第1回:「勘と度胸」に「知恵」を加えた意思決定を実現するには (2/3)

情報の開放
情報の開放が経営を変える戦略的情報活用へのアプローチ

第1回:「勘と度胸」に「知恵」を加えた意思決定を実現するには

著者:サイベース  富樫 明   2007/1/22
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「勘と度胸の意思決定」から「知恵を集結した意思決定」への転換

   現在、ビジネスを取り巻く環境はかつてないスピードで変化し、正確かつ迅速な意思決定が求められています。このような状況の中で、旧態依然とした「時間をかけて考え、結局は個人の経験に頼って決める」という意思決定を行っていては、企業を誤った方向に導くリスクは大きくなるばかりです。今こそ「勘と度胸」に「適切な情報」を組み合わせた「知恵を集結した意思決定」が必要なのです。

   どのような情報をどのように分析すると何がわかるのか、ということも企業のノウハウであり知恵であるといえます。また、入手することのできる情報、アクセスできる情報の制限を取り払うことで、新たな知恵の出現が期待できるのです。

   では、以降より「知恵を集結した意思決定」とはどのようなことなのか凡例から考えてみます。

部品調達戦略における意思決定

   ビジネスの視点で生産活動を見た場合、製品の歩留まりや障害率が、コストや価格戦略、すなわち収益に大きな影響を与えます。

   一方、生産の現場では、数多くのサプライヤーから調達した部材を組み合わせ、製品を作り上げています。同じ用途の部材を複数のサプライヤーから調達することも珍しくありません。そして多くの企業では、サプライヤーごとの部材の組み合わせにより歩留まりや障害率に差があることに気づいています。

   例えば、部材XをサプライヤーA社とB社から調達し、部材YをサプライヤーC社とD社から調達し、XとYを組み合わせて製品を組み上げる場合、A社とC社の組み合わせとB社とD社の組み合わせでは、歩留まりと障害率に差があるということです。

   ところが、この「組み合わせによる差」を評価するための情報を入手することができず、評価・意思決定ができずにいます。基になるデータはすべて基幹システムのデータベースに保管されているにもかかわらずです。このような情報をいちはやく入手し、分析できるような仕組みを構築できる企業が、調達戦略で競争優位に立つことは間違いありません。

   また、企業内の複数のビジネスユニットがそれぞれ異なる製品を製造している場合にも、同じ用途の部材を異なるサプライヤーから調達しているケースがあります。全社的に部材調達コストを調査したところ、安価な製品に使われる部材の方が、高価な製品に使われている部材より調達コストが高かった、という笑えない話も現実にあります。これも、適切な情報が調達の担当者に提供されていれば、決して起こりえない出来事です。


販売戦略における意思決定

   店舗販売におけるデータ収集として代表的な方法にPOSレジスターがあります。ここで収集したデータは店舗の定型業務として売り上げ、コスト、損益のレポートに使われることが基本ですが、店舗レイアウト、商品のスペース配分や購入客数、年齢性別などの属性、さらに、特売/定番、チラシの有無、競合店、休日、天候など販売に影響を与える要因情報、つまりコーザルデータなどと組み合わせることにより、様々な分析が可能となります。すでに多くの小売業ではこの手法が取り入れられ、様々な分析結果が意思決定に活用されています。

   しかしながら、激しい競争の波にさらされる流通業では、日々新しいビジネスの糸口、業務効率化の可能性を模索しており、さらに多くの人々の知恵を必要とし、またこれまで連携できていない情報を組み合わせた分析が求められていることも事実です。より正確で迅速な意思決定を行うために、より高度な分析の必要性を誰よりも切実に感じているのが、小売業の方々ではないでしょうか。

   また、BtoBのビジネスモデルの場合でも、顧客ビジネスの多様化やその先の最終顧客のニーズの多様化に伴い、よりきめ細かな販売・マーケティング戦略を立案する必要があります。

   例えば、顧客別の製品やサービスの販売状況、導入時の製品組み合わせ、追加で導入される製品の状況などを分析し、自社ビジネスにあった顧客セグメントの見直しと各セグメントに対する販売・マーケティング戦略の改善といった活動を継続的に行っていく必要があります。また、その意思決定に際しては、現場で顧客の声を直接聞く営業の知恵を最大限に活かしていく必要があります。


物流戦略における意思決定

   車両による配送を行う場合、配送経路の決定と経路変更の柔軟性がサービス品質とコスト最適化に大きな影響を与えます。この意思決定を行うためには、車両ごとの集配量、集配にかかる時間、ドライバーによる配送の受付、車両の燃費、車両整備状況、年式、走行距離、渋滞傾向というようなデータを分析する必要があります。また最近では駐車スペースの有無も分析データに加える必要があるでしょう。

   これらのデータを同じテーブルに乗せ、社員に提供することで、知恵を集結した最適な意思決定への道が開けてきます。

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サイベース株式会社 マーケティング本部 本部長 富樫 明
著者プロフィール
サイベース株式会社
マーケティング本部 本部長
富樫 明

日系大手コンピュータメーカで海外ビジネスに21年間携わった後、ベリタスソフトウェア、シマンテックでマーケティングに従事。2006年より現職。著書に「内部統制今知りたい50の疑問」


INDEX
第1回:「勘と度胸」に「知恵」を加えた意思決定を実現するには
  情報を開放する
「勘と度胸の意思決定」から「知恵を集結した意思決定」への転換
  サプライチェーンにおける意思決定
情報の開放が経営を変える戦略的情報活用へのアプローチ
第1回 「勘と度胸」に「知恵」を加えた意思決定を実現するには
第2回 何故、情報活用ができていなかったのか

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