Gen AI Times 64

【特別講演】なぜ東京ではなく、東海なのか? 1500万人の製造都市から始まる「日本再興」のシナリオ

〜「富士通株式会社」基調講演〜東海エリアの1500万人規模の製造経済圏が持つ強みと、現場データや標準化文化を武器にAI時代の新たな価値を生み出す可能性についてレポートします。

田中 悠介

6:30

2026年1月21日、名古屋JRゲートタワーにて、富士通株式会社主催のイベント『TransformationNow in東海 〜AIと共に成長する未来を〜』が開催された。

会場は、東海地区を支える製造、流通、公共など多様な分野のリーダーたちで埋め尽くされ、後半のワークショップでは「変革(Transformation)」への渇望と熱気に包まれた一日となった。 本稿では、同イベントの基調講演「地域創生におけるAIの可能性・東海から始まる新しい価値」に登壇した私、Givin' Back株式会社 田中悠介が、当日の講演のエッセンスと、そこから見えた「東海の勝ち筋」について寄稿する。

綺麗な技術論ではなく、「なぜ、今、私たちがここ(東海)で戦うのか」という生存戦略について動画の内容に一部補足して語る。

講演時の写真(富士通のイベント動画参照)

「地方発」が最強のブランディングになる(逆輸入戦略)

私が東京ではなく、東海エリアを中心に活動する理由。 それは「地方で成果を出した方が、圧倒的に東京・世界から注目されるから」だ。

東京はレッドオーシャンである。素晴らしい事例も、情報の洪水の中で埋もれてしまう。 しかし、地方は違う。競合が少なく、少し尖ったことをするだけで、その光は遠くまで届く。

【参照】登壇時のイベントスライド

象徴的なのが、私の地元・愛知県犬山市の事例である。 ChatGPTが登場した直後、犬山市はわずか1ヶ月で試験導入の宣言をした。結果どうなったか? 東京で事例の発表依頼が届き、「地方で勝つことで、東京に逆輸入される」という現象が起きた。

ここ東海で、泥臭い事例を作れば、東京にも届く発信はできるのだ。

【参照】「【犬山市長 原欣伸氏×Givin' Back 田中悠介氏 対談】全国の自治体に先駆けて生成AIの活用に着手、本年4月からは文書業務への正式導入がスタート」(Think IT 2024/05/15)

【参照】「第7回 ジェネレーティブAI勉強会」(GAIS 2024/01/11)

「1400万人 vs 1500万人」の衝撃 —— 東京を超える実体経済

では、東海エリアの武器は何か。 講演の中で、私はある数字と特徴を説明した。 それは、愛知・岐阜・三重・静岡を合わせた約1500万人規模の巨大な実体経済と、世界屈指の「ものづくり産業」だ。

皆さんは「東京」を日本最大の巨大都市だと思っている。確かに東京都の人口は約1400万人。圧倒的な規模である。 しかし、私たちが足をつけているこの「東海エリア」—愛知、岐阜、三重、そして静岡を含めた4県を見ると、このエリアの総人口は約1500万人に達する。

つまり、経済圏としての人口規模では、実は東京(1400万人)よりも、東海(1500万人)の方が多い。さらに重要なのは、その「中身」である。東京の1400万人は、主に情報の消費やソフトウェア産業に支えられた経済圏だ。

対して、東海の1500万人はどうだろうか。ここには、日本、いや世界を支える「ものづくり」の実体がある。自動車産業関係者だけでも600万人と言われるこのエリアは、バーチャルな数字ではなく、物理的な「モノ」を生み出すことで経済を回している世界有数の集積地である。

東京都と東海地区(愛知県+岐阜県+静岡県+三重県)の人口割合とGDPの比較データ、このGDPの差がAIでどのように変わっていくのかは見ものである。

今後、AI活用はデジタル空間から、リアルな現場へと広がっていく。 その時、「1400万人の情報都市・東京」とは異なる役割として、「1500万人の製造都市・東海」が果たすべき責任は重大で、 現場のデータ(フィジカルデータ)を持つ私たちだからこそ、世界に通用する「現場実装型のAI」を生み出せる。 誰かに対抗するのではなく、私たちにしかできない役割が、ここには確実に存在すると考えている。

GoogleやOpenAIの進化により、ソフトウェア(デジタル空間)でのAI活用はいずれ差がつかなくなってくる。 これからの主戦場は、デジタルとリアルが融合する「フィジカルAI(IT×OT)」の領域だ。

  • IT(Information Technology):デジタルの技術
  • OT(Operational Technology):現場の制御・運用技術

この「OT(現場)」のデータの質と量において、東海エリアはシリコンバレーすら凌駕するポテンシャルを持っている。

【参照】登壇時のイベントスライド

工場のライン、物流の現場、都市のインフラ。 これら「実体(モノ)」にAIを実装し、生産性を劇的に向上させる。 これができるのは、デスクの上でコードを書いている人間ではなく、現場を知り尽くした私たち東海のアセットなのだ。

「標準化」という最強の土壌

そしてもう一つ、私たちにはAIと相性抜群の「文化」がある。 それがトヨタ生産方式に代表される「標準化(QC/カイゼン)」の文化だ。

AIは魔法ではない。カオスな業務をAIに投げても、カオスが拡大するだけ。業務を整理・標準化し、そこにAIを適用することで、初めて人々の働き方は劇的に変わっていく。

東海エリアの企業には、業務を「標準化」し、品質を管理するDNAが刻まれている。 この土壌があるからこそ、AIによる爆発的な生産性向上が期待できると考えている。

【参照】筆者海外発信記事のスライド(非標準プロセスのAI化によるカオス拡大)「The PoC Graveyard: The 100x Rule of Factory AI」(Yusuke Tanaka 2026/01/28)

編集後記:共創のその先へ

講演後に行われたワークショップ『業種を超えて共創する、AI時代の顧客接点の未来』 では、当日参加した企業及びリーダーから「生成AIを自社で活用した事例」を、忖度なく率直に、課題からその詳細まで、時間の限り、業界を超えた熱い議論が交わされた。

富士通の淺間さん、中山さんが語られた「社内実践からの学び」 も、まさに現場起点のリアルな知見であり、参加者からは、「時間が足りない。もっと議論したい」という意見が出るほど、参加者に深い気づきを与えてくれた。

そして、この場をプロデュースしたのは富士通だった。 今回、東海エリアで実証された「地域のリーダー同士をつなぎ、現場から熱を生み出す」というこのイベントモデルは、きっとここだけで終わるものではないと感じた。

質疑応答は、一番参加者が聞きたい質問の投票が多いものへの回答になり、盛り上がった(右は筆者、左2名は富士通社員であり、AI推進をしている中山氏、淺間氏)

彼らは今後、この成功体験を他の地方にも展開し、日本全国の「現場」をエンパワーメントしていくのだろう。

「シリコンバレーの知らない99%の現場を知っている。」少し過激な言い方だが、私は本気でそう思っている。

現場を知る私たちが動けば、日本は変わっていく。ここ東海から始まった小さな変化を、次はあなたの地域へ。 日本全体を支える新しい「価値」を、共に作っていけたらと思う。

登壇者および機会をくださった富士通の皆様との写真

ここ東海から、世界を変える新しい「標準」を共に作っていけると嬉しい。

イベントの様子を確認したい場合は、下記の富士通サイトよりアクセスしてください。

フジトラニュース

イベントサイト:3月19日公開予定:4月以降講演動画、詳細閲覧可能(申込必要)」(富士通 2026/03/19)

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