Tomcatって何ですか?
Tomcatマスターになるために
HTTP/HTMLを用いた静的ドキュメントの交換という目的からスタートしたインターネットは、産業や社会のコミュニケーションやパーソナライズされた情報を扱う媒体として発展してきています。こうした流れの中で、インターネットはリアルタイムのコンテンツ更新を求められるようになってきました。
検索エンジンや掲示板などはその一例です。こうしたWebアプリケーションを実現するためには、HTTPを介してリクエストを受け取り、リクエストに応じた処理を行った結果(動的コンテンツ)をリクエスト元に返す仕組みが必要になります。
動的コンテンツ提供のための仕組みの1つが「サーブレット/JSP」です。サーブレット/JSPは、Sun Microsystems(以下、Sun)によって開発されたサーバサイドのJava技術であり、オブジェクト指向に基づくプログラムの部品化の実現や、豊富なクラスライブラリの提供といった「Javaの特性」を活かすことで、数あるサーバサイド技術の中でも非常に強力なアーキテクチャとなっています。
このサーブレットは、「サーブレットコンテナ」と呼ばれる特殊なWebサーバ上で動作します。またHTMLの中にサーブレットを埋め込む技術であるJSPも、サーブレットコンテナなくして実現することはできません。これから取り扱うTomcatもこのサーブレットコンテナの1つなのです。
本連載では、はじめてTomcatに触れる初心者を対象にTomcatサーバの構築手順から実際にサーブレットを用いたアプリケーションを動作させるための設定までを解説していきます。これからサーブレット/JSPを使ったWebアプリケーション開発を行いたいという開発者にとってのTomcat導入の手引きとなるように、わかりやすく解説していきたいと思います。
本連載によって、Tomcatについてのいまさら聞けなかった疑問を解消していただけたら幸いです。
サーブレット/JSPの概要
Tomcatの解説に入る前に、その背景となっているサーブレット/JSPの歴史を紐解き、なぜTomcatのようなサーブレットコンテナが必要になったのかをみていきましょう。
最初のサーバサイド技術:CGI
HTMLだけで情報がやり取りされていたインターネットに最初に登場したサーバサイド技術はCGI(Common Gateway Interface)というものです。インターネットを利用していればBBS(掲示板)やアクセスカウンタなど、皆さんもCGIで動くアプリケーションを目にしていると思います。
しかしCGIは特定のプログラム言語を指す言葉ではありません。リクエストを受け取ったWebサーバが他のプログラムを起動させ、そこで処理をさせた結果をクライアント(Webブラウザ)に返す仕組みの総称です。
CGIは、正規表現を用いた文字列処理が得意なPerlや多くの環境でサポートされるCなどで書かれることが多いですが、本質的にどんな言語で書かれても(Javaでも)CGIといいます。
CGIの課題
いまや、サーバサイド技術の古典とも言えるCGIですが、以下のような課題を抱えていました。
大量のリクエストによるレスポンスの鈍化
CGIではリクエストがあるたびに対応する外部プログラムが起動されていきます。プロセスの起動は負荷が大きいため、大量のリクエストが発生した場合、極端に性能が落ちる場合があります。このような問題をスケーラビリティの難点といいます。
セッション管理機能を持たない
HTTPには、リクエストとレスポンスという単位を超えて接続を維持する仕組みは存在しません。クライアントにレスポンスが返ればそれで終わりです。HTTPでは、その後で同じクライアントが別のリクエストを出してもそれが同じクライアントのものからだと判別することができません。
そのため、HTTPのリクエストを外部プログラムに橋渡ししているCGIの仕組みでは、ユーザのログイン状態を管理するといった、一定時間の接続を同じクラインアントからのものと認識して、その状態(セッション)を保持する処理が行えません。
ポストCGI技術
こうしたCGIの課題への解決策として、様々なポストCGI技術が提唱されてきました。MicrosoftによるISAPI(Internet Server Application Program Interface)やASP(Active Server pages)をはじめ、Netscape CommunicationsによるNSAPI(Netscape Server Application Program Interface)、FastCGI、Apacheのmod_perlモジュールなどの後継技術では、前述したスケーラビリティの向上がはかられています。
またセッション管理に関しては、Netscape CommunicationsがはじめたCookieが業界標準となっています。CookieはWebサイトを訪れた際に、クライアント側に情報を保存さ せておき、次回接続時にそれを参照してクライアントを認識させる仕組みです。Cookieを用いることで、CGIやその他のポストCGI技術でもセッショ ン管理が可能となりました。
しかしCookieにも問題点があります。Cookieはクライアント側でON/OFFを設定、または削除が可能な上に、現在新たなWebブラウジングの標準になりつつある携帯電話のWebブラウザによってはサポートされていない場合があることです。