『江南スタイル』のヒットから、グリーやDeNAが世界展開で越えるべき「壁」を考える
9月にわたしのブログエントリ「Gangnam Style と韓国のコンテンツ戦略」で取り上げたPSYの『江南(カンナム)スタイル』が、日本でもかなり話題になったようですね。
アメリカでは、もう本当にセンセーショナルな流行り方をしました。スティーブ・ジョブズの命日だった10月5日には、シアトルのAppleストアに集まったジョブズ・ファンが、なぜかあの“乗馬ダンス”をみんなで踊るという珍現象が起きたくらいです。
韓国の一アーティストが世界各国で売れた理由を、日本では「人を雇ってYouTubeの視聴回数を増やしたから」とする言説があると聞きましたが、本当の理由はそこではありません。
PSYの世界展開はジャスティン・ビーバーのマネジャーが仕掛けていて、アメリカでは9月のある一週間、全米の主要メディアにPSYが出ずっぱりだったんですね。それで一気にアメリカ中で知れ渡り、世界にも広まったというカラクリです。
さて、なぜ今回『江南スタイル』の話から書き始めたかというと、PSYがヒットした理由を分析したいからではありません。『江南スタイル』のように世界中でヒットさせるコンテンツ戦略が、どうして日本から出てこないのかを考えたかったからです。
日本には、アニメやゲームのように世界中で愛されているコンテンツがたくさんあります。例えば『DRAGON BALL』なんかは、ものすごい知名度です。でも、企業として、戦略的に世界一の地位を築いたコンテンツメーカーは皆無ですよね。
最近はグリーやDeNAのようなソーシャルゲーム会社が北米に進出し、こちらのメディアで話題になることも増えています。とはいえ、ここから実際にシェアを伸ばして世界トップの企業になるには、「第一世代」が乗り越えられなかった壁を越えなければなりません。
インデックスやサイバードが企業買収による北米進出に失敗した理由
ここで言う「第一世代」とは、インデックスやサイバードのような、iモードビジネスの勝者たちです。彼らは1990年代に携帯向けコンテンツで成功し、2000年代前半に世界展開を始めました。
その時に多く採られた戦略が、アメリカやヨーロッパの同業他社を買収しながら、マーケット拡大を狙うというもの。グリーはOpenFeintやFunzioを、DeNAもngmocoを買収しながら北米拠点を強化してきたので、ここまでは似たような道をたどっていると言えます。
しかし、第一世代の会社たちは世界一になれず、今は日本国内でも地味な存在になってしまいました。
なぜか。最大の理由は、世界展開における「企業買収のその後」をよく理解していなかったからだと思います。
アメリカに限定して言うなら、こちらの起業家たちが目指しているのは、ほとんどがバイアウトか株式上場なんですね。夢や大志を抱いて事業を続ける起業家もいますが、大多数はこれがゴール。だから、馬車馬のように働いてバイアウトかIPOができたら、そこで終わりなんです。
そんな状態の人たちに、日本から来たカントリーマネジャーが「一緒に天下を取ろう」と語りかけたところで、うまくいかないのは当然でしょう。これが、企業買収による世界展開の最初の壁です。
「じゃあ高い給料やインセンティブでつなぎ止めれば良いだろう」と思う人もいるでしょうが、買収後にはもう一つ、別の壁が待っています。
(次ページに続く)>>続きはエンジニアtypeへ
関連リンク
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- 日本は本当にガラパゴス?アメリカで働く日本人からのメッセージ(米マイクロソフト訪問記その2)
- マイクロソフトUS本社見学ツアー:3日目
- Scott Guthrie氏自らデモする新しいWindows Azure(米マイクロソフト訪問記その1)
- マイクロソフトUS本社見学ツアー:1日目
- マイクロソフトUS本社見学ツアー:2日目(1)
- 国内外のVR業界のキーマンが登壇 ―Japan VR Summit 全5セッションレポート
- デベロッパー広報?のためのカンファレンス、DevRelCon開催
- Web系企業で進む「一芸採用」は、エンジニア主体で企業を選ぶ時代の先駆けになるか?
- 家入一真×内藤裕紀が対談!76世代企業の逆転成功パターンに見る、10年後も生き残る企業の条件
- グリー、UnityおよびHTML5に対応したスマートフォンアプリの開発支援ソリューション