プログラマブルなITプラットフォーム
クラウド・コンピューティングの議論が本格化する中、企業活動に直結した情報システムにも、新たな変化が求められています。特に、業務アプリケーションの提供形態が、クラウドによって変わっていきます。こうした変化に対応できるITプラットフォームが求められています。
本連載では、既存のITプラットフォームが抱える課題を考察したうえで、米Morph Labs(日本法人はモーフ・ラボ)が提唱する次世代ITプラットフォーム像を、4回にわたって紹介します。第1回の今回は、既存のITプラットフォームが抱える課題と、その課題を解決する次世代プラットフォームのあり方について解説します。
現行のITプラットフォームが抱える課題
1)部分最適化が引き起こしたサイロ化IT基盤
現在、企業のITプラットフォームは、"サイロ化"と呼ばれる分断状態となってしまっています。事業部や部門ごと、場合によっては業務ごとに部分最適化するというアプローチの下、サーバー、ストレージ、ネットワーク、そしてアプリケーションをバラバラに構築してきたためです。用途ごとに独自の基準を備えたプラットフォームで運用されています。
まさに、農産物や家畜の飼料を蔵置・収蔵する、あの窓のないサイロのようです。外界と隔離され、本来であれば全体最適を目指すべきであるにも関わらず、業務の重要性や特殊性を理由に、部分最適化された独自手法で運用・管理されているのです。ITが無ければ企業活動を語れない現在においてもなお、サイロ化が解消されていません。サイロ化こそが企業が衰退していく原因であると指摘する声も高まっています。
2)多様化、複雑化がもたらした指針無きIT基盤
サイロ化という現象が発生した理由としては、業務アプリケーションが部分最適化されていったという状況のほかに、インフラ技術を可視化したり共有化したりすることが困難だった、という事情もあるでしょう。仮想化技術を筆頭に、技術の進歩は目覚ましく多様化しており、要素技術が複雑化しています。
こうした状況の下、ITプラットフォームの全体を統括管理するCIO(最高情報責任者)やエバンジェリスト(伝道者)のような、本来であれば企業が進むべき道を指針として打ち出せるキーマンが、どの企業にも不在でした。これは、見逃せない事実です。
企業全体を貫く指針は、全体最適化の前提です。これを提示できなかったということは、個々の業務アプリケーションごとに部分最適化のための局所的な理由付けがしやすい状況が続いていた、ということを意味します。サイロ化は、発生すべくして発生した、と考えられます。
さらに問題を複雑にしているのは、指針不在のあいまいな経営方針が、サイロ化のみならず、ITガバナンス対策の遅延、リソースの非効率活用、ITリスク増大、システム非連携、システム・コスト増大、ビジネス機会損失など、さらに大きな問題を生み出してきたということです。
3)IT予算が縮小する中で統合が急務となったIT基盤
このような多様化/複雑化は、仮想化の浸透とともに、さらに加速します。このことを考慮すると、企業は、ITプラットフォームの自動化や簡素化に、今まで以上に真剣に取り組んでいかなければならないでしょう。
この一方で、ITを効率化するための予算は、極端な縮小傾向にあります。つまり、「今まで以上の効率化/最適化を、今まで以下の予算で成し遂げる」ことが求められているのです。
図1: 現行のITプラットフォームが抱える課題 |