第3回:原価企画の観点から見るコスト情報の可視化 (2/3)

経営の可視化
企業活動と経営の可視化

第3回:原価企画の観点から見るコスト情報の可視化

著者:オープンストリーム  赤穂 満   2007/3/20
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原価企画の適用事例

   原価企画の適用分野を考えた場合、大きく「戦略的」「原価維持」「設備投資計画」の3つの視点に大別される。それぞれについて、見ていこう。
戦略的な視点

   これは一般的に最先端のテクノロジを利用した量産製品や自動車メーカーなどで適用されるケースである。このような領域では、製品の企画・設計から生産準備までの段階で、初期の販売目標を確保するために「原価を作り込む」活動を指す。

   製品の販売価格は市場原理によって左右されるが、その中で企業には獲得しなければならない利益というものが存在する。簡単な式を示すと以下のようになる。

原価=販売金額−利益

   製品は販売金額に相応しい機能を有していなければならない。それと同時に材料の質や耐久性を下げるだけでは、販売金額を達成できなかったり、販売目標を達成できなくなってきていることは明確である。そのため、原価は作り上げなければならないものに変わってきているのだ。


原価維持の視点

   これは、あらかじめ活動費用が設定されており、各活動ステージでの目標コストが配分されている場合で、目標利益を維持するためのコスト管理としての使い方となる。

   この場合の事例としては、個別受注生産のように受注単位に案件の仕様が異なり、見積りもその都度個別に作成するような業態となる。例えば、建設工事や大型機械製造、プラント建設やシステムインテグレーションなどがある。

   これらの産業では、案件単位に当初設定した見積り範囲内で活動フェーズごとに発生するコストが目標の範囲内であることを確認しながら、生産活動を進めていくもので、「原価維持活動」と呼ばれるものである。

   「戦略的」「原価維持」の2つは、製品そのものの原価低減や目標利益維持のための原価企画となる。


設備投資計画の視点

   これは製造や販売を行うための設備投資から原価を企画する手段である。設備投資の原価企画は以下の3つに大別される。

専用設備
製品固有の生産設備
汎用設備
他の製品の製造に流用可能な設備
環境設備
工場の運用、環境維持のために必要な設備

表1:設備投資の原価企画の分類

   表1のうち環境設備については、製品の品質確保や労働者の環境を考慮する必要があるため、コスト低減を優先的に検討するわけにはいかない部分である。結論としては、製品固有の生産設備を少なくすることで、設備投資費用を低減することが可能といえる。

   例えば、「専用設備の投資費用を抑えるために、製品を構成する部品を極力標準化し、生産設備を汎用的なものにする」や「専用設備に頼らざるを得ない工程は、アウトソーシングを検討する」などの施策が考えられる。

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株式会社オープンストリーム  赤穂 満
著者プロフィール
株式会社オープンストリーム  赤穂 満
サービス推進兼SAXICE推進担当 統括ディレクタ
活動状況:これまでに、製品ライフサイクル、製品構成情報管理やビジネスモデルなどに関する解説記事、論文多数。
所属学会:日本設計工学会、経営情報学会、ビジネスモデル学会、正会員。


INDEX
第3回:原価企画の観点から見るコスト情報の可視化
  求められる一段階上の企業体制作り
原価企画の適用事例
  原価企画の将来
企業活動と経営の可視化
第1回 企業の生産活動をどのように可視化していくか
第2回 製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化
第3回 原価企画の観点から見るコスト情報の可視化
第4回 戦略的調達の視点から見る調達情報の可視化
第5回 経営の可視化の実現策

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