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社内SNS構築事例
Know HowからKnow Whoへ 〜社内SNS構築指南

第4回:社内SNS活性化6つの秘訣

著者:TIS  倉貫 義人   2007/5/15
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運営する側が一番のユーザであること

   先ほどの例で示したような「ユーザからの安心感がないと使ってもらえない」ことは、実は自分自身が社内SNSを使っていれば、すぐに気が付くことです。社内SNSを運営する重要なポイントの1つに「運営者自身が社内SNSのユーザになる」ことがあげられます。自分達自身で積極的に活用することで、使いにくい点の改修や利用上の疑問点、運営ノウハウなどが蓄積されていくのです。

   そして、それを自分達でブログにしていくことで、社内SNSを利用していく上でのナレッジそのものが、社内SNSで展開できます。こうした自分たちの作るサービスそのものを、自分たちで率先して使うことをIT業界では「ドッグフードを食べる」と呼ぶこともあります。

   運営者が率先して利用していくことで、社内SNSを利用してもらう社員との関係が「提供する人と利用する人」という関係から、「共に同じツールを使う仲間」という関係に変化してきます。この関係性の変化は、利用促進の観点から見て非常に効果的です。

   うまくいかない場合として、押しつけのようなシステム提供で利用者からの反発を受けることが考えられますが、同じ方向を向くことで「同じ社員が運営している」ということから、協力の姿勢を導きだすことができます。
対立の構図から協力の構図への変化
図2:対立の構図から協力の構図への変化

   なによりも、開発者自身がヘビーユーザであるということは、システムが使いにくいまま放置されることがなくなり、そのことがまた利用者への好印象を生みだしていくという好循環を生みだします。


コンテンツの制御をなるべくしないこと

   社内SNSの導入を検討している人にとって、必ず不安に思うことは「誹謗中傷が発生してしまうこと」や「ブログが炎上してしまうこと」などがあげられます。そういった問題が発生することを懸念して、社員の書き込むブログの内容を監視したり、記事やコメントの内容を編集していくことは正しいことなのでしょうか。こういった懸念に対して筆者たちが採用した方策は「本名で利用してもらう」ということだけで、今までの問題を乗り越えてきました。その経緯を簡単に紹介します。

   一番最初に社内SNSをリリースした当初は、利用者である社員自身がユーザ登録時に「自分の名前を自分自身で入力する」ようにしていました。登録時の注意書きで本名を登録するようにお願いしていましたが、特にそれ以上のチェックはしていませんでした。そういった運営であっても、ユーザ数が300人くらいまではさほど問題なく、登録者全員がきちんと登録していました。

   ところが300人を超えたあたりから、注意書きを無視して本名を登録せず、まるで匿名のような形で使いはじめるユーザがでてきたのです。社員を特定できないニックネームを使った匿名のユーザは、他の利用者にとっても不快な内容を投稿することもありました。そこで、全社の社員管理システムとバックエンドで連携することで、ユーザ登録時に本人認証を実施し、名前はユーザによる登録をやめるように改良したのです。この対応を行ってからは、おかしなユーザによる投稿はなくなりました。

   社内SNSの特徴は社員のみが利用するということで必ず誰かが特定できるようになっている点だと思います。単純にネットワークの向こう側の「誰か」という感覚ではなく、同じ社内で働く特定の個人がわかってしまうという状況が利用者の暴走を食い止めていると感じてします。

   ブログを書く場合もコミュニティに参加する場合も、社内SNSを使う際には必ず会社に置ける自分の顔(パーソナリティ)を意識した行動になるのです。必ず本名で使ってもらうという対応は、コンテンツのコントロールを検討するよりもはるかに効果のある対応でした。

   このように本名を利用することである程度運営しやすい状況を作り上げましたが、それでも炎上に近いことは起きてしまいます。TISの社内SNSでも、何度か意見の対立からコメントが数多く寄せられるような記事がでたこともあります。その際に、筆者たちは慌てず「あえて放置する」方法を採用しています。

   その理由として、まず本名で投稿していることから、相当にひどい状況には陥らないだろうという予測のもと、運営側が記事の削除などを行うことで、他の利用者に対しても監視されているという印象を与えたくないからです。もし自分の発言を逐一監視していることがわかったら、利用したくなくなります。

   また時間が経てば収束しますし、その結果を未来永劫残しておくことで、後から参加した利用者がその様子を顧みることができます。そうすることで、利用者自身がどうやって使っていくべきかを考えるきっかけにできます。ITの使い方に関して社内であればこそ、社内SNSの中で利用者自身が成長していける仕組みも重要でしょう。

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TIS株式会社 倉貫 義人
著者プロフィール
TIS株式会社  倉貫 義人
基盤技術センター所属。社内の技術支援をするかたわら、社内SNS構築のプロジェクトマネージャ兼メインプログラマとして従事している。一方で、eXtreme Programmingというアジャイル開発の研究・実践を行い、XP日本ユーザグループの代表もつとめている。

情報共有ソーシャルウェア/社内SNS「SKIP」
http://www.skipaas.jp/
XP日本ユーザグループ
http://www.xpjug.org/


INDEX
第4回:社内SNS活性化6つの秘訣
  社内SNS活性化のキーファクターとは
運営する側が一番のユーザであること
  徐々にユーザを増やしていく