海外進出する日本のパッケージベンダ

2006年8月10日(木)

時系列で覚えるERP

コンピュータの技術基盤は「オフコン(オフィスコンピュータ) → C/S(クライアント/サーバ)システム → Webシステム」と移り変わっており、それとともにERPのコンセプトも大きく進化しています。今回は「ERPのこれまでの変遷」「次世代ERPが登場し た現在のERP最新動向」「今後のERPのあり方とそのための取り組み」などについて解説し、点でなく線でERPを捉えることの大切さをお伝えします。

オフコン時代からC/S時代にかけてのERP

今から15年前の1991年頃に、筆者はIBM AS/400(現在のeServer iSeries)を用いたビジネスを展開していましたが、当時すでにERPは存在していました。様々な業務の機能が統合された「統合業務ソフト」はいくつ か存在しており、「BPCS」や「JD Edward」などの製品がワールドワイドで普及しはじめていました。

当時の筆者はそのコンセプトに触発されて、C/Sシステムという新しい技術をベースにして「ProActive」を作りました。同じ頃にドイツで 「R/3」が誕生しましたが、この頃がちょうど世界的にオフコンからC/Sシステムへの転換期だったといえるでしょう。

その頃はまだERPという言葉はなかったので、「ProActive」は「統合型基幹業務パッケージ」という名前を付けて販売しました。C/Sシス テム初のERPという先駆性が高く評価され、オフコン世代のソフトウェアを凌駕して順調に市場に受け入れられていったことを覚えています。

ERPが普及した2つの要因

ERPが普及した背景には、「システム化対象業務の拡大」と「パッケージ活用意識向上」という2つの要因があります。

会計や給与など、企業内にある業務の一部だけをシステム化すれば事が足りていた時代は「会計ソフト」や「給与計算ソフト」など、それぞれ単独の業務に対応したもので十分でした。

その頃は、「ユーザが業務に使用するソフトウェアを開発する際、オーダーメードで開発するかどうかを検討する」という時代でした。少しでもあわないところを見つけると、「やっぱり手作りにしましょう」という結論に持っていく傾向が、まだまだ強かったと思います。

しかし、企業システムの適用範囲が業務全般に拡大していきました。そのためにまず業務にあったパッケージを探そうという考えが主流を占めるにつれ、 「業務システムにはERP」という時代になっていきました。もちろん、市場の広がりとともにERPの数も増え、機能も格段に向上していることもその流れを 支えています。

2つの問題点を抱えたC/SシステムからWebシステムにかけてのERP

ERPは「会計」「債権管理」「債務管理」「販売管理」「調達管理」「生産管理」「人事管理」「給与計算」などの機能を統合型で作成したものです。 マスタの一元管理とデータのターンアラウンドにより、One Fact One Place(同じ意味のデータはただ1箇所に管理すべしという考え)を実現できるのが特長です。

ERPを導入して基幹業務を統合することにより、ユーザの二重入力が防止されてデータの不整合はなくなります。この大きなメリットを掲げてERPの 導入が拡大する中、時代はC/SからWebに切り替わってきています。その結果、C/S時代を担ってきたERP製品は「ERPを取り巻くWebシステムの 出現」と「ERP自身のWeb化」という2つの課題に直面したのです。

ERPを取り巻くWebシステムとは、「EC」「CRM/SRM」「SFA」「BI」「EDI」「EAI」「EIP」「WF(ワークフロー)」とい うような新しいシステムであり、これらはネットワークという新しい時代の技術を背景に、それぞれ大きな機能として成長してきました。

その結果、ユーザが再び二重入力やデータ不整合の問題を抱える可能性がでてきたのです。つまりERPは基幹業務内は統合していますが、その外側に出現したこれらの機能とは統合されていないためです(図1)。

ERPを取り巻くシステム
図1:ERPを取り巻くシステム
 

例えば、ECパッケージとERPを連携する場合にはデータベースのマスタデータが一元管理されないので、データベースの顧客マスタや商品マスタの連 携は頭の痛い問題となります。受注データの流し込みや在庫データの反映など、データのターンアラウンドも個別に作りこまなければなりません。

またこれら周辺のシステムが続々とWeb技術ベースで作成される中、ERPだけがC/S技術ベースであり続けるようになり、ますます連携しにくくなってきました。

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