クラウド時代のデータセンター
○年後のデータセンター
今から25年前、おかに上がったカッパは考えた、「モノを運ぶ手段は将来どうなっていくのだろうか」と・・・
物理的に存在するモノを運ぶ手段は、陸運、海運、空運の3つである。こればっかりは、太古の昔から、時代が進歩しても変わっていない。
そこに、「情報(ソフトウエアやデータも含む)」という目に見えないモノを運ぶ手段として、「通信」が加わった。そうなると、データセンターは、さしずめ物流拠点とも例えられるのだが・・・
新人研修や新卒面接で、「通信事業者にとって一番重要なものは何か?」と質問してみると、いろいろな答えが返ってくる。正解は1つではないのだが、その中でも「電気」と言ってもらえるとホッとする。
電気が止まってもらうと困るわけだが、今のデータセンターには、大きなガス・タービン・エンジン、巨大な受電トランス、2重化したCVCF(定電圧定周波数装置)、大型パッケージ空調器、無瞬断切り替え器など、工場のような設備が設置されている。
いくら重要な電気のためとはいえ、電力供給品質が非常に高い日本で、こんな設備を用意する必要が本当にあるのかと、この10数年間考え続けてきた。
通信サービスも、どんどん高度になり、仕組みを理解しなくても使える時代になった。電気などはコンセントに挿せばいい、と子供でも分かる。こうした時代に、情報の物流拠点であるデータセンターが物理的に存在する必要があるのか。確かに、保管場所としての物理的な存在は必要だが、それをデータセンターと言う必要はないと思う。
インターネットがクラウドと言われて久しい。IIJのグループ会社であるIIJイノベーションインスティテュート社長の浅羽登志也は、「通信サービスが空気のような存在になってきている時代である」と言っている。そんな時代だからこそ、データセンターは、概念として利用者の意識の中にだけ存在し、インターネットの一部になっていれば良いのではないだろうか。
確かに、通信と放送の融合は見かけだけであり、電力と通信の連携はいまだに実現していない。ただし、事実として、クラウドという概念によってすべてがインターネットの中に存在している状態と言っても過言ではない。これこそが本来の通信サービスの在り方ではないだろうか。
こうした現在を基準において「○年後のデータセンター」とはどんなものなのかを考えると・・・
存在を意識することなく、利用者の身近に、情報の流通拠点として存在する。情報が生まれる場所であれば、ゆりかごのように優しくはぐくんで世の中に送り出し、情報が消費される場所であれば、熱に変えて地球環境に帰すことができる。こうした循環社会を支える、小さくて賢い箱になって、複雑な電力系統網やインターネット網の内部に、ひっそりと息づいているのではないだろうか。
未来の人は、きっとそれをデータセンターとは呼ばず、大きな「森」の小さな「箱」と呼んでいるに違いない。
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