの自社ソフトを次々開発して、パッケージビジネスを展開。最近は「アプリケーションは日本の方が上」という信念のもと、完全Webベースの第3世代ERP「GRANDIT」の企画・開発を担当した。


INDEX
第1回:ERPの概要と導入のポイント
  ERPの概要
  ERP製品の規模を何で分類するか
ERP導入の流れと注意点
ユーザ視点からの実践的ERP入門 〜 日本企業の文化に適したERPとは
第1回 ERPの概要と導入のポイント
第2回 アンバランスな業務とERPの関係
第3回 海外進出する日本のパッケージベンダ
第4回 「SOX法」に踊らされないために知っておくべき内部統制とERPの関係
第5回 ユーザができるリストを用いた自社の内部統制のチェック

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