「CL All Hands」を支えたリーダーの視点 ークリエーションラインの全社員参加型イベント成功の裏側
リモートワークやフルフレックス勤務、そして東京と富山の2拠点体制という独自のワークスタイルで、ソフトウェア開発やアジャイル開発を手がけるクリエーションライン株式会社。同社では2024年7月1~2日の2日間、エンジニア以外の社員やビジネスパートナーも含む「全メンバー参加型」のイベント「CL All Hands」を開催した。技術研修にも営業などの非エンジニア層が加わり、文字通りの「全員参加」で盛り上がった同イベントは、どのような狙いから生まれ、その結果どのような成果を挙げているのか。イベントリーダーと、本イベントに参加した若手の2人に語っていただいた。
なお、本イベントの詳細なレポートは、クリエーションラインの代表取締役であり、CL All Handsの仕掛け人でもある安田 忠弘氏が同社ブログで公開されている。ぜひ、こちらも参照してほしい。
⚫︎クリエーションライン Tech Blog
全社イベント「CL All Hands 2024 in 富山」開催報告
https://www.creationline.com/tech-blog/hr/74350
財務・経理のリーダーの発案で実現した
全社員参加のイベント「CL All Hands」
クリエーションラインは、働き方の点でかなりユニークな会社だ。フルフレックス勤務やフルリモートワークを採用し、いわゆるソフトウェア開発やITサービス企業の中でも、先進的なワークスタイルをいち早く採用してきたという。
組織や拠点の考え方も、ちょっと変わっている。東京に本社を置きながら「CTOが富山出身で、北陸にリモートメンバーが多かった」という理由で、2018年には富山事業所を開設。今や単なる地方拠点ではなく、全社員の研修・教育拠点としての地位を築きつつある。今回の全メンバー参加型イベント「CL All Hands」も、この富山が舞台となっているのは言うまでもない。
社員が一同に集まるリアルイベントとしては、2023年に続き2回目となった「CL All Hands」(※編集部注:第1回の開催レポートはこちら)。このイベントリーダーを務めたのが、同社財務・経理チームリーダーであり、今年のイベント企画の発起人でもある岡 正樹氏だ。監査法人やコンサルティングファームなどを経て、2022年8月に入社してからは、財務・経理チームのリーダーとして手腕を発揮してきた岡氏が、なぜ自ら全社交流イベントの旗振り役を名乗り出ることになったのだろうか。
「クリエーションラインというのは、フルリモートワークの会社ということもあって、なかなか社員が一堂に集まる機会がないんです。そこへ、昨年開催された社内のエンジニア全員参加の第1回目イベントがすごく盛り上がったと聞いて、それならいっそ全社員参加レベルでも面白いことができるんじゃないかと」(岡氏)
そこで四半期に1回チームリーダーが集まるミーティングの、各自で好きな議題を出し合う場で提案したところ、それがきっかけとなって「CL All Hands」が実現したのだという。このとき、岡氏は「自分が出した案なのでぜひ企画にも関わらせてほしい」と手を挙げ、プロジェクトの責任者を任されることになった。
「経理とはまるで畑違いですが、当社に入社したいと思った決め手は、クリエーションラインならではのカルチャーがすごく気に入ったからなのです。社長の考え方にも非常に共感したし、とても働きやすそうな会社だと思ったのがきっかけでした。なので今回も、むしろ自分の専門分野に限定されず、会社を盛り上げる企画に参加できるという期待感がありました」(岡氏)
バックオフィスなどの「非エンジニア」層も全員参加
自社のビジネス全体を理解する機会に
昨年の「エンジニア全員参加」から、今回はさらに一歩進めて「社内全メンバー参加」となったCL All Hands。その柱となるコンセプトは2つある。1つはいわゆる「チームビルディング=会社としての一体感の醸成・共有」。もう1つは、会社の新しいビジネスのスローガンである「Co-Creation Sherpa(コ-クリエーション・シェルパ)」の理解だったと岡氏は語る。
「当社では2023年、いわゆる構造改革のような、事業をいろいろなチャレンジに変えていく試みを次々に進めてきました。その中から生まれたのが『Co-Creation Sherpa』です。シェルパというのは、ヒマラヤのような高山に挑む登山者を手助けする案内人ですが、私たちもお客様の本当に実現したいことを理解し、その目標達成までしっかりと伴走していける存在を目指そうという意志が、このスローガンには込められています」
こうした思想をエンジニアだけでなく、クリエーションラインの業務に携わる全てのメンバーが共有し、理解を深めるきっかけを作りたいという意図がCL All Handsには込められていたと岡氏は明かす。
開催地を富山に選んだのにも、クリエーションラインならではの思い入れがあった。これまでもインターン研修などは富山事業所で行われており、この先の新卒採用も富山を中心に活動を進める予定になっている。このせいか、今回のイベントのアイディアを社内で募集したときも「富山でやりたい」という声が多く寄せられていたようだ。やはり同社にとって富山事業所というのは、単なる地方拠点を超えた重要な場所になっているのだ。
全社メンバー参加とはいえ、やはりITの開発企業とあって研修やセッションなど具体的な企画内容は、かなり技術色の濃いものが目立つ。このため企画の中心となったのはエンジニアだが、スタッフにはバックオフィスなどの社員も加わっていた。非エンジニアがこうしたイベントに参加する意味はどこにあったのだろうか。
「当社のビジネスは、お客様の課題や悩みを私たちが理解し、共に解決のゴールを目指していくというものです。そうした緊密な信頼関係を築くためには、営業やマーケティングの人たちも技術を含めた会社のビジネス全体の理解が不可欠です。もちろんエンジニアと同レベルは無理ですが、自分たちがどのようなビジネスに携わっているのかを業務の文脈の中で理解・共有するうえで、今回のイベントは貴重な機会だったと思っています」(岡氏)
社員だけでなくビジネスパートナーも含め
コミュニケーションと一体感を味わう
イベント本番では、岡氏自身もスクラム開発の企画に加わったという。非エンジニア層の1人として参加した感想はどうだったのだろうか(レゴスクラムワークショップ)。
「このスクラムに関しては、普段交流のない初対面の人たちと同じ場所に集まって一緒に物を作る共同作業が体験できたことが大きいですね。もちろん日常でもそういうコミュニケーションは大事にしていますが、改めてチームワークという形で経験できたのは、チャレンジングでもあるし、しかも面白く良い体験ができたと思っています」と岡氏は振り返る。
個人的に体験するだけでなく、チームビルディングについては客観的・定量的な評価も行った。総勢90名近くの参加者を対象にイベント前後にそれぞれアンケートを取り、自分の目的が達成されたかどうかのベンチマークを行ったのだ。
「参加者には、社員に加えてビジネスパートナーのエンジニアの方々も含まれています。社員は9割以上が参加したと思いますが、アンケート結果は全ての項目で参加後の数値が上がっていました。この結果から、私たちが当初に掲げていた目標は達成できたかなと評価しています」(岡氏)
いつもと違うメンバーとのコラボを通じて
新たな視点や学びを得ることができた
イベントリーダーの岡氏自身、当初の目的を達成できたと評価するCL All Hands。では、実際に参加したメンバーは、どのように感じられたのだろうか。若手エンジニアのお2人に伺ってみよう。現在は東京を拠点としてEDITチームに所属するエンジニアの由井 秀弥氏と、富山を拠点としてEDITチームに所属するエンジニアの柴田 凌輔氏だ。両氏ともに、2023年開催の第1回イベントにも参加してきたが、今回のCL All Handsでの新しい体験として「リアルに会うことの良さ」を挙げる。
「今回はエンジニア以外の方も全員参加だったので、いつも会う機会のない方と対面でお話しできたのが一番印象的でした。オンラインではよく顔を合わせている人もいて完全な初対面ではないのですが、やはりリアルで会う楽しさやコミュニケーションの深さみたいなことを体感できたと思います」(柴田氏)
さらに柴田氏は「スクラム研修のような企画でも、いつもと違うメンバーとチームを組むことで見えてくるものがあった」と明かす。研修内容自体は通常のスクラムを用いる作業と大きく異なってはいないが、他のプロジェクトに参加してきた人や、全くスクラムの知識がない非エンジニア職の人と組むことで「普段の開発目線から見るのとは違う、人とのコミュニケーションを楽しむような、技術以外の部分にも考えを巡らせる経験ができてすごく学びがあった」という。
一方の由井氏も、このスクラム研修を通して「スクラムの新しい可能性に気づくことができた」と振り返る。
「今まで自分が経験してきたスクラムは、アプリケーション開発で使用するフレームワークだと思ってきましたが、今回の研修ではレゴを使って街を組み立てるという課題が出されたのです。ここで実際に使ってみて、スクラムはいろいろなジャンルに応用できるんだという新しい気づきがありました。また、このときは非エンジニア職の方がスクラムマスターを担当されていて、これはすごいと驚いたのも新鮮な経験でした」(由井氏)
これらの体験を踏まえて、次回は「より多くの人々とのコミュニケーションの機会を作っていきたい」と由井氏は言う。
「自分のグループの人たちとはかなり会話できたのですが、他のチームとはあまり話す機会が作れませんでした。せっかく苦労して『全員参加』を実現したのだから、次、機会があれば、今回にも増して所属や職種を超えた交流ができる仕組みを提案してみたいと思っています」(由井氏)
若手をはじめ新たなメンバーの参加を呼びかけ
さらに多彩な可能性のイベントに
今後の展望について岡氏は「まず実務面からスタッフの負荷をより最適化することが課題だ」と語る。各企画の実施運営についてはかなりスムーズにできたが、その背後には富山事業所のスタッフの精一杯の頑張りがあった。
「どうしても開催地側には負荷がかかるものなのですが、本番の企画だけでなく懇親会のスタッフまでお願いすることになってしまったので、彼らにはかなりの苦労をかけてしまったと反省しています。全員参加であるからには、負荷も全員で分担できる体制をどう作るかが今後の課題だと考えています」(岡氏)
岡氏は今後、この全員参加イベントをさらに盛り上げるためにも、もっと多くの若手メンバーや、普段の業務以外の新しいことにチャレンジしたい人、そしてクリエーションラインをさらに良くしていきたいという人々に、積極的に加わってきてほしいと呼びかける。
「そういった方々にバトンを引き継いでいくことで、さらに色々な企画や可能性が生まれてくることを期待できます。また恒例行事となれば、毎年ゼロから考えるのでは時間のロスにもなる。より多くの方が参加して経験値を共有し、それをドキュメントとして残すことで、先々誰が実行委員になっても効率よく開催できる体制を、ぜひ構築していきたいと思っています」(岡氏)
* * *「クリエーションラインが大好き」な人が考えた企画を、もっともっと盛り上げたい人たちが集まってさらに大きく育てていく。そうした「先の先」を目指すアクティビティがCL All Handsの中から生まれてくることを大いに期待したい。
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