第4回:システム構築力の獲得 (3/3)

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第4回:システム構築力の獲得
監修者:野村総合研究所  淀川 高喜   2005/12/1
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システム運用革新の国際標準ITILの概要

   品質マネジメントの国際標準として、一般に広く知られているのは、ISO9000シリーズである。しかし、ことシステム運用分野においては、"ITIL(IT Infrastructure Library)"というITサービスマネジメントの国際標準が最も有効なアプローチとして、近年注目されている。

   ITサービスマネジメントとは、システム運用を、情報システムを使って顧客に「ITサービス」を提供することととらえ、情報技術をいかした優良なサービスを十分な品質で提供することと、サービスに必要なコストの効率性を確保することを両立させる管理を行うことである。

   ITILは、英国商務局(OGC:Office of Government Commerce)が、ITサービスマネジメントに関するベストプラクティス集として、80年代後半にとりまとめた管理の枠組みがベースになっている。ITILは、ITサービスの提供に関わるプロセスに着目し、プロセスの明確な定義と、プロセスのコントロールを実践することを指向している。

   ITILは策定された時点においてすでに、それほど新しいものではないし、提示されている概念も、システム運用のあり方としてごく当然のことのようにも思われるが、実務に携わってきた人にとって共感できる内容であることから、理解しやすく体系的に整理されている点が有用であるといえよう。

   ITILでは、図3に示す管理領域ごとに、「最終目標」「必要性」「責任」「主な検討事項」「導入による利点」「導入時に起こり得る問題」などが簡潔にまとめられている。
ITサービスマネジメントの全体像(ITIL)
図3:ITサービスマネジメントの全体像(ITIL)
出所:OGC ICT Infrastructure Management Figure1.5をもとにNRIにて作成
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   ただし、具体的なプロセスの手順や、プロセスをコントロールするための管理帳票などは、記載されていない。あくまでも、具体的な方法論・手法は、各企業の状況や目的に応じて、独自に作成することが原則である。すなわち、標準であるからといって、形式的に導入すれば効果が上がるというものではない。最終的には、経営やIT部門の意思が問題となる。

   ITILについては、IT基盤管理や、アプリケーション管理といった様々な領域に関連する書籍が発刊されている。システム運用管理の視点からは、特にシステムトラブルやシステム変更など、日常の運用サポートを中心とした「サービスサポート」と、中長期的な計画と改善を中心とした「サービスデリバリ」の2つが参考になる。

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株式会社野村総合研究所 淀川 高喜
監修者プロフィール
株式会社野村総合研究所  淀川 高喜
プロセス・ITマネジメント研究室長 兼 金融ITマネジメントコンサルティング部長。国家試験 情報処理技術者試験 試験委員会 委員。1979年野村総合研究所入社。生損保、銀行、公共、運輸、流通、製造業などあらゆる分野における幅広いシステムコンサルティングに携わる。専門は情報技術による企業革新コンサルテーション、情報システム部門運営革新コンサルテーションなど。


INDEX
第4回:システム構築力の獲得
  これからのシステム構築プロセス
  調査プロセス
システム運用革新の国際標準ITILの概要

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