ERPの概要と導入のポイント

2006年7月7日(金)

ERPの概要

本連載では、ユーザ企業がERPというものの実態を正しく理解し、うまく使いこなすことを目的にしています。様々なベンダーが声高に主張する理想と 現実を対比しながら、ユーザ視点に立った実践的なERP導入とは何かを述べていきます。ERP自体の開発からインテグレーション、セールス、コンサルティングなど、15年間ERPビジネスに携わってきた経験をきちんとお伝えできればと思っています。

ERPとは

ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)という言葉が登場して10年以上経ちます。元々はMaterial Requirements Planning(資材所要量計画)という生産管理用語から派生した言葉です。生産管理における資材という関係を企業全体における資源(ヒト・モノ・カ ネ)という関係に拡大した考え方がERPなのです。

ERPは言葉の由来から入ると、どのようなものなのかがわかりにくいので、そのコンセプトを実現するための「統合業務パッケージ」を表す言葉として 使われていると考えてください。つまり、会計や債権・債務、資産管理、経費管理、販売管理、調達・在庫管理、生産管理、人事・給与などの業務システムを統 合型で構成したものがERPということになります。

従来の業務システムは業務の省力化・合理化を主目的に導入されていました。一方、ERPの場合はこのような個々の業務効率化に加え、コーポレート単 位での効率化や経営情報活用という役割が重視されており、これらの役割を統合することによって、企業全体の効率化や情報の一元管理が実現できるのです。

ERPの基本は「マスタの一元管理」と「データのターンアラウンド」

図1は各業務を統一したERPの構造を表したものです。ERPの本質の1つは、「マスタの一元管理」にあります。
 

各業務が統合されたERPの構造
図1:各業務が統合されたERPの構造


例えば、販売管理システムと経費管理システムが別々の業務システムだったのならば、販売管理と経費管理の社員マスタを別個に管理する必要が生じます。さらに給与システムを新たに導入したとすれば、今度は三重に社員マスタをメンテナンスしなければなりません。

マスタが一元管理されない弊害は、単にマスタメンテナンスが二重、三重になってしまうだけではありません。データの連携にも不都合が生じます。例え ば販売管理における得意先と調達管理における仕入先が同一法人だった場合、これが統合管理されないと債権・債務における相殺処理がうまく行えず、また与信 管理における与信金額も正しく計算されません。

ERPのもう1つの本質は、「データのターンアラウンド」です。図1で各業務間に線が引かれていますが、これはデータの流れをあらわすものです。例 えば「販売管理」で受けた注文を製造指図として「生産管理」に連携し、製造に必要な資材を「調達管理」で調達、生産された製品を「在庫管理」で管理し、そ して「販売管理」で出荷・売上するといったように、それぞれの業務が連携しています。そして販売や調達によって生じた取引は「債権管理」や「債務管理」で 管理され、入金や支払などの実績は会計に連携します。

このようなデータの流れをシステムがサポートすることにより、データ二重入力などの無駄な作業がなくなり、データの整合性もきちんと確保されること になります。市場に出回っているERPをよく見てみると、こういった流れを元に最初から統合型コンセプトできちんと作られているものと、様々な既存業務シ ステムを寄せ集めてERPと称しているものがあります。後者のケースでも上記2つの基本がきちんと実現できていればERPと謳うのは構いませんが、中途半 端なものも結構存在しています。時にはシステム環境(RDBMS)や開発言語が異なっていたり、ユーザインターフェースがばらばらなものもあるので注意が 必要なのです。

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