第19回:IT企業の悪しき慣習を破る!技術屋社長の社内制度

第19回:IT企業の悪しき慣習を破る!技術屋社長の社内制度
IT転職百科事典

第19回:IT企業の悪しき慣習を破る!技術屋社長の社内制度
編者:Tech総研  2007/3/14
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ITエンジニア300人に聞いた「IT業界の悪い慣習」
グラフ:ITエンジニア300人に聞いた「IT業界の悪い慣習」
サイボウズ:毎年選べる「成果重視型」or「年功重視型」の給与体系
成果・年功型給与の選択のほか、最大6年の育児・介護休暇なども
 新卒入社時の年収は一律360万円。成果重視型の場合は、次年度からS、A、Bのグレードで年収が決まる。成果への評価は部下の申告を加味して上司が四半期ごとに行い、4回1年分で最終的なグレードが決定する。年収は昇給するか現状維持のままで、1000万円クラスの社員も多い。一度上昇したグレードは基本的に下がらない。一方の年功重視型は、年収は毎年上昇するが上限は650万円ほど。成果ではなく勤務態度が評価ポイントになり、基本的に残業はない。
 決算期翌月の2月に社員が両者を選択でき、毎年自由に変更できる。2007年2月に導入。ほかにも「妊娠判明時からの産前産後休暇」「最長6年間の育児・介護休養」「育児・介護の時短勤務」など多くの支援制度がある。
選択制の目的は社員が安心して長く働けること
 成果主義型の賃金体系を導入する企業がここ数年で激増したが、従来の年功型のメリットを指摘する風潮も高まっている。その選択を社員にゆだねるという、斬新な制度を発表したのが青野社長率いるサイボウズだ。
「創業期の弊社は『ガンガン働いてもらって成果で返す』という給与体系でした。しかし、そうできなくなった社員は辞めざるを得なくなりますし、長い人生には出産や介護といった個人の事情が出てきます。ですので、仕事に熱中して見返りを求める社員は成果型を、コツコツ働いて安定を望む社員には年功型をと考えたわけです。大切なのは『社員が安心して長く働ける』ことです」

 目指すのは社員が長く勤務しているトヨタや松下電器などの大手メーカー。同じモノづくり系企業であり、事業のグローバル展開という意味でも意識するという。また、年功とは社員の年齢を意味しない。同じ32歳で執行役員とSEのいる同社では、そもそも年齢という軸で人を評価しないからだ。
青野慶久氏
代表取締役社長
青野慶久氏
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社
「サイボウズOffice6」「サイボウズガルーン2」など企業向けのグループウェア製品を主力とするソフトウェアベンダー。日本製グループウェアのリーディングカンパニー。青野社長ほか2人で1997年に設立。
30年働いてもらう中の6年休暇などは誤差のうち
 同社にはほかにも、産前産後休暇(妊娠判明時から)や育児・介護休暇(最長6年間で休業回数は規定しない)などの支援制度がある。技術やビジネスの進化が速いIT業界では、復帰までのブランクの長さが致命的ともいえるが、青野社長は意に介さない。
「おなかの大きな社員が働くのは、見ていて心配になってしまう。また、流れの速い業界だから1年も離れると技術スキルはガクンと落ちますが、だったら1年休むも6年休むも同じこと。それに、ビジネス的、コミュニケーション的なスキルは変わりません。10年ではなく30〜40年単位で働いてもらうつもりですから、6年などは誤差のうちです」

 育児休暇などは以前から導入されていたが、選択型の給与制度は2007年2月に導入されたばかり。社員の選択はこれからだが(取材時)、同社の社員約140人のうち50人ほどいる技術職からも、「安心できる」などの声が多く聞かれるという。
 労働時間の長さや給与評価の不透明さなどから、IT業界から脱出するエンジニアが増加しているようだ。そんな現状に青野社長はこう語る。
「弊社の方針は心地よく長く働ける会社であり、改善は今後も続けます。IT企業もさまざまですから、別の業界に行くならぜひサイボウズにいらしてください」
佐藤美保さん
内部監査室
佐藤美保さん(28歳)
産休から復帰して、これからは子供に夕飯を作りたいです
 昨年2月から産休を取って3月に出産、9月に職場復帰した佐藤さんは、夫と子供との3人暮らし。出産を期に保育施設の充実した地域に引っ越したという。
「子供が夜泣きをするなどでしたら育児休暇を取ったと思いますが、元気な子なので、今は育児と仕事が両立できるかどうかを試している時期です。9時から18時まで働いていますが、最近は時短制度を使って少し早く帰ろうかと考えています。自分で作った夕飯を、子供に食べさせたいと思い始めましたから。また、もともとは経理職でしたが、復帰を機会に新しい部署に変えてもらいました。これもひとつのチャンスだと思って」


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