I/O仮想化技術の詳細
I/O仮想化の導入効果
仮想I/Oと仮想サーバーは、極めてよく似ています。サーバー仮想化は、高速処理リソース(CPU、メモリーなど)を、複数のアプリケーションに対して動的に割り当てます。一方、I/O仮想化は、高速I/Oリソースを、複数のサーバーに対して動的に割り当てます。アプリケーション側から見れば、どちらも従来のリソースと同様に利用できます。
仮想I/Oの各種操作を実際に体験できるWebサイト「I/O仮想化3分体験ツアー」を用意しています(音声ガイド付き)。仮想I/Oの作成からサーバーへの割当て、さらにI/Oの帯域制御操作が可能です。この機会に試してみてください。
仮想I/Oは、仮想サーバーに適したI/Oを実現します。以下の3つの例では、仮想I/Oが仮想サーバー環境にどのように役立つのかを示します。
図7: 多数の1UサーバーをI/O仮想化に収容し、システム効率を高める |
- (a)1Uサーバーの導入による、初期投資コストと消費電力の低減
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1Uラックマウント型サーバーは、省スペース設計である半面、I/Oの拡張性が低く、多くの場合、1台のサーバー内に2枚のアダプタ・カードしか増設できません。1台のサーバー上で多数の仮想サーバーを動作させる場合、I/Oがボトルネックとなり、サーバー環境の性能が著しく低下してしまいます。実際、1Uで24コアを搭載する製品も登場するなど、サーバーは高性能化の一途をたどっています。
これに対し、従来のI/Oリソースを20Gbpsの高速ファブリックと複数の仮想I/Oに置き換えることによって、仮想サーバーに対して、より多くの帯域幅を確保できるようになります。たった2枚のアダプタ・カードによって、40Gbpsの帯域と、16の冗長仮想NIC、8の冗長仮想HBAを、サーバーに実装できます。
また、I/Oカードの数が少なくて済むことにより、エッジ・スイッチとケーブルにかかるコストや消費電力を、大幅に削減できます。サーバーI/Oのコストだけでも、初期投資総額を30~50%削減できます。
- (b)アプリケーション性能の保証と最適化
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前ページで述べたXSIGOによるI/O仮想化の特徴、「オンラインでI/Oを増設できる、リソースを分離できる、サービス品質(QoS)を設定できる」によって、仮想環境においてアプリケーション性能を保証できるようになります。
また、VMware VMotionを始めとするサーバー・マイグレーション用のネットワークやFT(フォルト・トレランス、無停止)用のネットワークをほかと分離させて帯域保証することで、パフォーマンスや信頼性を高めることができます。さらに、これらの通信をシャーシ内で処理することにより、仮想NICの最大レート(10Gbps)でのデータ転送が可能になります。
- (c)システムの冗長構成をシンプル化
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仮想I/Oリソースをサーバー間で自由に移行できるため、データ・センターの耐障害性を容易に高められます。採用可能な冗長構成は、以下の通りです。
- N+1コールド・スタンバイ構成
- 遠隔操作により、稼働中のサーバーから待機中のスタンバイ・サーバーに仮想I/Oリソースを移行できます。SANブートやサーバー仮想化環境と組み合わせれば、安価にバックアップ環境を構築できます。
- サーバー交換
- サーバーを入れ替える際は、該当するサーバーの接続プロファイル(WWNとMACアドレスを含む)を保持したまま、別のサーバーに移行できます。このため、ネットワークやストレージ担当者に対して設定の変更を依頼する必要がなくなります。
- ディザスタ・リカバリ(災害復旧)
- あるサイトとまったく同じI/Oリソースを、遠隔地などにある別のサイトの上に、即座に作成できます。これにより、障害時のシステム切り換えに要する時間を大幅に短縮できます。
なお、サーバー仮想化環境(クラウド環境)では、オンデマンドでのリソース追加や構成変更が頻ぱんに求められます。また、こうした環境では、1つのプラットフォームを複数の業務システムや部署が共有しているため、システムを止めることなく性能を増強できるようにしておく必要があります。このためには、仮想化でキーとなる共有ストレージ環境の構築が重要になります。こちらは、第3回で解説します。
図8: I/O仮想化の導入効果 |