写真で見るKubeCon China 2024:欧米では見かけないベンダーが目立っていたショーケース会場を紹介
KubeCon China 2024は開催場所として香港を選択した。2024年8月の時点で、中国に入国するためには日本人もアメリカ人もイギリス人もイスラエル人もビザが必要だが、香港に関してはビザが不要という状況が理由の一つであろう。そして中国本土からの参加者やスポンサーを得るためにも最適の場所というのがもう一つの理由だ。フランスやドイツ、イタリアなどからはビザ不要で中国本土に入国することは可能だが、イベントの主催者であるThe Linux Foundation/CloudNative Computing Foundationのスタッフは主にアメリカから来ることを考えれば妥当な選択だ。
LF/CNCFが過去に上海で開催したOpen Source SummitやKubeConといったイベントでは、多くのセッションが中国語で行われ、参加者のほとんどが中国からの参加者であり、英語がメインの参加者やプレゼンターは蚊帳の外と言う状況だったが、今回も多くのセッションが中国語で行われた。過去に上海で行われた2018年、2019年のKubeCon Chinaの際はショーケースのスタッフも中国語がメインで中国からの参加者をメインにターゲットにしていたが、今回は英語に堪能なスタッフが用意され、英語での質問にも対応していたように思える。ブースの装飾も基本は英語、補完的に中国語というスタイルがメインだった。
2018年のKubeCon Chinaについては以下の記事を参考にして欲しい。
●参考:KubeCon China 2018:CNCFによる中国人のためのイベントだったKubeCon China
最も目立っていたのはDaoCloud
そんな中、セッションの数や内容で際立っていたのがDaoCloudだ。
DaoCloudはセッションに登壇したエンジニアが17名、セッション数で19という存在感を示した。単独のセッションだけではなくChina Mobile、Equinix、Alibaba Cloud、NVIDIA、Microsoft、Huawei、そして香港科技大学など、多くの組織と共同でセッションを行うなど幅広くパートナー、顧客を獲得していることがわかる。今回はシルバースポンサーであったが、会場における存在感ではHuawei、Alibaba Cloud、Red Hatを遥かに上回っていたと言える。
●公式ページからの「DaoCloud」による検索結果:https://kccncossaidevchn2024.sched.com/?searchstring=DaoCloud
特にVMwareからの移行についてはブースの一番大きなサインとして掲げられており、テクノロジーだけではなくビジネスの部分でも力強さを感じる展示となった。
Huawei
他方、Huaweiは入口近くに大きな展示ブースを構えてはいたものの、メッセージ性が弱く、強く訴求したい内容を感じられないものとなった。
OpenGemini
CNCFのサンドボックスプロジェクトとなったOpenGeminiがひっそりと展示されていた。
2019年の上海で開催されたKubeCon ChinaではHuaweiがさまざまな嗜好を凝らして参加者を楽しませていたことを考えると大きな変化と言えるかもしれない。
●参考:KubeCon Chinaでは展示ブースも中国ベンダーが猛プッシュ
パブリッククラウドという意味ではTencent、Baiduがスポンサーのリストにも存在せず、セッションの登壇者としても見当たらないというのは大きな変化だろう。
KubeWharfをプッシュするByteDance
ByteDanceは企業名としてはスポンサーとはならず、公開しているKubeWharfの名前でシルバースポンサーとなっている。セッションもVeScaleやKelemetryなどの中国以外では聞かないソフトウェアに関するセッションを行っていた。KubeWharfの公式サイトをみれば、ByteDanceがオープンソースとして公開している、他ではあまり見かけないプロジェクトが多く使われていることがわかる。
●KubeWharf公式サイト:https://kubewharf.io/
このスクリーンショットはKubeWharfの公式サイトに掲載されているエコシステムの図だが、ByteDanceが使うクラスターの概要と読み替えると多くの独自のツールが存在していることがわかる。KubeWharfはそれらの総称ということだろう。
ZTE
ZTEも地味なブースでするシルバースポンサーとしての存在だけは示しておこうという意味合いだろうか。
QingCloud
2012年に創業されたQingCloudもあまり見かけないベンダーだ。KubeSphereというオープンソースプロジェクトを紹介していた。プロダクトのサイトも見た限りではQingCloudがカスタマイズしたKubernetesディストリビューションと言ったところだろう。KubernetesをかなりカスタマイズしたQingCloud版OpenShiftとも言える。
●KubeSphere公式サイト:https://kubesphere.co/kse/
Alibaba
Alibabaの展示ブースも素っ気ない内容で、もはや知名度を高める必要もない企業として知りたいことがあれば内容を読んで質問して欲しい程度の感覚だろうか。
Second State
展示ブースは最小でも注目されていたSecond Stateは、CEOのMichael Yuan氏が多くのカンファレンスで訴求し続けている生成型AIのモデルをクラウドなしで実装するLlamaEdgeを展示していた。Yuan氏だけではなくMiley Fu氏やVivian Hu氏、Hung-Ying Tai氏のようなエンジニアがセッションを担当するなど大きく露出した結果、ブースには質問をしたいエンジニアが常に集まっていた。
オープンソースプロジェクトのステッカーブースも常に賑わいをみせており、参加者が集っていた。
RancherやRed Hat、F5などのお馴染みの企業は通常運転といった感じだったが、Rancherはピンポンボールを使ったロッタリーを使って参加者の興味を惹いていた。
上海のKubeCon Chinaとは比較にならない規模ではあったものの中国人エンジニア、特に若いエンジニアの英語力が各段に進歩していること、中国圏だけで流通しているオープンソースプロジェクトの多さを知れたこと、そしてDaoCloudの台頭など注目すべき内容を見つけることのできたショーケースとなった。
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