第44回:与えられた環境の中でも道を見いだしたT.Mさん

第44回:与えられた環境の中でも道を見いだしたT.Mさん
IT転職百科事典

第44回:与えられた環境の中でも道を見いだしたT.Mさん
編者:Tech総研  2007/9/19
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開発・設計職から他の技術職に異動させられることに抵抗を感じるエンジニアは多い。「モノづくりにかかわってこそエンジニアの醍醐味がある」という意識が根強いからと考えられるが、果たして会社都合による開発・設計職から他職種への異動は、万人に共通する不幸なのだろうか。今回の活動記で紹介するT.Mさんにとって、回路設計からFAEへとキャリアチェンジさせられた異動は、結果的に新たな展望を得るきっかけとなった。FAEの仕事に今まで感じられなかったやりがいを覚え、新たなキャリアステップを意識するようになったのである。 高度な技術スキルを持った優秀なエンジニアにとって、仕事のやりがいが「自らの手で行うモノづくり」だけにあるのではないことを示す好例と言えるだろう。
Profile 半導体商社 FAE T.Mさん(39歳)
工業高専の電気工学科を卒業後、大手総合電機メーカー系の設計企業に16年勤務。各種製品の回路設計を担当する。組織体制の変更でFAEとなり、その面白さに目覚めて転職まですることに。
転職前
(大手総合電機系列
企業FAE・38歳)
転職後
(半導体商社
FAE・39歳)
年収670万円 給与 年収670万円
(前職給与保障)
月に70時間の残業。 勤務
時間
残業は月に10時間に減少。
客先には適宜訪問。 職場
環境
客先には週に3〜4日訪問。顧客の工場などにある製品開発部門を訪問してニーズを把握するために出張も多い。
大手の傘の下であるせいか、のんびりした雰囲気で緩い人間関係だった。 職場の
人間
関係
自社にブランド力がないため、戦略的な動きが必要であり、社員間で協力体制への意識が高い。意見を出し合う風土。
今回の注目!
親会社の半導体製品を売ることが主目的の技術営業。 仕事の中身 半導体商社のFAEとして、顧客のニーズを察知し、適切な半導体製品を調達する業務。
顧客側に、親会社の半導体製品を購入するニーズが顕在化したことを受けて動く、“待ち” のFAE。 仕事の
進め方
顧客に対し積極的に新製品紹介や技術提案を行うなど、自ら商機を開拓。時にはカスタマイズや新規設計の中心人物として動く。 フラットな組織であることから、自分の思い描いたとおりに行動できる。
暫定的な業務としての半導体営業+FAE業務。 仕事の役割 本業である半導体製品販売における中核的存在。
転職前編 不本意なFAEへの配置転換。ところがその仕事の面白さに気づき……
photo工業高専を卒業し、新卒入社した企業は、“日本が世界に誇る”と形容しても過言ではない某大手総合電機メーカーA社の、直系会社だった。子会社とはいえ、巨大グループの一員。しかも開発・設計の専門企業だったので、エンジニアとして恵まれた環境に身を置いていると感じていた。

実際に、若手のうちはA社がその技術力で市場をリードするような家電製品の回路設計を担当した。設計を終えて製品がリリースされ、パンフレットができて、量販店に自分がかかわった製品が並ぶのを見るたびに、エンジニアとしてモノづくりの醍醐味を味わった。

家電製品の次に担当したのは光交換機だった。高速・大容量の光ネットワーク時代の到来を見越して、光信号のままで回線をスイッチできる交換機の開発がグループを挙げて始まったのだ。そして、予測どおり光ネットワーク時代が到来したのだが、数年で思わぬ展開となった。急速にインフラ整備が進んだあおりを受けて、ある時期を境に光交換機市場が一気に冷え込んだのだ。
その結果、組織の再編が行われた。こんなときは、まず子会社からリストラされるのが世の常。唐突な人材の再配置が行われ、開発・設計エンジニアばかりの企業でありながら、ある者は営業に、ある者は保守業務等に異動させられた。私は親会社の半導体製品を売るためのFAE職になった。

当初は不本意だった。そりゃそうだ。開発や設計がやりたくて、やり続けられると考えて入社した会社だ。半導体製品の技術営業ともいえるFAEになるのには抵抗があった。

ところがやり始めると、決してつまらない仕事ではない。いや、むしろ回路設計よりもやりがいを感じ始めた。回路設計のスキルをベースに、技術コンサルティングを行っていくFAEの魅力に気づいたのだ。客先に出て行って自分でビジネスを広げられるし、信頼もされる。何より自分の考えや提案が顧客の製品開発に反映されてプロジェクトが成功したときは、前の設計職時代以上に、自分の役割の大きさを感じることができた。親会社の開発依頼をこなすだけの以前とは異なり“ビジネスを創出する”面白さと刺激があった。

仕事がだんだん面白くなり、いつしか親会社の半導体製品だけではなく、調達できる製品の中から最善のデバイスを提案するようになっていた。例えば光交換機の設計時に採用した大手B社のDSPなどがそうだ。自分で検証した製品だから、提案の中身も深い。そうしてFAEとして自在に動き回るようになるにつれ、親会社の製品にこだわっていては最良の提案も、収益も、限定されるとの考えに至った。

FAE職を極めるなら、半導体商社に転職するしかないな……そう思い始めた。
リクナビNEXT そんなある日、ヘッドハンターと称する人物から電話があった。某著名企業が自分のFAEとしてのスキルを高く評価しており、ぜひとも転職を考えてほしいという。  続きはこちら>>

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