連載 :
  ReadWrite Japan

データサイエンティストが高給取りな理由

2016年11月3日(木)
ReadWrite Japan

画家や先生、警察官を職業にするのは楽しいことかもしれない。しかしながら給料にこだわるのであれば、データサイエンティスト以上のものはなかなかないだろう。

米国の給与平均値は、740,589ドルだ。CEOならもっともらうだろうが、残りの99.999%の人間にとって、データサイエンティスト以上に稼いでいる者はほぼいない。Indeed.comによれば、彼らの給与の全国的平均は、その他の仕事に付いている人たちの113%になるという。

データサイエンスというと無味乾燥な仕事のように聞こえるが、多くの給与に見合うだけの働きをする彼らの仕事はそのようなものではない。データサイエンスとは、統計、数学、プログラミングをマスターし、業務知識とその本能で企業の経営陣の意思決定のための見解を導き出す存在である。

もちろん、彼らデータサイエンティストの中でも有能なものは非常に少数派だ。

データは金なり

Indeed.comによると、今日の平均的なデータサイエンティストの年収は123,000ドルだ。しかしこれは「今日※2014年」の話であって、2012年以来ビジネスにおけるデータの関心が高まるにつれて、彼らの収入は増加の傾向にある。

関連記事:アメリカに学ぶ、IoTがもたらす新たな職と夢

MTE5NTU2MzIzNDY5ODU0MjE5
データサイエンティストの収入

これは、Gartnerがビッグデータの活用についてレポートで取り上げられたように、企業が自分たちが貯めこんだデータをどうするかについて悩んでいるフラストレーションを反映するものである。「ビッグデータにおける最大の挑戦とは何か」という問いに対して、返ってくる答えは多かれ少なかれ「これをどうしていいのかわからない」といった類のものだった。

MTIxNDI3Mjk0OTQ0OTIxMTAx
ビッグデータにおける最大の挑戦とは何か

他意はない。ただこういった傾向はひどくなるばかりだ。世界の情報量の90%はここ2年で作り出されたものであり、企業が保持するデータの80%は、現在構造化されていない。これらの事実は、何十年にわたって整理されていないデータがDBに溜まり続けたということを意味する。こういった背景もあり、「ビジネスインテリジェンス」のツールやエンタープライズデータウェアハウスや、そのほか旧来のデータ分析システムが出てきたのだ。

現在、そしてこれからのデータは、これまでとは異なるツールおよび、データサイエンティストを必要としている。

彼らの業務は非常にむずかしい

データサイエンティストたちが多くの給料をもらっていることは、それ相応のことだろう。彼らの業務が「スキルの組み合わせ」を必要とすることを考えれば、こういった人材を見つけることの難しさからその価値の高さがうかがえる。

「データサイエンティストとは、カリフォルニアに住んでるデータアナリストのことだ」という否定できないジョークもあるが、データサイエンスは虚業ではない。そして、非常にタフな仕事である。

その理由に、「3つの異なった分野においてエキスパートでなければならない」ということが挙げられる。

ミッチェル・サンダース氏が取り上げたように、できるデータサイエンティストは、銀行業・小売業など対象とする業界特有の知識と、数学・統計学、そしてプログラミングスキルを兼ね備えている。これら3つのうち1つでもカバーされていれば十分だろう、と考えている企業も多いが、それではあまりに多くのことを見落としているといえる。

事実、抱えているデータから有用な情報を掘り起こすに足るだけの業界知識を持っているスタッフが周りに存在しないことに、多くの企業は気づいてすらいない。

これは、私がGartnerのアナリスト、スヴェトラーナ・シューラー氏の「企業は自分の足元をよく見るべきだ」という言葉にかねてから賛成である理由だ。彼女によると、企業は「自社のデータについて、どこの馬の骨ともわからないデータサイエンティストより、うちの社員の方が熟知している」(あるいは彼女がまた言うように、「Hadoopを習得するのは業界を熟知するより容易だ」)と考えているという。

一方サンダース氏は、こういった流れは危険だが致命的ではないと強調する。

「大量のデータの規範的な予測モデリングための相関関係の理解、多変量解析、そしてあらゆる角度からのデータの解釈は、情報から価値を掘り出すための第一歩を踏み出す為に、必要なバックボーンとなる知識である。もしこれを持たないなら、あらゆる収集されたデータやそのプレゼンテーションは意味がないものだ。」

いくつかの企業は、データサイエンティストとデータアナリストとのギャップを埋められると称している。しかし、現実はどうだろう。データサイエンティストはハードな職業であり、それゆえに実際、彼らは高い給料をもらっているのだ。

結局は人間の「勘」がすべてか

山のようなデータから意味のあることを掘り当てる難しさは理解してもらえると思うが、それでもFourtune Knowledge Groupが明らかにしたように、データからの有用な情報の多くは、「分析ではなく直感によって発見される」ということは、データサイエンティストにとって苛立たしいことだと思う。

調査によると、720のビジネスリーダーたちのうち、62%は自分の直感を信じると答え、61%は直感が分析を上回ることはほとんど無いと答えている。言い換えれば、彼らは企業が直面する難題に対し、即座に使える現場の知恵に頼っているのだ。

さて、本気で123,000ドルを稼ぎたいデータサイエンティストは、統計・数学、コーディングでの、より「ソフト寄り」な本能と経験が支配する世界に適応する必要がある。たしかに難しいことだが、このバランス感覚を身につけたデータサイエンティストは難題を解決できるだけでなく、そのアドバイスに経営幹部までもが耳を傾ける状況を実現することができるだろう。

トップ画像提供:AMC’s Breaking Bad


この記事は、2014年に投稿された記事の再掲である。IoTが広まるなか、データサイエンティストの活躍の場も広がることだろう。

MATT ASAY
[原文4]

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。
転載元はこちらをご覧ください。

連載バックナンバー

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています